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灰となっても

灰となっても(寧化飛灰/Rather Be Ashes Than Dust)

監督・撮影・編集:アラン・ラウ

2023年/香・英・カナダ
日本公開日:2025年6月28日
カラー/DCP/5.1ch/118分
配給:太秦
©rather be ashes than dust limited
2023年 釜山国際映画祭
 ワイドアングルコンペティション部門 正式出品
2024年 Doc Edge(ニュージーランド)
 国際ドキュメンタリー映画祭 作品賞

poster

documentary

 2014年の雨傘運動に続き、2019年、香港で民主化を求める抗議運動が広がった。逃亡犯条例改正案に反対するデモを発端にして、「逃亡犯条例改正案の完全撤回」「普通選挙の導入」など五大要求を掲げ、6月16日には香港の人口の3割を占める約200万人(主催側発表)に膨れ上がった。立ち上がった市民と警察との衝突は日を追うごとに激しさを増していく。監督のアラン・ラウはフリーのジャーナリストとして最前線でカメラを回した。

 混乱と暴力が渦巻く中、「ジャーナリストは客観的であり続けるべきなのか? どのような行動をするべきなのか?」というジレンマに直面した。本作には、香港の人々が否応もなく分断され、罪悪感に苛まれる姿、怒号が渦巻く路上、あの時のありのままの香港が映し出されている。変わりゆく香港を世界に伝えることができるのか、その確信と疑念に引き裂かれながら、アランは2021年まで撮影を続けた。1000時間以上の映像から制作された本作は、現場の生々しい衝撃を突き付ける。

 「香港国家安全維持法」が施行されてから5年、香港社会では言論に対する締めつけがさらに強まっている。「香港で何が起こったのか、そして香港の今後はどうなるのか知ってもらいたい」とアランは語る。痛ましいほど若い香港の抗議活動家たちの物語が灰となっても、消えることのないように。本作は今では自由に発言することができない香港の人々の闘いの記録でもある。

アジコのおすすめポイント:

コロナ禍で世界中が混乱していた時期に、一際、大きく報道された香港での抗議活動。その主人公の大半が将来を憂う若者たちで、通りを埋め尽くす市民たちの姿やパワーに驚かされたものです。当時の様子を記録した多くのドキュメンタリー作品は日本でも上映され、本作のアラン・ラウ監督も『時代革命』『デニス・ホー:ビカミング・ザ・ソング』に撮影監督として関わっています。その彼が、ジャーナリストとしての視点から、自ら感じたジレンマや葛藤、恐怖を映し出しているのが本作。愛する家族と別れ、イギリスへ亡命した後、撮りためた1000時間以上の映像と向き合い、一緒に路上に立った仲間たちの声を代弁して伝えたいと決意。それは、自身の心の傷を癒すことにもなったそうです。見たことがあるシーンもあれば、初めて見るシーンもあり、当時の様々な状況が浮かびあがります。あえて色を抜いたモノクロ映像での表現が、監督の心を映しているようで新鮮でもあります。今や世界各地で戦争や紛争が起こり、当時の熱気が風化されそうですが、たとえ何もできなくとも、もう一度、この事実を目撃し、もし自分だったら…と考えてみてはいかがでしょう。

 「私と同じように催涙ガスから逃げていたジャーナリストの友人たちのことを思い出す。私たちは互いに恐怖と怒りのただ中でお互いに助け合った。彼らは1年以上に渡り、家族のような存在だったので、とても恋しく思う。一緒に、最悪の暴政だけでなく、人間の精神の最も優れた部分と勇敢な部分を見てきた。今、声を上げることができない友人たちの代わりに、この映画が彼らの言葉を代弁する。 この映画は、現在香港に住み、自由に表現できない人々のためのものであり、彼らの証言である。映画監督として、また2019年の運動の目撃者として、私は自分の映像を使って、政権が香港を改変し、歴史を塗り替えたりするためにどんな手段を使ったとしても、ある真実は決して消されることはないということを世界に伝えたい」
(アラン・ラウ監督の言葉より抜粋)

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