シンシンは受験ノイローゼになっていましたが、台湾では受験戦争がとてもきびしいと聞いています。トニーさんや周りの皆さんはいかがですか?
トニー「ちょっと前までは大学受験は難しかったのですが、今ではどんどん簡単になっていて、受からない方が難しい状況です。僕自身は勉強好きな方ではないので、そういうプレッシャーはまったくありません(笑)。ただ、会社の人はわかっていますが、仕事が忙しくなるとおかしくなって、発散するために変な歌を歌ったり喚いたりしているので(笑)、精神病じゃないかと言われてます(笑)。仕事のプレッシャーにしても、勉強のプレッシャーにしても、そういう風に発散できる場所があれば、シンシンみたいにならなくてすむのではないでしょうか」
トニーさんのそういう所を見てみたいです(笑)。
トニー「夜はよく見られますよ(笑)。今はまだ時間が早いけど」(この取材は朝10時から)
映画を作品として観て、自分で気に入っているシーンは?
トニー「観客として観ても、やはり自分が演じているので、特にこのシーンとは客観的に言えないのですが、やはり映画全体に流れる雰囲気が好きです。東京国際映画祭(04年)で初めてこの映画を観て、その後、台湾で公開されてから今までに、もう11回くらい観ているんですが、観るたびに毎回違った印象を受けます。すごく純粋でシンプルな感情が描かれているので、自分にもそういうものがあった頃に戻れます。仕事柄、歳を取るにつれてそういう純粋な気持ちを失いがちなのですが、それをもう一度取り戻すことができるのが、この映画。ちょっぴり甘酸っぱい気持ちになるし、楽しくもなれるのがとてもいいところです。それに毎回、感動する場所が違っていて、シャオグェとの関係に感動することもあれば、シンシンとバスを待つバス停のシーンに感動したり、花火のシーンに感動することもあるし、最後のエンディングで、アーチョウとシンシンが海に向かって叫ぶシーンがフラッシュバックしますが、そこに感動することもあります。毎回、違うシーンに感動するのも、特別なところです」
東京国際映画祭で皆さんがゲスト来日した時は、とても仲良さそうでしたが、この映画で初めて出会ったのですか?
トニー「他の3人とは、名前は知っていましたが親しくはなくて、話したこともありませんでした。ただ、この映画ではほんとうに仲のいい雰囲気を出して欲しいということだったので、撮影前の1ヶ月はミーティングをしたり一緒に遊んだり、ご飯を食べたり飲んだりして、ほとんど毎日会ってました。クランクインの頃には、完全にいい友だちになっていて、その後1ヶ月半の撮影があったので、監督も含めてほんとうにいい友だちになりました。それから2年以上経ちましたが、5人とも今でもいい友だちです」
この映画について、日本のファンと台湾のファンとでは、捉え方や考え方の違いを感じることはありますか?
トニー「今回、この作品と日本に来て思ったのですが、来る前に期待していたよりもよかったというか、驚きました。日本の皆さんはこの映画をすごく細かく観ていて、この映画を通して僕たちが表現したかったことをちゃんと受け止めています。ストーリーにしても、細かいエピソードにしても、主人公たちの心情にしても、僕が説明する前に皆さんが話してくださいます。こういうことは、台湾の観客からは聞いたことがありません。それはすごく驚きでした。ほんとうに細かくきちんと観てくださっていて、感激しました。戻ったらすぐに、監督に日本の皆さんの様子を伝えたいです。きっと泣きますよ(笑)」
トニーさんが自分の青春で一番輝いていたと思う頃は?
トニー「たいていの方は16〜7歳の頃が青春だと思うんですが、その頃の僕には、いわゆる青春らしいことはありませんでした。もっと小さい頃のことですが、監督とこの脚本の話をしていた時、小学校の時に好きな女の子がいたと監督が言うので、実は僕も小学校の時に好きな子がいたんですよ、という話になりました。好きだったけど告白はできなくて、彼女から『好きな女の子はいるの?』と尋かれても『いないよ』と言いながら、実は机の下で彼女を指差していました(笑)。そういう思いは、あの当時でなければないことでしょう。それから少し大きくなると、いろんなものから影響を受けて、結局、人と同じようなことをしてしまいます。例えば、ラブレターを書くとか、花を贈るとか。でも、当時は子どもだったせいで純真な行動をしていて、それは恋愛とは言えないけれど、僕にとっては初恋だし、すごく美しい思い出です。歳を取るごとに、それはますます美化されています」
今後、俳優として挑戦してみたい役や映画は? また、役者以外で挑戦してみたいことは?
トニー「自分からこういう役をやりたい、と考えたことはありません。5年前は俳優になると思っていなかったのにこうなっているように、常に新しい思いがけないことを期待しているので、こういう役柄というのは特に決めていません。ただ、今までは明るい青年の役が多かったのですが、次にやる映画(『天堂口』)では、30年代上海のマフィアの一員を演じるので、多分これまでとは違った一面をお見せできると思います。もし、俳優になっていなかったら、実は実家がレストランで、これまでに4回来日して日本の食文化に興味を持ったので、日本風のレストランや居酒屋をぜひやってみたいです(笑)」
では最後に、トニーさんにとっての「夢のような場所」とは?
トニー「監督と同じでハワイです。僕も行ったことはないんですが、そういうところは監督と似ています。美しい砂浜に横たわって、心地よい海風に吹かれながら、ビキニ姿の美しい女性を眺めていたい。それが夢です(笑)」
ということで、作品に対する熱い思いから、最後はトニーの等身大の素顔も垣間見れた(笑)楽しいインタビューでした。新作も気になるところですが、その前に、今回トニーが自ら語ってくれたポイントを押さえつつ、『夢遊ハワイ』を劇場でじっくりとご覧ください。あなたにもきっとある懐かしい思い、やさしい気持ちが甦ってきますよ。
(取材日:2006年8月18日 キャピトル東急ホテル/4媒体合同取材)
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