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asicro interview 47

更新日:2013.4.14

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舞踊監督、女優としても活躍するファラー・カーン監督
Q:シャー・ルクさんの『ディルセ 心から』*に出てくる「チャイヤ・チャイヤ」という列車の中の曲は、命綱なしで踊ったそうですが、ほんとうですか?

 監督「女優には付けてたんだけど、彼は簡単な命綱さえも拒んだの。列車の上を自分で走り回っていたわ。蒸汽機関車の煙突の煙が出る所まで行きそうになったので、それは止めたのよ」

Q:ディーピカーさんに初めて会った時の印象、また彼女の魅力を教えてください。

 監督「当時、彼女はすでに有名なトップモデルだったわ。最初に私に会いに来た時は、美人だったので『ハッピー・ニュー・イヤー』に出てもらうつもりだったの。それでスクリーンテストに来てもらったんだけど、彼女はとてもきれいだけど、すごくモダンというよりは、70年代の女優みたいに威厳があって、優雅だったのね。若いティーンエイジャーには見えなかった。それで、シャー・ルクと並んでもひけをとらないし、素敵だろうと思ったの」

Q:シャー・ルクさんが途中ですごくシェイプアップ(後半で見事に6パックに割れた腹筋を見せる「Dard-e-Disco」のシーン)して出て来ますが、あれは撮影のどのタイミングで撮ったのですか? 撮影中、ずっとあの体型を維持されていたのですか?

 監督「あの曲の時のためだけよ。彼はとても頑張って、私が望んだアイテム・ボーイになってくれた。普通、アイテム・ソングでは女性が身体を見せたり、水に濡れたりするんだけど、私は男性版を作って女性をハッピーにすることにしたの。彼は3ヶ月間、あのシーンのためだけにとても頑張って身体を絞ったのよ。撮影したのは中休みの時。私たちは6月、7月、8月と3ヶ月の休暇をとり、9月にあのシーンを撮ったの」

●ダンス・コレオグラファーとして

Q:ファラーさんはダンス・コレオグラファー(舞踊監督)としても有名ですが、マイケル・ジャクソンの「スリラー」を見てダンスに興味を持ったそうですね。どこに惹かれたのですか? またダンスは、どのように勉強したのですか?

 監督「私がダンサーになったのは、マイケル・ジャクソンに恋したから。何時間も自分で練習したわ。他の皆もマイケルに夢中で、当時はまさにダンスブームだったの。80年代はマイケルだけじゃなく、エレクトリック・ブーガルーズとかマドンナなんかもいて、それを次々と追っかけていった。舞踊監督になったのはアクシデントだったの。もともと監督になりたくて、ADとして他の監督の作品に入っていたんだけど、それには有名な振付けの先生(サロージ・カーン)がついていた。ところが、撮影の日にその先生が他の映画撮影でいなくて、監督から『君、できるから、やってみないか?』と。偶然の成り行きで、ダンスの仕事を始めたのよ」

Q:ダンスはすべて自己流なのですか?

 監督「当時のインドには伝統舞踊の授業しかなくて、ボリウッド・ダンスはちょっと見下されてたのね。今はボリウッド・ダンスがすごく人気で、ヒップホップやバレエのクラスなんかもあるけど。私が振付したダンスシーンがかっこよかったから、その影響もあるみたい。でも、私の時代にはなかったのよ。それに、家庭の事情でお金がなくて、学校どころじゃなかったしね(笑)」

Q:では、MTVを見て練習したのですか?

 監督「そう。たくさん見た。でも、当時のインドではまだMTVをやってなくて、誰かがアメリカで録画したビデオをもらって見たの。マイケル・ジャクソン、マドンナ、シンディ・ローパー、ボーイ・ジョージ…と、何度も見たわ」

Q:音楽シーンの撮影では、現場で音楽を聴いて、振付やカメラワークの決定も1日でやると聞きましたが、ほんとうですか?

 監督「それは違うわね。実際は、撮影前に何度も音楽を聞いて、リハーサルをたくさんやっているの。音楽シーンは単にダンスステップのためだけじゃなくて、セットはどうするかとかストーリーはどうなっているかとか、いろんな要素が関わってくる。ダンスステップだけなら撮影の1週間くらい前に決められるけど、映像は音楽を聞きながらじっくり作っていくのよ」

Q:1曲の中にいろんなシーンがありますよね。それも自分でデザインするのですか?

 監督「私は音楽シーンの監督でもあるの。振付をしている時は、映画の方の監督はお休みで、その間にたくさんの映画を撮っているような感じ。決定権は自分にあって、衣装やセット、カメラのアングルなど、美術監督と相談しながら考える。5日間かけて、小さな映画を作っているようなものね」

Q:カメラワークも自分で考えるんですか?

 監督「自分が欲しいカメラアングルや時間、歌詞などを全部決めて、音楽シーンの脚本を作るの。1行程ごとに何が起きるか書き出して、コピーしてユニットの皆に配るので、どのように撮影するかは皆が知っている。準備がきちんとできているの。私のダンスシーンの脚本コピーはとても有名なのよ。これをなくすと何もできなくなるわ」(次頁へ)


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*本作の「チャイヤ・チャイヤ」でファラー・カーン監督は2度目のフィルムフェア・アワード最優秀舞踊監督賞を受賞しています。

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