ザ・クロッシング Part I
(太平輪:亂世浮生/The Crossing)
story
日中戦争後の中国大陸では内戦が勃発。蒋介石を指導者とする「国民党」と、毛沢東率いる「共産党」の対立が激化していた。国民党の勇猛な将校レイ・イーファン(ホアン・シャオミン)は片足を負傷し切断を迫られるが、日本軍の医師として従軍していた台湾のイェン・ザークン(金城武)によって救われる。
1945年7月、上海の舞踏会でレイ・イーファンは銀行頭取の娘、チョウ・ユンフェン(ソン・ヘギョ)と出会う。二人はすぐに恋に落ち結婚。翌年、ユンフェンは妊娠するが、国民党の敗戦が色濃くなってきたため、イーファンはユンフェンと家族を台湾へ避難させた。
ユンフェンたちに用意されたのは、かつて日本人が住んでいた日本家屋だった。ユンフェンはそこに飾られていた絵に惹かれる。絵には「沢坤(ザークン)昭和17年 晩秋」と署名がある。さらに、絵の裏側には「雅子」と書かれた日記と未完成の楽譜が隠されていた。
ユンフェンは診療所でザークンと出会い、屋敷に案内して日記と楽譜を見せた。それは、ザークンが日本統治下の学生だった頃のこと。父の仕事の関係で台湾で暮らしていた日本人女性、志村雅子(長澤まさみ)と出会い、二人は恋をしていた。しかし、日本の敗戦で志村家は帰国を余儀なくされ、雅子とも離ればなれになってしまう。
1948年の上海。ユイチェン(チャン・ツィイー)は出征したまま行方不明の恋人を探すため、従軍看護師に志願していた。苦しい生活の中、独り身では部屋を借りることもできないため、見知らぬ兵士のトン・ダーチン(トン・ダーウェイ)と偽の家族写真を撮って身分証明書代りにする。彼女は別れ際、ダーチンに「死なないで」と声をかけた。
アジコのおすすめポイント:
香港ノワールの父であり、アクション映画の名匠として世界に名を馳せたジョン・ウー監督。2008年と2009年には『レッドクリフ』という時代劇大作も手がけ、その次に挑んだのが、かねてから描きたかった史実に基づいた歴史大作でした。特に中国と台湾の両岸の思いを込めた作品を描きたいと思っていた時に出会ったのが、『グリーン・デスティニー』や『ラスト、コーション』の脚本家ワン・ホエリンの原案。「中国のタイタニック」と呼ばれる、1847年1月に実際に起こった大型客船「太平輪」の沈没事件をもとに、その船に乗り込むことになる人々の人間模様を3組の男女の愛に焦点を当てて描いています。その前編となる本作では、登場人物たちの背景や状況、人間関係が細かく描かれていきます。そして、リアルさを追求した戦闘シーンの迫力はさすが。壮絶な戦地、煌びやかな上海、そして素朴で温かい人々が住む台湾。愛の尊さ、平和の有り難さが伝わってきます。クランクイン直前に病魔に襲われ、1年間の闘病生活から現場復帰したジョン・ウー監督。「不穏な時代ほど、愛の偉大さは際立つ」というメッセージをしっかりと描いています。
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