『夢遊ハワイ』に込めた思い
−トニー・ヤン
9月2日より公開の台湾映画『夢遊ハワイ』のプロモーションで、主演のトニー・ヤンが来日しました。昨年10月にデビュー作『僕の恋、彼の秘密』で来日した時は、かなり短いヘアスタイルだったのですが、今回は髪も伸びて、爽やかさはそのままにキュートさが増しておりました。記者会見はなかったのですが、合同取材に参加することができましたので、その時の模様をご紹介します。
『夢遊ハワイ』は2004年の作品で、トニーにとっては映画出演2作目。2004年の東京国際映画祭で上映され、監督を含めたフルキャスト5人が来日。舞台挨拶を行っています。物語は、兵役終了直前に休暇(実は脱走兵の捜索)をもらった二人の青年が、初恋の女性や脱走兵と共に浜辺で忘れられない夏を過ごすというもの。兵役を終えて現実の世界へ踏み出す前のエアポケットのような時間を、伸び伸びと瑞々しく描いています。
(以下、質問、アジクロからの質問、トニー)
タイトルからハワイの映画を想像する人もいると思いますが、このタイトルはいかがですか?
トニー「最初は『バカの夢』というタイトルだったんですが、後で『夢遊ハワイ』になったので、僕たち俳優もハワイに行って撮影するのかなと、ちょっと興奮しました(笑)。でも、そうじゃなくて、ハワイというのは監督にとって憧れの土地で、美しい砂浜、太陽の光、ビキニ…と、美しい場所なんだとか。行ったことはないそうですが。ただ、誰にでもそういう美しい夢のような場所や夢のような時代があると思います。この映画はまさに、まだ純真だった頃のことを描いているので、ハワイと付けられたようです」
最初にこの作品の脚本を読んだ時の感想と、出演の決め手は?
トニー「最初に脚本をもらった時、実は監督は僕を想定して脚本を書いたということでした。というのも以前、監督とはTVドラマでご一緒したことがありました。ただ、当時はあまり好きじゃありませんでした(笑)。仕事がのろかったんです。『しまった! 今日はこの監督だから、そうとう遅くなるまで絶対に仕事が終わらないぞ』って感じで(笑)。でも、そのドラマの仕事をしている内に、次第にお互いのことがわかってきて、監督が求めているものや表現したいものが、僕にすごく近かった。それで、だんだん阿吽の呼吸が生まれて、最後にはいい友だちになっていました。
この脚本をもらった時も、いろんな構想を話してくれました。それによると、監督もこの映画のような夢を見たことがあったそうです。でも監督は、好きだった娘に会いに行かなかった。だから、この映画を通して、それを実現したいということでした。僕自身にもそれに近い経験があったので、脚本もすごく気に入ったし、監督とも意気投合してやろうと思いました」
以前、監督とやったというTVドラマのタイトルは?
トニー「『又見橘花香』と言います。このドラマを撮っている時は、監督がちょっと嫌いでした(笑)。でも、このドラマのおかげでいい友だちになったんです」
今回トニーが演じるアーチョウは、純粋な青年という点では前作と同じですが、前回が明るいゲイの青年だったのに対し、今回は幼い頃好きだった女の子のことをずっと気にかけているナイーブな青年を演じています。前作では女性の仕種を徹底観察したというトニー。今回はどうだったのか、尋いてみました。
前の作品(『僕の恋、彼の秘密』)も青春映画でしたが、まったくタイプが違います。この作品にはどのようにして臨みましたか?
トニー「最初は、またシュー監督と仕事ができるのでうれしかったのですが、役作りに関してはどうしたらいいかわからず、ちょっと緊張していました。でも監督から『何も準備する必要はないし、緊張することもない。ただ、心を柔らかく保って、いろんなものを吸収しやすいような状態にして、いろいろ僕に話して欲しい。それをうまく脚本の中に取り入れていくから』と言われ、それで初めて安心して監督にお任せすることができました。それに、他の3人も含めた4人の俳優と監督とのチームワークがとてもうまくいったので、それがすごく自然な形で作品に現れ、映画そのものがとてもナチュラルで純粋なものになったと思います」
今回の役柄は素朴でやさしい青年ですが、自分と似ているところ、違うところは?
トニー「アーチョウがシンシンを恋人として扱うのか、友だちとして扱うのかを一番気にしたのですが、監督は『彼女を子どもだと思えばいい』と簡単に教えてくれました。彼女が泣けば何か食べさせればいいし、駄々をこねれば遊んだりあやしてやればいいと言われたので、ほんとうに子どもに対するようにシンシンに対応しました。多分そういう面で、僕の子どもに対するやさしさがうまく態度に出たので、アーチョウがそのように見えるのでしょう。自分の一面が出たという点で、そこは自分と似ていると思います。違うところは、彼の方が物静かで温厚。僕はもっとうるさいです(笑)」
映画では兵役が出てきますが、兵役には行かれましたか?
トニー「まだ学生として1年残っているので、兵役はまだです。ただ、この映画を観た友人は『すごく本物ぽかった、本当にああだった』と言っていました。スタッフの大半の男性が兵役を経験していたので、皆が教えてくれたんです。どうやって退屈を紛らわしたかとか、ネズミを飼ったり、新人いじめをしたりしたとか。そういうのは、兵役中は絶対に経験することだそうです。なので、実際にはまだ行っていませんが、ちょっと体験できたかなと思っています(笑)」
後半のシーンは実際に花蓮で撮影したのですか?
トニー「花蓮と台東付近で撮りました。ほんとうに美しい所です。人が少ないので、環境汚染があまりなくて、海は真っ青だし空気もきれいだし、ほんとうに太陽の美しい場所です。台湾に残された最後の場所、という気がします」
その場所に個人的な思い入れはありますか?
トニー「あの時、僕たちは船のような形のかわいい民宿に1ヶ月ほど滞在したのですが、撮影が終わっても台北に帰りたくないくらい楽しかったです。撮影も楽しかったけど、撮影していない時も、毎日監督たちとミーティングをしたり、監督の話を聞いたり、自分たちの今の心境を話したり、過去の自分たちの経験を話したりして…お互い一緒にいて、ほんとうに楽しかった。この映画はチームで創作したという感じがあるので、花蓮はそういう楽しい思い出でいっぱいです」(続きを読む)
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