ビッグ・シティ(Mahanagar/The Big City)
story
1953年のカルカッタ。銀行務めのシュブラト(アニル・チャタージー)には、愛する妻アラチ(マドビ・ムカージー)と幼い息子ピントゥ(プロセンジット・シルカ)がいる。だが、厳格な教師だった父(ハレン・チャタージー)と母(セファリカ・デビ)、勉強好きの妹バニ(ジョヤ・バドゥリ)も同居することになり、家計が苦しくなっていた。
専業主婦の自分に疑問を持ったことのないアラチだったが、夫の苦労を軽くしようと働くことを決意。販売員の求人に応募する。それは裕福な家を回るミシンの訪問営業だった。夫の両親はアラチが働くことに反対し、家庭に小さな波風が立つが、面接に合格したアラチは働きはじめる。
同期入社のイギリス人エディス(ビッキー・レッドウッド)たちと共に、上流家庭を訪問して回るアラチ。最初は苦労したものの、誠実な人柄が好感を持たれ、徐々に営業の才能を発揮。エディスが社長のムケルジー(ハラドン・バナジー)に交渉したおかげで、営業コミッションも付いた。
アラチは初の給料で、家族全員にプレゼントを贈る。しかし、シュブラトの心は揺れていた。彼は銀行の他にアルバイトを探し、アラチに仕事を辞めさせようとする。ムケルジーに気に入られたアラチは、チームリーダーに昇格しようとしていた。だが、アラチが辞表を出す前に、シュブラトから電話が入る。「銀行が倒産した。辞めないでくれ」
●アジコのおすすめポイント:
「シーズン・オブ・レイ」の2本目は、『チャルラータ』で主演したマドビ・ムカージーの初めてのサタジット・レイ監督作品。大都会の片隅で暮らす一家の家計を支えるため、保守的だった妻が一念発起して働きに出るというストーリーです。古い価値観に縛られている夫の両親と、勉強好きな夫の妹という次世代の狭間で、自立していく女の姿を時代背景と共に描いています。大都会を象徴する電車の電源滑車を長回しでとらえ、タイトルロールにするなど、レイ監督ならではのセンスが随所に。夫婦愛も丁寧に描かれており、妻の意外な活躍や変化に戸惑う夫の姿も描かれますが、最後には感動的な結末が待っています。貞淑な妻の自立と夫婦愛という点では、昨年の『マダム・イン・ニューヨーク』を彷佛とさせます。ちなみに、夫の妹役を演じているジョヤ・バドゥリは、後にアミターブ・バッチャン夫人となるジャヤー・バッチャン。若き日の可憐な姿もご堪能ください。
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