●フォ・ユァンジアは中国では民族的な英雄ですが、演じる前と後ではフォ・ユァンジアに対する思いはどんなでしたか?
映画ではフォ・ユァンジアが精武体育会を創設したシーンを再現。
|
ジェット「フォ・ユァンジア先生は大変尊敬すべき人物で、私たちの大先輩です。彼の功績は精武体育会を創設し、若者の育成、体育・モラル・知恵の3つの分野に関する人材育成に大変力を尽くしたことです。彼が強調したかったのは、自分に挑戦し自分に勝つこと。また、拳を自分の国の人にも外国人にも決して向けませんでした。平和主義だったのです。今回の映画は一定の事実に基づいてはいますが、ほとんどがフィクションで、私自身の考え方をいくつか映画の中に取り入れています。
まず最初に言いたかったのは、恨みからは恨みしか生まれない、何も建設的なことはないということ。これは今の例で言いますと、中近東辺りでは過去二千年の間に2つの民族と2つの信仰があって、お互いに復讐を繰り返しています。果たしてこういうやり方は、我々人類が求める解決方法なんでしょうか? 私は大変疑問に思います。
黒でキメた皆さん。ロニー監督はチャイナ仕立てで。 お洒落なスーツ姿のジェットにも注目。
|
もう1つのメッセージは、現代は世の中がとてもハイスピードで進歩しているので、それに適応できない若者が、命を放棄するようになってきています。そこで私は映画の中で、我々は生まれを選択することはできないけれども、人生の最後に向かってとにかく一歩一歩諦めないで歩いていけば、きっと何かいい将来が来るだろうと信じていることを伝えたかったのです。
これまでいろんな映画に出演して、全世界に行きましたが、中国人の俳優というと、例えばブルース・リーやジャッキー・チェン、ジェット・リーといった人たちはカンフーとアクションしか使えるものがないと世界の皆さんに思われています。私はこういうことはやりたくありません。これは自分にとって義務でもあるのですが、私は暴力を扱った映画で暴力に反する思想を世の中に広めていきたいのです」
●日本によくいらっしゃいますが、日本のどこが一番好きですか?
ジェット「日本にはたくさんいいものがあります。おいしいもの、文化、伝統や遺跡…と数えきれないほどです。今日は記者会見があると聞いて、日本では皆さんはとても礼儀正しいのですが、私はあまりちゃんとした服を持ってこなかったので(笑)、今日のために服を買いに行きましょうと、昨日この近辺にでかけました。私はとても背が低いので、欧米の服はあまり似合わないんです。日本にはたくさんいいデザイナーがいて、いい服を作っています。
そこで、あるお店に入って服を選んでいると、たまたまデザイナーの方がお店にいました。彼は『ずっとあなたの映画が好きでよく観ていますよ』と言いました。ブランド名はMASATOMOという名前なんですが、そこでいろいろと話が弾み、『僕も映画が大好きなのでジェット・リーさんのために脚本を書きますよ』とそんな話になって…その方と話が弾んでいくうちに、一気に友だちになってしまいました。これも1つの例なんですが、人と人は交流がとても大事で、理解し合うことができれば平和になっていくと思います」
●日本の武道には中国の武道にルーツのあるものが多いのですが、空手に興味はありますか?
ジェット「日本の武術にも大変関心があり、小さい頃は日本のTVドラマをいろいろ観ました。私の知る限りでは空手の他に、合気道や剣道もありますね。武術の世界は大体1段から8段までありますが、その中で個人的に重視しているのは、人間の技術や体の極限に対する強化や追求です。もし仮に9段目があるとすれば、人間の心の中の恐怖とは何か、傲慢や自己中心とは何かを追求して、それと闘って勝つことでしょう。
それに勝つことができれば、さらに10段目に行くのですが、その世界では静けさと愛と純粋なものしかないでしょう。敵もいなければ自我もありません。そういうものがあるとすれが、今回のこの映画は9段目の話をしていて、言いたいことはもうほとんど語り尽くしました。私が今後、いわゆる自分の主張を込めてきたアクション映画を撮らないと言っているのは、そういう理由からなんです。9段目が終わって10段目に入ると、純粋な愛しかありませんから、アクション映画で愛を描くのはなかなか難しいでしょう」
ということは、今後の作品は愛を描くラブストーリー? あの華麗なアクションを封印してしまうのはもったいないですが、ジェット・リーが演じる純粋なラブ・ストーリーというのも観てみたいものですね。今後の活躍にも期待しましょう。
(c) Wide River Investments Ltd. (c) Hero China International Ltd.
前の頁を読む ▼P1 ▼P2 ▼3 ▼作品紹介ページ
|