黒い殺意(瘟泉/The Incredible Truth)
story
スタイリストのウェイ・リン(クリスティ・チョン)は、西湖でのロケで人気モデルで親友のガガ(リュー・ヤン)と再会する。彼女はベトナムロケで知り合った日本人、清水宏太(船木壱輝)と付き合っており、もうすぐ彼の実家へ行くと告白する。「結婚するかもしれない」と幸せそうに話すガガは、リンに「日本で会おう」と言って旅発つ。
ところが、初めは写真と共に幸せそうなメールが送られてきたものの、次第に「実家の旅館の人たちがおかしい」「裏切られた」「早く来て」というメールが届くようになり、音信が途絶えてしまう。過去の出来事で嫌な思い出のあるリンは、それまで日本を避けていたのだが、ガガを探すために日本へ行く決意をする。
日本へ着いたリンは、清水の実家がある赤石温泉の旅館を訪ねる。彼女を迎えたのは不気味な番頭の忠男(でんでん)だった。ところが、女主人・節子(児玉美智子)も旅館の店員たちも、ガガのことを知らないと言う。リンは宏太の部屋に通されるが、宏太は精神を病んでいた。
リンはしばらくその旅館に滞在して、ガガの行方を調べることにする。しかし、廊下ですれ違った宏太の姉、美智子(神楽坂恵)からは「ここはお前の来る所ではない」と言われてしまう。その夜、眠っていたリンのところへ、悲しそうなガガが何度も現れ、何かを訴えようとする。
霊感の強いリンは、かつてガガにあげた髪止めを部屋で見つけ、彼女に何があったのかを読みとろうとする。また、中国語の話せる店員(ダニー・マー)から、ガガが旅館を手伝わされていたことを聞き出す。そんなある日、節子が何者かに殺されかけ、宏太も温泉で死体となって発見される。
ついに木下刑事(サム・リー)が事件解決に乗り出し、かつて日本で別れたリンの恋人チャン・ドン(トニー・ホー)も駆け付けるが…。
●アジコのおすすめポイント:
『爆裂都市』(04)やソイ・チェン監督の『ドッグ・バイト・ドッグ』(06)『軍鶏』(07)などでプロデューサーとしても活躍するサム・レオン監督による最新作です。今回は得意のアクション系ではなく、サスペンスホラーに初挑戦。かつてテレビで見た中国女性のドキュメンタリーにヒントを得たそうで、自身が六本木のホテルで遭遇したという異常体験をプラスして作りあげたのが本作。世界でも屈指のサスペンスホラー大国である日本の要素を大胆に取り入れ、新人監督になったつもりで、実験的なこともやっているようです。サム・リーやトニー・ホーなど、お馴染みの俳優たちの他、『Color of Pain 野狼』(01)に出演した國村隼さんが、横暴な清水家に反対する村民役でちらりと登場しています。キアロスタミ作品にも出演していたでんでんは、目下「あまちゃん」のイメージも強いですが、こういう役もハマリますね。ちょっぴりジョセフ・チェンに似てる大陸の新人俳優ジュンジェ・ミャオが、あっと驚く役柄で登場します。
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