この映画にはボリウッド映画への愛が詰まっているの −ファラー・カーン
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代表作『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』の日本公開で来日したインドのファラー・カーン監督
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ボリウッド映画のダンス・コレオグラファーとして世界に名を馳せるファラー・カーン監督の、2007年の大ヒット作『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』が絶賛公開中です。5月には全国拡大で続々と公開予定。ますます盛り上がりそうな本作の魅力、そしてファラー・カーン監督の魅力を、インタビューでたっぷりとお伝えします。
当日、テーブルの上には、ナッツとお米を黒糖でからめた、ちょうど日本のおこしのようなインドのお菓子が用意されていました。まずは監督からお菓子を勧められ、それをポリポリと食べながらインタビューがスタート。英語でのインタビューでしたが、監督の気さくな人柄が伝わるよう、今回はあらたまった口調ではなく口語体にてご紹介します。
●『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』はこうして誕生した
Q:本作のストーリーは監督が考えたのですか? なにかヒントになった物語はありますか?
監督「ロンドンで上演していたアンドリュー・ロイド・ウェーバーの『ボンベイ・ドリームズ』というミュージカルの振付をやったんだけど、そこで描かれていたことがヒントになったの。『ボンベイ・ドリームズ』はインドのスラムの少年がスーパースターになるというお話なんだけど、それは絶対にあり得ないわ。ボンベイでスーパースターになりたかったら、誰かの息子でないとだめなの。王族制度みたいなものね。部外者はとても少ない。でも、スラムボーイでも生まれ変わったらあり得るかもしれないと思って、新しい物語を書いたの。脚本を書く時は、いつもフィルム1巻ごと見せ場を入れるようにしてるのよ。観客には15分おきにハイライトを味わってもらいたいから」
Q:生まれ変わらないとスターになれないというのは、ボリウッド映画界では親族に映画関係者がいないとスターになれないということですか?
監督「そう。映画関係者じゃなくてスターになった人というと、例えばアミターブ・バッチャンね。シャー・ルクもインド映画界には何のコネも持っていなかったけど、あんなにスーパースターになった。でもそのくらいで、たいては誰かの息子だったり、兄弟だったり、親戚なの。ファミリービジネスね。コネがないとなかなか映画業界に入り込めないし、スクリーンテストも受けさせてもらえないかもしれない。そのことは映画の中で、ジョークとしてたくさんちりばめているわ」
Q:この作品は昔の作品『カルズ』にヒントを得ているとも言われていますが、同じ復讐劇でも本作はハッピーで楽しい作品になっています。このようにしたわけは?
監督「『カルズ』は1980年の映画で、私の大好きな作品。完全に魅了されていたわ。実は「オーム・シャンティ・オーム」は『カルズ』の中に出てくるとても有名な歌なの。この作品はよく『カルズ』のリメイクだと言われるけど、それは違うわね。ヒンディー語映画では、輪廻転生や復讐はよく使われる題材なの。輪廻する理由としても復讐が一番ありがちだから、そういう意味でもリメイクではないのよ。
ハッピーエンディングにしたのは、インターミッションの前でヒロインのシャンティプリヤが死んでしまうので、観客がとてもショックを受けると思ったから。そういう人たちのためにも、最後はハッピーエンドにしたかったの。映画の中にあるように『映画と同じく人生も、最後は全てが幸せにハッピーエンド。ハッピーじゃないとエンドじゃない。映画はまだ終わらない(つづく)』ってね」
Q:本作ではボリウッド映画にたくさんのオマージュが捧げられていますね。
監督「70年代のボリウッド映画への愛を込めているの。私はそれを見て育った。映画学校には行かなかったけど、私にとってはそれが学校だったの。私の人生のほとんどは、それらの映画から影響を受けているわ。それで、輪廻転生というモチーフを使って、いろんな映画に関する出来事や引用、オマージュを盛り込んだの。次の作品の『ハッピー・ニュー・イヤー』にもいくつかの映画の引用があるけど、それはまったく違うものよ」
Q:1作目の『僕がいるから』も『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』も、ラストシーンで映画の裏方の人たちがミュージカル風に出て来ますが、こういう風にした理由は?
監督「そのアイデアは『ボンベイ・ドリームズ』からもらったの。ミュージカルでは最後に全員が舞台に出て来て挨拶し、観客が拍手をするでしょ。それで『僕がいるから』の最後に取り入れてみたの。即興で『今、それを書いて出して』という風に。当時は、そんなところがウケるとは思っていなかったんだけど、皆が『僕がいるから』を見たがるのは、舞台裏の人たちが見られるからだったのね。それで『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』ではもっと凝ってみた。今ではそれが、私と仕事したい理由の1つになっているの。映画の最後に出られるからって(笑)」
エグゼクティブ・プロデューサーのサンジブ・チャウラさんが2作ともいじめられていて笑えました。
監督「彼は財布のヒモが固過ぎて、皆に嫌われていたの。といっても、愛されてもいるんだけど、そのシーンで怨みをはらしたのよ(笑)」
●出演者たちの魅力
Q:身近で見たシャー・ルク・カーンさんの魅力を教えてください。
監督「シャー・ルクとは彼がスーパースターになる前からの知り合いよ。彼の2作目の作品で一緒に仕事をして、仲良くなった。もう22年くらいになるわね。それから、彼はスーパースターになったの。彼ほど、一生懸命働くスーパースターは見たことがないわね。22年前もそうだったし、今もそう。セットに来るとすごく意気揚々としてるし、ポジティブなエネルギーを感じるわ。彼は撮影のためならなんでもやってのける。多くの俳優は、撮影できない問題を山のように抱えてて、いちいち言い訳をするんだけど、彼は違う。映画に全人生を捧げているの。そういう所がスクリーンに出るから、皆に好かれるんじゃないかしら」
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