ジョニー・トーを巡る男たち
−アンソニー・ウォン(黄秋生)
&フランシス・ン(呉鎮宇)
ジョニー・トー監督の映画『エグザイル/絆』の日本公開を前に、PRとファン・パーティのために主演のアンソニー・ウォン(黄秋生)とン・ジャンユーことフランシス・ン(呉鎮宇)が来日。アンソニーはたびたび来日していますが、フランシスは本作の第1部的作品『ザ・ミッション 非情の掟』のPR以来の公式来日で、実に7年ぶり。香港映画界を代表する2大個性派俳優が揃っての来日とあって、長年のファンたちや香港映画を応援しているマスコミ陣たちもいろめきたちました。来日翌日の2日には記者会見が開かれ、その後、ファン・パーティ(その様子は司会を担当した水田菜穂さんのブログをどうぞ)。今回のインタビューは、その後に行われました。
フランシス・ン(左)とアンソニー・ウォン 2人揃うとまるで映画のワンシーンのよう
●ジョニー・トー監督の現場
Q:ジョニー・トー監督の作品にたくさん出ていますが、他の監督の現場と違うところは?
フランシス「僕はこれが2作目ですが、やはり脚本をまったく用意してくれないのが特徴。香港ではよくあることだけど、トー監督の場合は、脚本どころか、物語に関する情報も一切教えてくれない。現場の雰囲気は、自由にやらせてくれました。待機している時は、よく出前をとったり、おいしいもの買って来て現場で食べたりしたけど、全然平気。彼自身も自分でバーベキューをしたりして、お互い干渉しないようにしてた(笑)」
アンソニー「一番違うのは、現場でよく大きな声で怒鳴ったりするところ。ただ、1つ付け加えておくと、役者に怒ったりはしない。スタッフには怒ってるけどね。俺たちから見ると、彼はとても可笑しいんだ。筋が通ってないことが多くて(笑)」
Q:じゃあ、周りのスタッフは大変ですね。
アンソニー「そう。しょっちゅう叱られてるんで、入れ替わりも激しい」
Q:脚本がない場合、素の自分が出るのでしょうか? それとも期待されている自分のイメージで演じるのですか?
フランシス「僕の場合は、自分が理解している部分だけでいいみたい。監督がどんなことを考えているかは気にしません」
アンソニー「この映画はどちらかというと、監督が俺たちの理解に基づいて撮ったと思うんだ。俺たちの理解といっても、特に根拠があるわけじゃなくて、まったくの感で感じたものだけど、それを元に監督が加工していったんだ」
フランシス「監督はいろんな役者を起用しているので、役者たちのキャラクターが監督にかなり影響を与えていると思うんです。例えば『PTU』にしてもそうだし、今回の作品もそうだけど、現場での僕たちはまるで新人のように扱われてた。何もケアしてくれない。むしろ、僕たちが自分で理解しているところだけを上手く出せば、それを受け入れてくれるという感じだった」
Q:『ザ・ミッション』の続編とも言われていて、前回と同じメンバーが揃っていますが、7年が経ち、『ザ・ミッション』では皆ギラギラしていたのが、今回はちょっとくたびれた感じが出ています。これは自然に出たものですか? それとも演出?
フランシス「まさにそのとおりで、監督自身、次はどういう展開になるのかわかっていなかったと思うな。ほんとうに撮りながら、一緒にアイデアを出し合ったり、次の方向性を見い出したりしていたので、そういう意味では、ところどころに自然な演技が出たり、予定外の展開が生まれたりと、そういう効果はあったでしょう」
Q:自分たちでアイデアも出したのですか?
フランシス「ロケしている間、監督はいろんなことを考えているだろうと思って、僕らはほとんど口は出しませんでした。ラストの銃撃シーンだけは、何か僕たちなりのアイデアを出して欲しいと監督からリクエストがあり、たとえばインスタント写真を撮ったりとか、空缶を蹴り合ったりとか、そういうのは僕らが話合ってアイデアを出しています。それだけですね」
アンソニー「最初にこの話を持ちかけられた時、どういうストーリーか監督に尋ねたんだ。そしたら『最初、ある男が家にやって来てドアをノックし、ウーはいるか?と尋ねる。奥さんがいないと答える。また別な男がやって来てドアをノックし、同じセリフを言って、またいないと答える』『後はどうするんですか?』と尋ねると『いや、わかんないよ』と。説明はそれだけだった。それだけで映画ができたんだから、すごいだろ(笑)」
Q:全部、即興なんですね!?
アンソニー「監督は即興だったと思うけど、俺らは何も考えなかった」
フランシス「言われるまで待ってればよかったんです。言われたら、ラストシーンみたいにアイデアを出したので」(続きを読む)
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