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西湖畔 (せいこはん) に生きる

西湖畔せいこはんに生きる(草木人間/Dwelling by the West Lake)

監督:グー・シャオガン
脚本:グオ・シュアン、グー・シャオガン
撮影:グオ・ダーミン
編集:チャン・イーファン、リウ・シンチュー
美術:チョウ・シンユー
音楽:梅林茂
出演:ウー・レイ、ジアン・チンチン、チェン・ジエンビン、ワン・ジアジア、イェン・ナン、チェン・クン、ウー・ビー、ワン・ホンウェイ、リャン・ロン

2023年/中国
日本公開日:2024年9月27日
カラー/118分
字幕:磯尚太郎
配給:ムヴィオラ、面白映画
©Hangzhou Entertainment Films
2023年 東京国際映画祭 ワールドプレミア
2024年 アジアン・フィルム・アワード
 最優秀女優賞(ジアン・チンチン)
2024年 北京学生映画祭 最優秀女優賞(ジアン・チンチン)
2024年 ウェイボー・アワード・セレモニー
 今年の傑出俳優賞(ジアン・チンチン)
2024年 チャイナ・ムービー・チャンネル・アワード
 人気女優賞(ジアン・チンチン)


poster


story

 杭州市。龍井茶の産地として知られる西湖の畔で暮らす母と息子。父ホーシャン(何山)は、10年前に家を出たまま行方不明だ。母タイホア(苔花:ジアン・チンチン)は茶摘みで生計をたて、息子ムーリェン(目蓮:ウー・レイ)を育て上げた。

 茶摘みの季節がやってきた。山起こしの日、タイホアは山に向かうバスの中で、仲の良いジンラン(チェン・クン)に「夫の死を知らせるメッセージが届いた」と告げる。その朝、大学を卒業したムーリェンが、茶畑の母を訪ねてくる。やっと仕事が決まったのだ。ムーリェンはずっと父親を探している。「父さんは死んだ」と話しても「父さんの木がある限り、父さんは見つかる」と信じている。

 茶畑の主人で著名な茶師でもあるチェンさん(チェン・ジエンビン)は、ムーリェンをかわいがりお茶の仕事をさせたがっていた。妻を亡くした彼はタイホアといい仲になり、再婚も考えている。だが、そのことを知った彼の母親が反対し、タイホアを茶摘み人の寮から追い出してしまう。

 タイホアと一緒にジンランも寮を出た。彼女は弟が大儲けをしているというバタフライ社のイベントにタイホアを連れていく。立派なスーツに身を包み、堂々とイベントの司会進行を務める弟のドン・ワンリー(イェン・ナン)。成功したマネージャーのワン・チン(ワン・ジアジア)が紹介され、サクセスストーリーを披露する。タイホアは初めて見る煌びやかな世界に圧倒された。

 バタフライ社は「足裏シート」を販売する会社だが、その実態はマルチ商法。このイベントは新しい販売員を増やすためのものだった。成功すれば1080万元とマネージャーのポストが約束されている。タイホアは洗脳され、違法ビジネスの世界にどっぷりとつかっていく。

 一方、ムーリェンは就職した会社の仕事が詐欺商売とわかり辞めてしまう。そして、久しぶりに会った母は別人のようになっていた。派手な服に派手なメイク。母の部屋へ行くと「足裏シート」の箱が山のように積まれている。母は大事にしていた家まで売ってしまっていた。

 ネットで調べると、バタフライ社が怪しい会社なのはすぐにわかった。母は騙されている。湖上イベントに出席したムーリェンは警察に通報するが、違法の証拠がなく失敗に終わる。ムーリェンを責めるタイホワ。「お母さんに寄り添ってみては」と助言されたムーリェンは、意を決して母と行動を共にする。その実態を暴くために…。


アジコのおすすめポイント:

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デビュー作『春江水暖〜しゅんこうすいだん』で世界の映画界を驚かせたグー・シャオガン監督、待望の第2作目、山水映画第2巻です。杭州を拠点に山水画の持つ美学や世界観、哲学を取り入れた映画作りを模索するグー監督。前作は「富春山居図」という大河に沿った山水絵巻を元に、家族の物語が綴られていきましたが、本作では山水画の掛け軸を思わせる世界に天国と地獄を重ね合わせ、地獄に落ちた母親を息子が救い出すという仏教の「目連救母」を元にした人間ドラマを描いています。縦に自在に飛び回るドローン撮影が効いています。

そもそものきっかけは、身内にマルチ商法にはまった人がいたから。自らイベントに参加して、過酷な洗脳プロセスも体験。この経験を地獄になぞらえ、物語に仕立てました。龍井茶で有名な西湖のある畔、斜面を茶畑が並ぶ山を天国とすれば、山裾に迫る高層ビル群の商業都市が地獄。貧しさや境遇からマルチ商法の罠にかかった母親を、自然児のように無垢な息子が救い出す激しいドラマが展開します。前作とはまったく違うアプローチで「犯罪」を扱ったサスペンスフルなジャンル映画にもなっているので、面食らう人もいるかもしれませんが、最後はやはりグー監督らしい静謐な作品に仕上がっております。

演じるのは、息子役を人気俳優のウー・レイ(呉磊)。子犬のような目をした美青年ですが、前半はぼんやりとした印象。その目が輝きを帯びてくるのは、母を救うことに目覚めてからで、目の演技も必見です。難しい役柄だった母親役はベテラン女優のジアン・チンチン(蒋勤勤)が見事に演じ、数々の女優賞を受賞しています。撮影中は夫でもあるチェン・ジエンビン(陳建斌:茶師のチェンさん役で出演)のサポートが大きかったとメイキングで話しています。音楽は日本が誇る梅林茂。昨年、東京国際映画祭でプレミア上映されたバージョンから、音楽も効果も編集もさらにブラッシュアップされ、今回はチェン・リー(陳粒)が歌う主題歌も入った中国公開版となっています。新字幕での上映。昨年ご覧になった方もぜひ新たな気分で味わってください。尚、グー監督の山水映画の手法でジャンル映画を作る探求はさらに続き、次回作は「恋愛」を描くとのこと。どんな作品になるか楽しみです。

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▼公式サイト ▼予告編 ▼グー・シャオガン監督来日トークイベント