香港の若手監督たちによる、新しいタイプの香港映画が続々と公開されています。本作は新人監督の登竜門、mm2による新人監督企画コンペの第1弾。2012年に起こった「通州街ホームレス荷物強制撤去事件」を元に、ホームレスたちを取り巻く問題をリアルに描き、様々な映画賞を受賞。昨年、日本の全国5都市で開催された「香港映画祭2022」でも動員数トップになっています。監督は2018年の東京国際映画祭で上映された『トレイシー』で長編デビューしたジュン・リー。2本目となる本作では、ホームレスたちの生活と連帯を見つめ、社会との関わりや軋轢、彼らに起こる悲喜交々の出来事を描きます。主演はジョニー・トー作品や数々のアクション映画で知られる演技派のフランシス・ン。相棒役の古参ホームレスをツェー・クワンホウが演じています。往年のアイドル、ロレッタ・リーも皿洗いで暮らす元ホステスを演じます。セシリア・イップもカメオ出演と豪華。対する新米ソーシャル・ワーカーをセシリア・チョイが健気に演じ、時代の流れを感じさせます。『私のプリンス・エドワード』のチュウ・パクホンや『遠路はるばる』のウィル・オーも出演。新世代の香港映画に共通しているのは、自分たちの社会や状況、問題をしっかりと見つめていることでしょう。後半、善意でしたことが思いがけず悲劇を生んでしまうところは胸が痛みます。それでも、ホーのような人がいるからこそ、彼らは闘うことができたわけで、めげずに頑張って欲しい。イギリス仕込みのチャリティ精神が根付いている香港では、ホームレスを取り巻く人々の状況も日本とは違います。その辺もとくとご覧ください。もう一つ、『星くずの片隅で』も担当したウォン・ヒンヤンの音楽が素晴らしいのです。エンドロールでは彼の歌声も聴くことができます。