公式来日は初のチェン・スーチョン(左)とチン・ハオ(右)
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主演のふたりが語る
スプリング・フィーバー
−チン・ハオ(秦昊)&
チェン・スーチョン
(陳思成)
11月6日より絶賛公開中の『スプリング・フィーバー』。男女5人の複雑な愛憎をめぐるラブストーリーでありながら、誰もが思い通りにならない思いを抱えつつも夢のように漂い、したたかに生きて行くロウ・イエ監督ならではの人間ドラマになっています。
一方で、ゲイやバイセクシャルを扱っているため、主人公たちの大胆な性描写でも話題となりました。その主人公を演じた中国大陸の新進俳優チン・ハオ(秦昊)とチェン・スーチョン(陳思成)が、7月に開催された東京国際レズビアン&ゲイ映画祭のゲストとして来日。Q&Aの前にインタビューをすることができましたので、公開に合わせてご紹介します。
Q:まず、この作品に出ることになったきっかけを教えてください。
チン「ロウ・イエ監督が『天安門、恋人たち』でカンヌから帰って来た時、ワン・シャオシュアイ監督も一緒に中国へ帰って来てパーティがありました。当時、ワン・シャオシュアイ監督の『青紅』という作品に出ていたので僕も呼ばれて、そこでロウ・イエ監督に紹介されました。その時はご挨拶をして、『ふたりの人魚』がすごく好きですと言いました。
その時の僕は帽子を目深にかぶっていて、顔がよく見えなかったと思うんですが、1年後に助監督の方から電話があり、ロウ・イエ監督が作品を撮りたがっているので一度会って話をしないかと。監督は僕が出ていた『青紅』を観ていて、とてもよかったとおっしゃってくれました。あの時は5時間以上お話したと思います。映画のことだけじゃなくて、いろんなことを話しました。監督はその時『今度は帽子をかぶっていなかったので、やっと顔がよく見えたよ』とおっしゃっていました。
その日の内に、監督からメールで脚本が送られてきたので読みました。読み終えるとすぐ監督に電話をして、ぜひこの役をやらせていただきたいと言いました。同性愛者の部分がかなり多い作品ですが、演じる上で、それは僕の道徳感に照らし合わせてもまったく問題はなかった。ロウ・イエ監督の映画に出るのですから。監督と映画を撮影できるのは素晴らしいこと。ほんとうに光栄だと思いました」
チェン「僕は今回のお話があるまで、ロウ・イエ監督とはお会いしたことがありませんでした。ちょうど広州にいた時、助監督の方から連絡があり、こういう話があるんだけど…と言ってきました。ロウ・イエ監督は僕が出演したテレビドラマを見ていて、ハイタオ役にぴったりだと思ったそうです。それで、脚本を送ってくださったので読んでみると、ほんとうに素晴らしい作品だと思いました。これまで、中国にこんなに素晴らしい作品はなかったんじゃないかと思ったほどです。
ロウ・イエ監督の作品は3本とも観ていましたし、一番好きなのは『天安門、恋人たち』、あまり好きでないのは『パープル・バタフライ』でした。北京へ帰った後、監督に直接お会いしてそういう正直な話をしました。そして『この作品に出てくれる?』と言われたので、『ぜひ、出させてください』とお返事しました」
Q:お二人はストレートだと思いますが、今回、ゲイやバイセクシャルな役柄を演じるにあたって、役作りのために何かしましたか?
チン「監督が様々な本や映像資料を提供してくださったので、それを見て準備しました。ただ、実際に撮影に入ってみると、それは必要なかったんだと思えてきました。異性愛者であろうと同性愛者であろうと、一人の人間を演じる上で、そのことは関係ないと思えたのです。一人の人間の心の中を確実に演じきる、俳優にとってはそれしかありません。きちんと演じきった後は、必ず観客を感動させるような作品になるに違いないと思えるようになりました。実際、そういう作品に仕上がっていると思います。
そうは言っても、やはりベッドシーンなどがあるので、テクニカルな面ではちょっと難しい部分もいろいろありました。そういった困難に直面した時、ロウ・イエ監督は『とにかく強い意思を持ってこの作品をやり遂げよう、ちゃんと完成させていい作品にすれば、きっといろんな人が僕たちに感謝してくれると思う』とおっしゃいました。人間の存在に敬意をはらっているからです。なので、この作品を完成させることに大きな意義を感じました」
チェン「ちょうど撮影に入る前、大雪による災害があり、撮影が4ヶ月ほど遅れてしまいました。その関係で、全体的に半年ほど準備期間ができたんです。その間、たくさん本を読み、同性愛を題材とした映画もたくさん観ました。実際、この映画が撮影された南京で、いろんな同性愛者の方たちと会って取材もできました。自殺するワン・ピン役のウー・ウェイは同性愛者なので、彼からいろんなことを教えてもらいました。感受性や理論的なことも含め、いろんなことを教えてくれて、とても勉強になりました」
Q:ジャン役のチンさんは一途で3人の恋人との遍歴があり、女装シーンもあるなど、難しい役柄だと思いましたが、演じてみていかがでしたか?
チン「俳優としては、この役にかぎらずどんな役も難しいと思っています。同性愛者の役ですが、たとえば仕事をして、ご飯を食べ、家に帰って男の人と寝る、または女の人と寝るという違いがあるだけで、一人の人間の行為としては同じ。なので、難しさの点では、他の作品と同じくらいでしょう。
もっとも、性愛のテクニックやベッドシーンは難しかったです(笑)。同性愛者同士の独特の雰囲気もありますし、そのあたりをどうとらえて出すかというのも難しかった。ラブシーンでは裸になることも多かったので、そこはとても戸惑う面がありました。裸になるシーンの時、ロウ・イエ監督が『他のスタッフも脱いでしまえば、恥ずかしがることなくやれるのでは?』とおっしゃったんです。それで、あるスタッフの方が『僕も脱いだ方がいいでしょうか?』と聞きにきたので、『いや、絶対脱がないでください。皆さんが脱ぐと、僕らは余計にやりにくくなってしまうので、脱がないでいいです』と答えました(笑)。
共に中央戲劇學院を卒業した同じ歳の二人。今後の活躍が期待されている。
ロウ・イエ監督は、セックスシーンを撮る時に、たとえばカメラを窓の方にふるとか床にふるとか、そういう風にして撮ってしまうと、それはただセックスをしているという事実しか映せない、そうではなくて、愛を交わす二人の情感をしっかり撮るとなると、レンズは必ず君たちの方へ向けざるを得ないとおっしゃいました。そう言われて、僕らは人物の情感をきちんと表現しなければいけないということが、しっかりとわかりました」(続きを読む)
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