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2006.2.28
グランドハイアット東京
(六本木)
左より
原田眞人 ジェット・リー 中村獅童 ロニー・ユー監督
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公開に先駆ける先月末、監督のロニー・ユー、主演のジェット・リー、中村獅童に、またまた悪役で登場した原田眞人監督も加えた4人で記者会見が開かれました。すでにご覧になった方も多いと思いますが、ジェット・リー最後のマーシャルアーツ作品と言われている映画『SPIRIT』に込めた、ジェット・リーの武術哲学と平和への願い、最後の作品と言われている真意を熱く語ってくれています。まずは、ご挨拶から。
ロニー「(英語で)監督のロニー・ユーです。皆さんにこの素晴らしい映画をご紹介できて光栄です。この作品はジェット・リーさんと14ヶ月もかけて一緒に作ってきました。まず、感謝したいのはカメラの前にいる方たち、そして、作曲家や衣装デザイナーなどカメラの裏側のスタッフたちです。これらの方々のすべての才能を結集し、情熱を持って作りました。私が監督をするのを楽しんだように、日本の皆さんもこの作品を楽しんでください」
ジェット「今回は、私の人生で最も重要な映画と日本にやって来ました。私は8歳から40代になるまで、ずっと武術の世界にいるのですが、今回は私自身の武術への考え方や理解、人生への態度を作品の中に込めました。アクション映画を30年間撮ってきましたが、これまでは『打』(=打ち負かす、闘い)の部分が注目されていて、武術の『武』という意味を忘れてしまっているようです。『武』は分解すると『矢を止める』つまり、暴力を止めるという意味なんです。表面的には暴力的に闘いを続けていますが、重要なのはその背後にある精神、つまり武力ではなくて、いかに戦争や暴力を止めることが大事か、ということなんです。そういう部分を今回、映画の中に取り入れました。『HERO』や『ダニー・ザ・ドッグ』など過去の作品にも、私はいつもこのメッセージを取り入れています。今回はぜひ映画の中で、私の平和に対する期待を皆さんにお聞かせしたいと思います」
中村「田中安野役をやらせていただきました中村獅童です。とにかく、世界で公開される前に、まず日本で観ていただけるというのが一番うれしいです」
原田「中国の映画人を結集した大作に参加できて、とても有り難く思っています。選んでいただいたプロデューサーのビル・コンさんと監督のロニー・ユーさんに感謝します。(声を大にして)同時にですね。この先、ちょっと中国に行けなくなっちゃったかな…という恐れもあるんですけど。(会場笑)次回、中国に行く時は多分、ジェット・リーさんの顔のついたTシャツを着て、彼がコマーシャルをやっている運動靴を穿いて行きたいと思ってます(笑)」
ここから、質疑応答に入ります。
●ジェット・リーさんは中村獅童さんの武術指導もされたそうですが、中村さんの武術センスはいかがでしたか? また今後、中村さんが海外進出をされる時のために、先輩としてアドバイスをしてください。
ジェット「実はこの映画には、たくさんの本物の武道家に登場してもらっています。製作前にチームを組み、タイ、アメリカ、ヨーロッパなど全世界に人を派遣して、いろいろな武道家とキャスティングの照合をしました。しかし、最後の人物には単なる武道ではなくて、心の中に真の武道家の精神に対する理解を持っている人を求めていました。そこで獅童さんの資料を拝見しますと、彼は私と同じように8歳の頃から、1つの専門職の世界に入り、ずっと今日までやってこられていました。
自分のことを振り返ると、8歳の頃は苦しくはあっても、武術とは何かをまったく理解していませんでした。そこで、監督ともいろいろ相談をしたのですが、私たちのような人間は自分の職業にプロフェッショナルな態度を持っているから、その精神とは何かを理解することができれば、きっと今回のこの役はうまくいくだろうということになりました。つまり、闘う手足やポーズは重要ではなく、心の中の世界、精神的な世界をしっかり理解することが何よりも大事だと思ったのです。
今回、獅童さんに出演していただきましたが、彼は言葉や食事、歴史的背景がまったく異なる中国で素晴らしい演技を見せてくれました。それが証明しているように、将来、彼は世界中のどこへ行っても素晴らしいパフォーマンスができるだろうと確信しています。何より大事なのは、彼自身もこの映画のテーマ、つまり自分に挑戦し、自分にか勝つことをしっかり理解していたことです。だから、このような素晴らしい演技ができたのだと思います」
司会「中村さんはいかがですか?」
中村「やっぱり、中村獅童が映像の世界にあるのは、今まで育った歌舞伎の世界があるからだと思います。
初めての海外作品でしたけど、ジェット・リーさんは僕が子どもの頃の大ファンで、当時は『少林寺』などが1つのブームだったんですが、不思議とこの作品に役者として参加する時には、例えば、旅行で中国へ行ってその日の夜にジェット・リーさんと食事できるよ、ていう時にはワクワクドキドキっていうのがあったと思うんですけど、田中という役はリーさんと対等で好ライバルの役だったので、こっちでもアクションの先生にいろいろ御指導いただいて、田中という役になりきって中国へ入ったので、現場でお会いした時もあまり卑屈な気持ちになることはありませんでした。
むしろ、終わってから初めてこの作品を観た時に、あんなに自分の映画を客観的に観られたのは初めてで、もう自分が自分じゃないみたいな…ああ、中村獅童がジェット・リーと一緒に映ってスゲーなあ、みたいな…。後になってジェット・リーさんと一緒にやらせていただいたんだな、という実感が湧いてきて。今から思うと、撮影の時はほんとに夢のようで、とてもいい刺激になりました」
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