気の弱い元警官と極悪ギャング団のボスが映画を通じて出会い、彼らの作った映画がやがて社会を変えていく変化球アクションコメディ&社会派ドラマです。監督はタミル語ニューウェーブ映画の鬼才と称されるカールティク・スッバラージ。2014年の『ジガルタンダ』から9年目となるシリーズ第2弾ですが、前作はギャングスター・ミュージカルになっており「ギャング対映画監督」という構図以外はあまり関連性がありません。2024年のインディアン・ムービー・ウィーク・パート1でこの前作『ジガルタンダ』と共に上映されて熱狂的な支持を受け、「映画を愛するすべての人に観てほしい」というファンの声に押されて全国公開となったのが本作。主演は超売れっ子ダンス振付師から監督、さらに俳優へと転身したラーガヴァー・ローレンスと、ヒット作を連発していた監督から性格俳優に転向したS・J・スーリヤー。クセ強の2人ですが、日本ではあまり知られていないので、最初は誰が主人公なのかもわからず混乱するかも。30分くらいまでは、何がどうなるのか?コメディなのか?アクションなのか?主人公は誰?と逡巡。「ああ!映画の話か」と腑に落ちたところで、やっと展開が見えてくるのですが、これが単純な暗殺ドタバタ劇に終わらず、なんと森や象、部族、政治問題までに発展するシリアスな展開に。台湾の『セデック・バレ』をも彷彿とさせる荘厳な方向へ向かっていくのです。この映画で涙するとは!! ボスの妻役を演じるのは『グレート・インディアン・キッチン』のニミシャ・サジャヤン。彼女の存在がまたいいのです。終わってみれば、最初から最後まで伏線だらけで、最後に見事回収されていきます。チャンドラン監督、ありがとう! 3時間の大作ですが長さは感じません。むしろ、もう一度見直すとより深く理解できるでしょう。映画ファンは必見。そして…あ、映画の最後に「X」が3つある!