今回の演技で昨年の台湾金馬奨で主演男優賞にノミネートされましたが、サムさんにとって、この作品はどんなものになりましたか?
サム「実は、このような脚本をずっと待っていました。10年前に『メイド・イン・ホンコン』でデビューしてから、この10年の間にいろんな役をやってきましたが、ほとんどがコメディというか、チンピラにしても警察にしても、人を笑わせるような役ばかりでした。ずっとシリアスな役をやりたかったのですが、なかなかめぐり合えず、10年待ってやっとこの脚本が来たんです。
だから、賞は取れなかったけど、金馬奨にノミネートされたことは、とてもうれしかったです。あれだけたくさんの映画の中で、4人だけがノミネートされるんですよ。それに選ばれたということは、僕が同じような役ばかりではなくて、いろんな芝居ができるんだということを認めてもらえたからだと思います。脚本のタイミングもよかった。もし3年前だったら、こういう芝居はできなかったでしょう。今、この10年が経った状態で、ベストのタイミングでこの脚本が来たので、自分としても一番いい状態で演技ができました。僕にとっては、大事な作品です」
恐い顔をしてと言ったらこんな顔に(笑) やっぱり笑わせるのがうまい。
|
これまでにたくさんの作品に出演していますが、作品を選ぶ基準はありますか?
サム「以前は監督と脚本、相手役がどうなるのかを基準にしていました。といっても、厳密なものではないんですが。実は自分では、そんなに多くの役をやったとは思っていません。同じような役柄が多かったので。まだまだ、いろんな役ができると思っています。ただ、『ドッグ・バイト・ドッグ』をやった後は、脚本を重視するようになるでしょう。これから撮る作品はこれ以下のものにはしたくないし、自分でも、もっといい作品に出たいので。ただ、監督や相手も自分を引き出してくれるので、大事に見て行きたいと思います」
デビューから10年になりますが、この10年を振り返ることはありますか? また、もし役者になっていなかったとしたら、何をしているでしょう?
サム「役者として10年やってきましたが、常に不安が付きまとっていました。安定感がないんです。今は仕事があるけれど、いつ突然なくなるかわからない。忙しい時は、寝る暇がないくらい死ぬほど忙しいけれど、暇になると何をしていいかわからない。そういう時は、明日は飯が食えるかなあとか、家賃が払えるかなあとか、そっちが心配になってきます。
じゃあ、仕事がないから、アルバイトをして、スーパーでレジが打てるか、ウェイターができるか、というとできないんです。皆、僕のことを知ってるから。皆、サム・リーを知っているので「あれ、何やってんの?撮影?」ていう風に見られてしまう。だから、この10年を振り返ると、もう後戻りできない役者っていう仕事に就いてしまったんだなあと。もし、役者になっていなかったら、元々は内装などの電気関係の仕事をしていたので、多分、そっちの仕事をやるか、自分で会社をやっていたかもしれません。とにかく、もう後戻りはできないと思っています」
今後の予定を教えてください。
サム「ゼンゼン、ワカラナイ」 (一同笑い)
次の作品の予定とかは?
サム「今、フランス映画に出ています。クルーはフィリピンかどこかで撮影中で、9月の下旬には全部撮り終えます。自分としては、チャレンジになって面白いです。『無問題2』では日本語でセリフを話しましたが、今度は全部英語なので、とても楽しんでやってます」
どうりで、やたらと英語で挨拶をしてくれてました。この撮影中のフランス映画というのは初耳なので、ちょっと気になりますが、これから公開される作品としては『夜の上海』(9月日本公開)が控えています。また、今、香港で上映されて大ヒット中の『男兒本色』(主演はニコラス・ツェー、ショーン・ユー、ジェイシー・フォン)も楽しみな作品。その他にもパン・ブラザースのホラー映画や、ジョー・マ監督で水野美紀と共演した作品など、興味は尽きません。『ドッグ・バイト・ドッグ』を経て、俳優としての可能性を大きく広げたサムの快進撃は、始まったばかりのようです。
(取材日:2007年8月10日 アートポート本社にて)
P1 < P2 | ▼作品紹介ページ ▼TIFFでの監督とエディソン
|