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監督:ツァイ・ミンリャン
脚本:ドン・チェンユー、ツァイ・ミンリャン、ホン・フェイ
撮影:リャオ・ベンロン、ソン・ウェンチョン
編集:レイ・チュンチン
音響:トゥ・ドゥーチ、クォ・リーチー
美術:マサ・リュウ、ツァイ・ミンリャン
衣装:ワン・チアフイ
壁画:ガオ・ジュンホン
題字:リー・カンション
出演:リー・カンション、ヤン・クイメイ、ルー・イーチン、チェン・シャンチー、リー・イーチュン、リー・イーチェ、ウー・ジンカイ

2013年/台湾・フランス
日本公開日/2014年9月6日
カラー/DCP/1:1.85/138分
字幕:市山尚三
配給:ムヴィオラ
(c)2013 Homegreen Films & JBA Production
2013年 ヴェネチア国際映画祭 審査員大賞
2013年 ドバイ国際映画祭 監督賞(ツァイ・ミンリャン)
2013年 アジア大平洋映画祭
 主演男優賞(リー・カンション)/
 音響効果賞(トゥ・ドゥーチ、クォ・リーチー)
2013年 タリン・ブラックナイト映画祭 審査員特別賞
2013年 ヴェニス映画祭
 ゴールデンマウス賞スペシャルメンション/審査員特別賞
2013年 台湾電影金馬奨 監督賞(ツァイ・ミンリャン)
 主演男優賞(リー・カンション)
2014年 全米映画批評家協会賞 最優秀未公開作品賞
2014年 セビリア・ヨーロッパ映画祭
 監督賞(ツァイ・ミンリャン)
2014年 台北映画祭 主演男優賞(リー・カンション)

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郊遊<ピクニック>(郊遊/Stray Dog)

story

 子どもたちが寝息をたてるベッドの傍らに座り、女(ヤン・クイメイ)が髪を梳く。子どもたちの寝息が耳を離れない。子どもたちの寝顔をたしかめながら女は去る。

 昼間。子どもたちは大きな樹のある森で遊ぶ。父(リー・カンション)は草むらで小舟を見つける。砂浜で追いかけっこをする子どもたち。父も一緒に歩く。波が光る。それは束の間のピクニックのよう。子どもたちはスーパーマーケットで試食の品をもらって食べる。

 父は路上で不動産会社の立て看板を掲げる。風が吹く。雨が顔を打つ。車の波が押し寄せ、信号で停まり、また押し寄せる。満江紅を詠い、涙をこぼす。夜になる。その日の仕事が終った父と子どもたちは、路上で弁当を頬張る。

 公衆トイレで歯を磨き、水浴びをする。住んでいるのは、水道も電気もない空き家。子どもたちは古びたマットレスで眠る。ある日、立て看板の仲間が去る。父は看板にある物件を訪れる。真っ白い部屋。真っ白いベッド。父はそこで眠りにつく。

 スーパーマーケットの女(ルー・イーチン)が妹(リー・イーチェ)の臭いに気づく。髪と身体を洗ってやる。兄妹の様子が気になり、ふたりの後をつける。空き家で眠る家族をのぞく女。夜の廃墟。女が野良犬にエサをやりにくる。壁一面に描かれた河原の絵。女は絵を見つめる。

 息子(リー・イーチュン)からなけなしの金を取り上げ、酔いつぶれる父。マットレスのベッドに、娘が買ったキャベツが寝ている。赤い色で顔が描かれている。それは兄妹の母親、去って行った妻に見える。キャベツに枕を押し当てる。そして齧る。何度も齧り、慟哭する。

 激しい雨の夜。父はある行動に出る…。

●アジコのおすすめポイント:

ツァイ・ミンリャン監督とシャオカンことリー・カンションによる10本目の長編作品です。今や父親役を演じる年齢のリー・カンションが演じるのは、社会から脱落した哀れな中年男。日雇い労働者として、人間立て看板となり、我が身の不幸に耐え、満江紅を詠って心を鼓舞しています。親子で弁当を食べるシーンが何度か出て来ますが、そんな日常でも、食べる時の顔は幸せそう。(リー・カンションの食べっぷりもよい!)それでも、時折、押し寄せる絶望感。そして男の無謀な決断から、子どもたちを救い出す女。劇中に登場するのは、もともと彼女だけだったそうですが、当時体調不良でこれが最後の映画になるかもと危惧した監督が、常連女優のヤン・クイメイとチェン・シャンチーにも声をかけ、このような流れになったそうです。子どもたちを演じるのは、シャオカンの実の甥(『迷子』にも出演)と姪です。廃墟となったビルの壁画が素晴らしく、登場人物たちと同様に見入ってしまいます。ラスト14分の長回しも圧倒的で、退屈というよりも目が釘づけになることでしょう。

*引退説については、監督がインタビューで真相を語ってくれていますので、こちらもどうぞ。リー・カンションの実像と将来に迫る単独インタビューもぜひご覧ください。


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