Q:ハイタオ役のチェンさんは2人の恋人の間で揺れ動く役柄でしたね?
チェン「僕は絶対的に異性愛者なので(笑)同性愛者の演技をするのは難しかったです。なので、この役を演じるにあたっては、いろんな方たちとお会いしていろんな話を聞きました。異性愛の人、同性愛の人、いろいろです。昔つきあっていた彼氏が同性愛者になり、別れてしまったという女性もいました。チン・ハオが女装して歌うクラブの経営者は同性愛者ですが、最初はそうではなく、奥さんもお子さんもいたそうです。子どもが出来た後に、偶然にそういう機会があり、同性愛者に変わっていったのだそうです。
僕の知るところでは、染色体は6種類あります。同性愛と異性愛の間に6種類のステップがあるとすると、その中には限りなくグレーなゾーンがあって、その中にいる人たちは同性愛にも異性愛にもなり得るのだと思います。アン・リー監督は『誰にでもブロークバック・マウンテンはあるんだ』とおっしゃってますが、誰にでも可能性はあるということですよね。ただ、自分では経験したことのない同性愛者を演じるというのはやはり難しかったので、理解できる範囲で演じました。最終的に僕がたどりついた結論は、無性愛でした。男も女も関係なく、その人が好きかどうかということ。そういう風に考えて演じる、これが最後の結論でした」
Q:欧米と比べると中国も日本もゲイの人はまだまだ社会の中で生きづらいと思うのですが、そういう人たちに対するこの映画に込められたメッセージとは?
チン「日本の状況はわかりませんが、中国やアジア一帯をみると、同性愛は禁じられてもいないし迫害されてもいません。ただ、それを広めようという状況ではないし、自分は同性愛者であるとあまり公言できるような状況でもないようです。カミングアウトしている人はごく少ないと思います。なので、そういう人たちに対しては、人間は男でも女でも自由に人を好きになっていいんだ、自由に恋愛していいんだと。人間なのだから、喜びも哀しみも同じように一緒に享受していいのだと強く感じて欲しいです。また、同性愛者でない方々には、男であろうと女であろうと愛しあうことには何も障害はない、自由に愛しあっていいんだということを、再確認していただければと思います」
チェン「同性愛者については中国でも世界でも、まだ人権がしっかり確立していないと思います。アメリカでさえそうですよね? 55の州のうち2つの州しか結婚を認めていない。アメリカはもっと自由になるべきでしょう。同性愛というのは自然な行為です。いろんな人が、様々なライフスタイルや人生を享受しているのです。だから、お互いを尊敬し合って自由に生きるというのは、皆に等しく与えられた権利だと思います。とにかく、誰かを傷つけない範囲で自由に生きることは、人間の基本ですよね。この世界では同性愛者の問題がかなりクローズアップされがちですが、世界にはありとあらゆる人種が存在し、多くの個人が存在しています。そこでどうやって生存していくかということは、個人の自由に委ねられるべきでしょう。だから、お互いを尊重しあい、他者を傷つけなければそれでいいのではないでしょうか」
二人とも熱く語るタイプだったので、あまりたくさんの質問ができなかったのですが、読んでいただくとわかるように、チン・ハオはどちらかというと感性の人。感情で人物をとらえていくタイプ。反対にチェン・スーチョンは理論家で客観的に役をとらえ、深く研究して自分のものにしていく俳優という印象でした。そういうコントラストも、映画の役柄に生きているのではないでしょうか。
今回はレズゲイ映画祭のゲストということもあり、実はこの日、一緒に取材に入ったのが、ゲイのための総合情報サイト「g-ladxx(グラァド)」の記者さん。ゆえに、映画の質問よりもゲイに関するお話がやや多くなってしまいましたが、大陸の俳優らしく二人とも真面目にきちんと答えておりました。ロウ・イエ監督のことや、レスリーファンには気になるあのシーンについても質問したかったのですが、こちらはシネマ・ジャーナルの記者さんがきっちり取材しておられましたので、気になる方はぜひこちらもご覧ください。
(2010年7月19日 青山スパイラルにて2媒体合同取材)
●東京国際レズビアン&ゲイ映画祭でのQ&A
その後に行われたQ&Aでは、取材で話してくれたのと同じようなトークだったので詳しくは割愛。 「g-ladxx(グラァド)」さんにレポートが出ているので、そちらもご覧ください。
チェン「1つアイデアがあります。ご覧になる方も皆、服を脱いで観るというのはどうでしょう?」(大拍手) チェン・スーチョンはけっこうお茶目さんで、司会のマーガレットさんに突っ込まれていました。
観客からの質問「一番印象に残っているシーンは?」
チン「まだ1回しか観てないのですが、シャワーを浴びているシーンが印象深いです」
チェン「僕が好きなのは、最初のシーンで蓮の花が開いているところ。僕と同じように純粋な感じだから(笑) アリガトウゴザイマス!」(チン・ハオは素足に靴を穿いてました。今風ですね!)
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