かぞくのくに(Our Homeland)
story
1997年の夏。在日朝鮮人2世のリエ(安藤サクラ)は、母親(宮崎美子)が営む喫茶店アイビィで10歳年上の兄ソンホ(井浦新)の帰りを心待ちにしていた。ソンホは70年代の帰国事業で北朝鮮に移住していたが、病気治療のため特別に許可をもらい、25年ぶりに日本へ戻ってくるのだ。
北京からの飛行機にソンホが乗ったと知らせが入る。そして、リエと同胞協会副委員長の父(津嘉山正種)、実業家の叔父テジョ(諏訪太朗)が協会会館でソンホを迎えた。車で家まで行く途中、ソンホは少し手前で降りて、周りの風景を懐かしむように一歩一歩家へと向かった。そして、我が家の前で待つ母が息子を抱きしめた。
家族が揃ったところで、ソンホは北朝鮮から同行した責任者ヤン(ヤン・イクチュン)を紹介した。ヤンは「事故や事件が起きないように」という理由で、滞在期間中は見張りを付けることを告げた。その夜、母はご馳走を作り、皆で乾杯をするが、ソンホはあまりたくさん食べられなかった。
翌日、ソンホは病院で精密検査を受け、夜は高校の同窓会へと向かった。懐かしい仲間たち(村上淳、省吾)や、互いに思いを寄せ合っていたスニ(京野ことみ)との25年ぶりの再会。皆が思い出の曲「白いブランコ」を歌うと、ソンホも目立たないように歌い始めるのだった。
ショッピングにでかけた日、ソンホは気に入ったスーツケースを見つけ「お前はそういうのを持っていろんな国へ行け」とリエに語りかける。しかしその夜、ソンホはヤンから強く言い渡されていたある提案をリエに持ちかける…。
●アジコのおすすめポイント:
ドキュメンタリー作品を多数手がけて来たヤン・ヨンヒ監督が、自身の問題を投影させた初フィクション作品です。在日コリアン2世として育った監督の家族の物語は、『ディア・ピョンヤン』などのドキュメンタリー作品で描かれてきましたが、今回は兄が一時訪日した時の様子と事件、その時に感じたことを主人公のリエに託して描きます。リエを演じるのは安藤サクラ。奥田瑛二監督&安藤和津夫妻の娘だけあって、芯が強く真直ぐな妹役を好演。兄役は今年から本名に名前を改めた元ARATAこと井浦新。さらに注目なのは『息もできない』『マジック&ロス』のヤン・イクチュン。アジコ的には09年のフィルメックスで見たハッピーダンスや笑顔の印象が深く、北朝鮮の監視役に見えなかったのですが、難しい役所をきっちりと演じています。それにしても、このような家族の分断が日本にもあるとは…。
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