●キャスティングについて
Q:キャスティングが見事で、特にリンとイエを演じた二人は、演技が初めてとは思えませんでした。凄い新人を発掘されたと思うのですが、二人に決めた理由と、どんな演技指導をされたのか教えてください。
監督「まず、イエ・イーカイを演じたチェン・カイユアンですが、もともと彼にはちょっとワルっぽい、不良学生みたいな雰囲気がありました。しゃべり方もあまり礼儀正しくなかったし(笑)、かつては親や先生にすごく反抗した時期もあったようです。そういった、もともと彼が持っている雰囲気がイエ・イーカイにぴったりだと思いました。
リン役のトン・ユィカイは、実はトレーニングに入ってからクランクインの1週間ほど前に、突然姿を消しました。多分、この役を演じるプレッシャーに耐えられなくなったのでしょう。僕らは当然、もうすぐクランクインなのにどうしよう…と焦りました(笑)。でも結局、彼はちゃんと戻って来ました。
話を聞いてみると、どうやら彼は幼い頃から習慣として、長い間1つのことに向き合って何かをやり遂げるということをしてこなかったようでした。だから、こういう風にトレーニングをやらせれ、演技をしなければいけないという大きなプレッシャーに耐えられなくなったということでした。
また『こんな良い子の模範生は演じたくない』と言いました。実は彼は、高校に入る前までは親の言うことをよく聞く素直な子だったそうです。そういうおとなしい性格の子が、高校に入ってがらっと雰囲気を変え、とても開放的で自由な学生になった。だから『もうそういう模範生に戻りたくない』と言っていました。でも彼は、中学までは模範生だったわけです。そういうタイプがリン・ヨンチュンにとてもふさわしいと思いました」
秘密を共有する3人は次第に親しくなる
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森の奥の池で起こった事件に対して二人は…
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Q:リンが2つ目の事件の後で逃げ出すのも、プレッシャーから来ていますよね?
監督「そうですね。物語の中の彼と実際の彼は同じなんです。きっと、天の神様が采配してくれたんでしょう(笑)」
ということで、特別な演技指導はしなくても、本人のキャラクターがそれぞれの役柄に自然と反映されていたようです。
Q:二人はこれからも俳優をやるのでしょうか?
監督「もう二人とも事務所に所属して、俳優の道を歩いています。彼ら以外にも、この『共犯』の出演者たちは評判になったので、皆それぞれ映画やテレビに出ています」
実際、本作で物語の中心となる男女6人はそれぞれに個性的。演技経験のあるホアン役のウー・チエンホー、シャーの同級生を演じるウェン・チェンリンの他は皆、今回が初めての本格的演技体験でした。被害者のシャーを演じたモデル出身のヤオ・アイニン(公開時に来日。日本の写真家・川島小鳥の最新写真集『明星』にも多数登場)と、ホアンの妹を演じたサニー・ホンも今後注目の女優となっていきそうです。また取材後、宣伝担当さんに伺ったところ、監督が最も気に入っているのは、ホアンを演じたウー・チエンホーだとか。3人の少年の中で物語の鍵をにぎる中心人物であり、難しい演技が要求される役柄を見事に演じています。
Q:撮影中の3人は仲がよかったのですか?
監督「まだ子どもなので、冗談を言ったりして皆でわいわい楽しくやってましたね(笑)」
Q:できあがった映画を見て、彼ら自身はどんな反応をしていましたか?
監督「すごく驚いていました。もちろん、撮影の時は少しずつ、ワンシーンごとに撮っていくので、最終的にどんなものができるのか彼らにはわかりません。だから、できあがったものは彼らの想像を越えていたみたいで、すごく驚いてびっくりしていました。特にチェン・カイユアンですが、彼らの世代は自分がかっこよく見えるかどうかをすごく気にします。映画を観て『誰が一番かっこいい?』とか、そういうことを気にしてました(笑)」
●次回作とこれから
いろんなジャンルの作品を撮ってみたいと笑顔がこぼれた
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Q:次回作(『私家偵探』)はお好きなサスペンスですね。
監督「そうです。やはり興味がありましたし、たまたまそういう物語に出会ったので。私立探偵のお話ですが、今度はその中にもっといろんなことを盛り込んでいくつもりです。ラブストーリーの要素もあります」
Q:それでは青少年ではなくて、今度は大人の話なんですね?
監督「大人の世界の物語です。登場人物は比較的年齢が高めで、40歳前後の人物を想定しています」
Q:推理もの他に、撮ってみたいジャンルはありますか?
監督「ラブストーリーやアクションもやってみたいですね。いろんなジャンルのものを試してみたいんです」
『光にふれる』があまりにも瑞々しい作品だったので、まったく印象の違う『共犯』には驚いたのですが、作品としての完成度の高さ、緻密さ、絵作りへのこだわりは増しているようです。ドキュメンタリーから完全に離れることで、イメージを自由に表現できる部分が増えたからでしょう。いろんなジャンルに挑戦してみたいというのも、表現力や可能性を広げていきたいという創作意欲の現れ。気になる次回作も含めて、チャン・ロンジー監督の今後の作品がどういう風になっていくのかが楽しみです。
(2015年6月5日 マクザム本社にて単独取材)
(c)2014 Double Edge Entertainment
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