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asicro interview 27

更新日:2008.9.22

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ダンディなベニー・チャン監督はアクションが好き
●ベニー・チャンの監督スタイルとこれから

スポンサーの意見などあるとは思いますが、監督が絶対譲れない部分はどこですか?

 監督「大作であれ小さな作品であれ、必ず意見は出ます。ジャッキー・チェンのようなビッグ・スターも意見を言います。皆、いい映画を作りたいと思ってのことなので、誰が何と言おうと絶対に譲らないというような頑固な部分は僕にはありません。いい意見があればそれを取り入れます。ただ、いい映画を作りたいという原則だけは曲げたくないので、その意見を取り上げることで、映画がよくなるかどうかで変えています。なので、絶対に譲れない部分というのはありませんが、強いて言うなら、いい映画を撮るということでしょう」

今回の映画の中で、これまでとは違う試みをした部分はありますか?

 監督「今回に限らず、作品ごとに毎回、難易度の高いアクションに挑戦しています。それには、製作費がどうしてもかかってしまうという面があります。ハリウッドのアクション映画は1つの頂点ですが、僕はそれを目指すのではなく、たとえばカンフーのような東洋的なアクションに挑戦していくつもりです」

これまではポリス・アクションが多かったので、監督のカンフー・アクション作品をぜひ観てみたいです。

 監督「もちろん、カンフー映画にも挑戦したいのですが、中国や香港の監督でカンフー映画を撮る方が多いので、むしろ今はカジュアルな作品を作り、皆が撮らなくなったらカンフー映画を撮ろうかなと考えています(笑)」

監督の作品には悪役にも同情できるような背景が描かれており、だんだんそれが強くなっているように思えます。そのようなドラマを描きたいのでしょうか?

 監督「悪役であれ正義側であれ、その背景には物語があります。ただ、80年代、90年代の映画を観ると、アクション部分だけでどんどん進めていて、ドラマ部分にスポットをあてることが少なかった。僕としては、そういう部分にスポットをあてて撮りたいんですが、アクションを増やすとドラマとして入れられる部分の時間が減るし、ドラマを増やすとアクションが減っていくし…バランスをとるのがなかなか難しいです」

特に今回の作品は、悪役側の背景をもっと描きたかったのでは?と思うのですが。

 監督「実は撮影しました。ただ、どうしても時間が長くなるので、編集でカットしました(笑)」

その部分は、DVDになる時にディレクターズ・カットとして入るのですか?

 監督「香港版には入っています。どこを入れたかは、ちょっと覚えていないのですが…」
 と気になる発言。香港版DVDはすでに昨年出ていますが、ディレクターズ・カット版はこれから出るというような説明だったので、別バージョンなのかもしれません。

監督の作品では、男性主役の場合が多いですね?

 監督「最初の作品、アンディ・ラウ主演の『アンディ・ラウの逃避行』はラブストーリーで、女性(ン・シンリン)が主人公です。第2作目(『帯子洪郎』日本未公開。主演はメイ・ロー)も女性でした。当時は、女性主演で撮った方がいいと言われていたので(笑)。男性主役の作品が多くなっているのは、意図的ではなくて、アクション映画を撮ってくれという出資者が多いからなんです。今はいいアクション俳優を探すのが難しくなっています。男性でも難しいのに、さらに女性となるともっと難しい。いい女性アクションスターが見つからないので、男性になってしまうのです。今、選ぶとすればミシェール・ヨーあたりですが、もう若くはありません。結果的に、男性アクションスターが主人公ということになるのです」

アクション映画以外のジャンルに興味はありますか?

 監督「出資者が好きに撮っていいと言ってさえくれれば、ラブストーリーも撮ってみたいです」

 そんな監督が「好きな監督、影響を受けた作品」としてあげたのは、やはりハリウッドのヒット・メイカーとして有名なジェームズ・キャメロン監督と、芸術性と大衆性のバランスに長けた巨匠・黒澤明監督の作品でした。さらに、作品ジャンルに関する質問が。

『ロード・オブ・ザ・リング』のようなファンタジー作品には興味がありますか?

 監督「今は全世界中で、テーマが不足しています。今ハリウッドではファンタジーが中心ですが、香港はどうかというと、特撮部分が一番の難関です。ハリウッドを超えるような特撮場面を撮れるところがありません。これは、80年代、90年代に続く将来の香港映画の展望にも関わっているのですが、将来は当然CGにかなり頼る部分が出て来ると思います。でも、まだこの特撮部分では、香港がハリウッドや日本を超えることは難しいでしょう。これができないかぎり、香港でファンタジー映画を撮るのは難しいと思います」

 おそらく、監督がイメージするスケールの作品を撮るのは難しいということなのでしょう。とはいっても、世界レベルでコラボレーションが進んでいる今、香港にこだわらず、世界の有能なスタッフと組んで作品を作るというのも選択肢。アクション豊富で、なおかつ人間ドラマもきちんと描き込んだ、ベニー・チャン監督ならではのカンフー特撮時代劇も、近い将来ぜひ観てみたいものです。

(2008年7月3日 アートポート本社にて)


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