実際の僕はユーモラスな人間 −リー・カンション(李康生)
ツァイ・ミンリャン監督との合同取材に続いて、アジクロではリー・カンションに単独インタビューをする機会をいただきました。早口で饒舌な監督とは対照的に、ゆったりとした口調で話すシャオカン(小康)。5月に発病した病気の影響で、来日中は監督ともども体調がすぐれず心配されていたのですが、この日は二人とも元気を回復した様子。単独インタビューでは、リー・カンションの素顔から『郊遊<ピクニック>』での苦労話、新作情報までたっぷりと語ってくれました。
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この10月でなんと46歳になるシャオカン(小康)。『郊遊<ピクニック>』で昨年の台湾金馬奨とアジア大平洋映画祭、さらに今年の台北映画祭でも主演男優賞を受賞し、影帝として3冠に輝く名優に成長しました。プライベートでも結婚を考える女性と安定した関係を築いている模様。公私共に充実し、幸せな様子が表情にも表れています。
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●リー・カンションの素顔
リー・カンションといえばツァイ・ミンリャン監督の作品になくてはならない常連の主演俳優。まさに映画と共に20年以上、その成長ぶりを見て来たわけですが、演じていない時の素顔のシャオカンは一体どんな人なのでしょう?
Q:ツァイ・ミンリャン監督との作品が多いので、映画作品のキャラクターとカンションさんが、ついだぶって見えてしまうのですが、実際はどういう方なのですか?
リー「プライベートでは、どちらかというとユーモラスです。映画の中で演じているのは比較的暗い役柄が多いけど、実際の僕は違います」
Q:映画を観ていても、それはときどき感じます。今まで演じた中で、比較的、自分に近い役柄はどれですか?
リー「まったくないですね(笑)。比較的と言うなら……どれだと思いますか?」
と逆質問されて、iPadでフィルモグラフィを見ながら、とっさに『黒い眼のオペラ』は?と言ってしまいました。(『楽日』にすればよかった…)
リー「この役は違うな。これは、どちらかというと暗くて孤独。でも、実際の僕は面白い人間だし、友達もたくさんいます」
安心しました。(一同爆笑)
●子ども役で共演した甥と姪のこと
(c)2013 Homegreen Films & JBA Production
Q:今回は親戚のお子さんと共演していますが、撮影中に楽しいことはありましたか?
リー「娘役の姪(リー・イージェ)は僕のことをパパと呼ばなくてはならないのに、ときどき叔父さんと呼んでましたね(笑)。実は、ふたりは自分の親と家にいるよりも、叔父の僕といる時間の方が長いんです。僕は母と同居しているのですが、兄夫婦は仕事で忙しいので、ふたりは学校が終るとうちへ来ておばあちゃんと過ごすんです。それから、晩ご飯を食べた後に、親が迎えに来て自分の家に帰ります」
(c)2013 Homegreen Films & JBA Production
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だから、仲がよいのですね?
リー「そうです。ツァイ監督はふたりの義理の父(名付け親)になっています。兄(リー・イーチェン)の方は、ツァイ監督の『楽日』と僕の『迷子』の他、ツァイ監督の映画(短編の『是夢』)にも出演しているので、演技は初めてではありません」
Q:ふたりも将来は俳優でしょうか?
リー「まだ、わからない(笑)…でも、撮影を嫌がってはいないですね」
●『郊遊<ピクニック>』の長回しとキャベツ
Q:『ピクニック』の最後の長回しシーンですが、なにか演出はありましたか? それとも、おふたりで考えたのでしょうか?
リー「あのシーンは2テイク撮りましたが、監督からの指示は『この絵をずっと眺めなさい』と一言しかありませんでした。相手役のチェン・シャンチーとも何も相談しませんでした。彼女は前に立っていて、僕は少し後ろにいたので、彼女が涙を流しているのも知らなかったんです」
Q:ずっと撮っている間、時間はわかっていたのですか?
リー「多分、長いだろうとは思いました。近くを台湾の新幹線が走っているんですが、2回くらい通ったからかなり長いはずだと(笑)」
Q:お弁当を食べるシーンも印象的で、美味しそうに食べておられましたが、あれは1テイクだったのですか?
リー「完食するまで1回で、最初から最後まで通しで撮影しました。監督は最初から撮っていたけど、使われたのは途中からでしたね」
Q:それでも結構長いですよね?
リー「今まではフィルム撮影だったので時間の制限があったのですが、今回はデジタル撮影だったから、20分以上になっても好きなだけ撮ってました」
(c)2013 Homegreen Films & JBA Production
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Q:そんな撮影の中で、一番辛かったことは?
リー「僕たちは監督からのカットを待っているのですが、監督はいつもフィルムを全部使い切るまで撮るので、いつカットがかかるのかわからない(笑)。監督が感動しているのはわかったけど。それで、どんな演技をしたらいいかを考えてましたね。監督はモニターの前に座って待っているので、監督が納得するような違う演技をするので精一杯でした。それから、映画の中で川辺にしゃがんでいるシーンがありますが、そこは丸2時間かかりました。日が暮れるまでずっとしゃがんだまま、監督がOKを出すまで撮ったので、終った時は足が痺れて立てなくなってました(笑)」(次頁へ続く)
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