孔子という題材ゆえに、いろいろなことを言う人がいて、ドラマ化は大変難しそうですが、映画の審査基準が緩くなってきたように、ドラマの審査基準も徐々に変わって来ることを期待して、ぜひいつか実現させて欲しいものです。
●男性監督より女性監督の方が気楽
Q:中国の第5世代を代表する女性監督でいらっしゃいますが、監督として女性であることで大変だったこと、逆によかったことはありますか?
監督「むしろ女性なので、どちらかというとやりやすかったですね。男の監督たちは大変です。女優たちの誘惑がいっぱいで、これを避けるにはどうすればいいかと監督たちは四苦八苦しています(笑)。私のような女性監督には、それがないのでラクです。1本の映画を撮るのに、男性の監督はあちらの女優さん、こちらの女優さんと面倒をみるのが大変なんです。あちらの女優によくすると、こちらの女優から腹を立てられるということがあり、それに大変気を遣います。あの女優はセリフが多くて、自分は少ないと怒られたり泣かれたりするんですよ。
その点、私はラクです。たとえばある男優がいて、彼のシーンをカットしたとしても、『ここはもうカットするから』とそれだけ言えば、彼は女優たちのように泣きつくことなく諦めてくれます(笑)。涙を飲んで我慢してくれます。
チョウ・ユンファ似の孔子像は近寄るとこんなに大きい!
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周りのスタッフはほとんど男性です。彼らは、監督が一番疲れて大変だというのがわかりきっている。でも、私は絶対休みません。休まないでやり続けているので、自分たちも休めない。それで一生懸命、自分の力を精一杯発揮して頑張ってくれます。それに対していい評価を与えると、喜んでさらに頑張ってくれる。そういう所で、私は仕事ができています。
最近も1本ドラマを撮り終えましたが、主演男優があまりに疲れきってしまい、疲れて泣くほどの悲惨な状態になっていました。それで、20キロほど離れた診療所に点滴を打ちに行かなければならず、毎日それに付いて行きました。点滴を打ち終わるには30分ほどかかるのですが、その間、彼は病室に横たわって寝て、私はその横で脚本などを読んでいました。
彼が『監督はどうして休まないんですか?』と言うので、『あなたは男で私は女だから、同じ病室で一緒に寝るわけにはいかないじゃない。それに、2人とも寝ちゃって、万が一、点滴の針がずれたら大変でしょ?』と言いました(笑)。私はずっと彼に付添って看病をしたわけですが、彼はそれに感動してすごく頑張ってくれ、いい作品になりました。
そういうことは、男の監督にはなかなかできないですね。そこまで気を配ってやるのは。俳優と監督との距離感、どれだけ気を配ってあげるかというのは、私はできるけど、なかなか難しいことだと思います」
ここでぎりぎりのタイムアップ。持ち時間30分のうち、撮影に5分のはずが残りがなくなり、室内で撮影してくださいと言われたのですが、取材の前、監督に孔子像と撮りたいと話していたのが功を奏し、「急いで行きましょう!」と監督自ら部屋の外へ走り出したのでした。撮影もスムーズに進むよう、様々なポーズ、アングルをパッパッと決めてくださいました。さすが、監督! 教育者のような厳格さと凛とした強さの中に、とってもユーモラスでお茶目な部分も合わせ持つフー・メイ監督。そのきめ細かな演出は『孔子の教え』の中で、十分に堪能することができます。人間孔子の姿を、チョウ・ユンファ渾身の演技と共に、大スクリーンで味わってください。
(2011年7月29日 湯島聖堂・斯文会館にて)
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