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asicro interview 71

更新日:2016.5.23

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浅草の五重塔を背景にご機嫌なトンさん

Q:ロケ中は皆さんも一緒にセットの上で生活していたということですが、撮影以外で何か面白いエピソードはありますか?

 監督「たくさんあります(笑)。撮影チームも私も、映画の中のソーン先生やエーン先生と同じような生活をしていました。水も電気もないし、携帯の電波も届かないような場所だったので、ほんとうにただお互いにいるだけでした。朝になるとホテルから船着場に行って、撮影場所へ行き、夜になるとホテルに戻ります。週末もソーン先生やエーン先生と同じように過ごしていました」

Q:でも、撮影中は電気が必要ですよね?

 監督「撮影中はさすがに発電機を使っていましたが、撮影が終了すると、途端に真っ暗になってしまうんです。真っ暗になると、空と星しか見えないんですね。そんな中を舟に乗ってホテルへ帰って行くのですが、その間は自分のことをいろいろと考える時間になりました。それはバンコクでは絶対に体験できないことで、とてもよかったです」

Q:何もないって大事なことですよね。

 監督「やはり、ああいう場所にいると自分自身と一緒にいなければなりません。誰にも連絡できませんから、自分を顧みる時間になるのです」

●思いを共有するロマンチックな演出

Q:日記を通じて思いが高まっていくという演出や、柱の使い方など、うまいなと思いました。

 監督「この映画のコンセプトは、まったく違う人が同じ場所にやって来て、同じような人生を送らなければならないということです。生活がとても困難であり、子どもたちを教えなければいけません。ある先生が教えていた同じ子どもたちと、その先生が去った後に、また次の先生が出会わなくてはならないのです。そういう意味では、柱はとてもロマンチックですよね。お互いの気持ちを共有できますから。

 日記自体も、一人の人間が思っていた感情や気持ちを受け継ぐものになっています。あの日記はもともと、誰かに見せるために書いたものではなく、エーン先生が自分の感情を書いていただけなんですね。この子どもにはこういう風に教えた方がいいとか。それが偶然、たまたま次の人が来たことによって、その気持ちが受け継がれ、共有されていきます。そういうところは意識してやりました」

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(c)2014 GMM Thai Hub Co., Ltd.

Q:すごくロマンチックですよね。日記の中に描いてあるイラストがとても可愛かったのですが、あれはプロの方が描いたのですか?

 監督「美術チームが話合って作ったものです。エーン先生だったらこういう絵を描くだろうと。いろいろなスケッチを描いてもらい、皆と話合いながら選んでいきました」

Q:ソーン先生の絵は簡単でしたね。

 監督「ソーン先生はやはり絵はうまくないんです(笑)」

*ネタバレ注意!:以下、エンディングに関する内容がありますので、知りたくない方は映画をご覧になってからお読みください。

Q:二人が共演するシーンはとても少ないのですが、いつも一緒にいるような感じがします。

 監督「そういう映画を作りたかったのです。実際、あの二人が同じフレームにいるシーンはほとんどありません。だけど、同じ場所や同じ出来事をお互いに経験し、共有していくことで、だんだんと繋がっていくように表現しました」

Q:最後はとても感動しますよね。

 監督「脚本を書く時に、最後のセリフだけは決めていたんです。二人が初めて『こんにちは!(サワディーカー)』と挨拶をする。そこだけは決めておいて、そこからどんどん遡って脚本を書いていったんです」

●『フェーンチャン 僕の恋人』から10年

Q:二人の先生は『フェーンチャン 僕の恋人』のノイナーとジアップが大きくなったようなイメージがしました。(監督「オー!(笑)」)キャラクターが似ていると思ったのですが?

 監督「想像力が豊かですね(笑)。もし、そのように感じるとすれば、そもそも作った人間の性格が入る部分もあるので、似て来るのかもしれません。それに、ジアップやノイナーと同じように、今回の登場人物であるソーン先生とエーン先生も、お互いに問題を抱えています。例えば、エーン先生はすごくやる気があるけれども、とても頑固なところもあり、最終的には問題を乗り越えてやっていきます。そういう所は似ているかもしれませんね」

Q:他の5人の監督さんたちとは今も会っていらっしゃいますか?

 監督「わりと継続的に会っています」

Q:また皆さんで映画を作るというのは?

 監督「もうやりたくないですね。飽きちゃったから(笑)。もともと、6人で一緒に監督するというのが難しいんです。それに今はそれぞれ、自分の仕事がとてもたくさんあるので、前と同じようなやり方ではできないですね。ただ、誰かが1つの作品を撮って、それをもう一人が繋いでみるとか、今までと違うようなやり方でならできるかもしれません」

Q:では最後に、次の新しい企画があれば教えてください。

 監督「今も新しい脚本にとりかかっていますが、もうしばらくかかりそうです。いずれにせよ、これからも続けて映画を撮っていきたいです」

Q:次もラブストーリーですか?

 監督「うーん…観てのお楽しみです(笑)」

 ありがとうございました。

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 最後は懐かしいお話と楽しみな次回作の話でインタビューが終了しました。10年前に来日された時の6人の監督さんインタビュー記事をプリントアウトして持参したのですが、修了後に監督に見せるととても喜んでくださり、早速写真部分をスマホで撮影し、他の監督さんたちに送っていました。(ユニークなポーズをとってくれたその時の6人の写真はこちらでどうぞ。)今後の活躍も楽しみなトンさん。まずは『すれ違いのダイアリーズ』で、監督が描いたロマンチックな世界を味わってください。

(2015.9.21 浅草公会堂 「したまちコメディ映画祭2015」にて単独インタビュー)


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●back numbers
profile
ニティワット・タラトーン
Nithiwat Tharatorn


1974年7月21日生まれ。チュラロンコーン大学卒業。2003年、大学時代の映画仲間6人で共同監督した『フェーンチャン ぼくの恋人』で監督デビュー。この年のタイの興行収入第1位を記録しただけでなく、タイ映画界を帰るほどの成功をおさめ、日本をはじめ世界各国でも公開された。

2006年には『早春譜(Seasons Change)』を監督。同作はアジアフォーカス福岡映画祭で上映され、観客に愛された。2009年には『Dear Galileo』を発表。スパンナホン賞(タイ・アカデミー賞)にノミネートされるなど高く評価されている。
filmography
監督作品

フェーンチャン ぼくの恋人
 (03)
*コムグリット・ドゥリーウィモン、ウィッタヤー・トーンユーヨン、ソンヨット・スックマークアナン、アディソーン・ドゥリーシリカセーム、ウィッチャヤー・ゴージウと共同監督。
早春譜(06)
・Dear Galileo(09)
すれ違いのダイアリーズ(14)