金子文子と朴烈
（朴烈/Anarchist from the colony）
story
1923年、東京。詩人の朴烈（イ・ジェフン）は車引きの仕事をしながら、朝鮮人街の仲間たちと無政府主義運動を行っていた。彼が発表した「犬ころ」という詩に心を奪われた金子文子（チェ・ヒソ）は、彼に直接会って気持ちを伝え同棲を提案する。朴烈は驚くが彼女に好感を持ち、唯一無二の同志、そして恋人として共に生きることにする。
文子は幼い頃、朝鮮に養子に出されたことがあり、帰国後は在日朝鮮人ホン・ジニュ（ミン・ジヌン）のおでん屋で働いていた。朴烈は彼らと「不逞社」という組織を作る。一方で朴烈はこっそり入手した火薬で爆弾を作り、爆破実験を行うが失敗。海外の組織からもっと良質な爆薬を仕入れる計画をしていた。
9月1日、関東大地震が発生。すべてが一変する。様々な憶測やデマが広がり、地震が起こったのは朝鮮人のせいだとして各地で大虐殺が起こっていた。「不逞社」も抗日運動をしていたとして逮捕される。朴烈は無実を主張するが、爆弾のことが知れ国家転覆の大逆罪に問われようとする。
主導したのは法務大臣の水野錬太郎（キム・インウ）だった。彼は自分が部下に焚き付けた朝鮮人虐殺事件を国際社会の目から隠蔽するため、世間の注目を朴烈の大逆事件に集めようとしていた。朝鮮から乗り込んだジャーナリストのイ・ソク（クォン・ユル）は、社会運動家の布施辰治（山野内扶）に朴烈らの弁護を依頼する。
しかし、内情を知った朴烈は事件を逆手に取り、皇太子の暗殺を計画していたと嘘の供述をして大逆罪で裁判を起こそうとする。他の仲間は釈放されたが、朴烈と運命を共にしたい文子も刑務所に残っていた。予備尋問を担当していた立松判事（キム・ジュンハン）は、ずっと二人の供述を聞いているうちに、理解を示していくのだが…。
アジコのおすすめポイント：
朝鮮の植民地時代に独立運動のため日本に渡り、アナキスト（無政府主義者）として活動した詩人の朴烈（パク・ヨル）と、彼の詩に共鳴した日本人女性アナキスト金子文子との情熱と愛を、史実に基づいて描いた作品です。関東大震災直後に発生した朝鮮人虐殺事件と、それを隠蔽するために捏造された大逆事件の顛末を描くため、物語の大半は刑務所と法廷になりますが、朴烈と金子文子の破天荒な言動と純愛が軸になっていて暗さはありません。むしろスリリングな展開や法廷で韓服を着たり、獄中結婚や記念撮影（怪写真として有名）をするなど、興味深いエピソードに驚かされます。これらは決して演出ではなく、史実を綿密に調べて再現された真実の物語なのです。監督は『王の男』『ソウォン／願い』『王の運命ー歴史を変えた八日間ー』など、歴史や事実を元にした作品で知られるイ・ジュンイク（イ・ジュニク）。朴烈を生き生きと演じるのは若手演技派スターのイ・ジェフン。監督の16年の作品『空と風と星の詩人〜尹東柱の生涯〜』で注目されたチェ・ヒソが金子文子を見事に演じ、新人女優賞を独占しています。
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