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ASICRO FOCUS file no.35

「タイフーン」来日記者会見

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敵対しながらも惹かれ合うシンとセジョン。
イ・ジョンジェさんはこれまでは『イル・マーレ』や『ラスト・プレゼント』などソフトな役柄が印象的ですが、今回は体も鍛えておられましたし、銃の構え方もきまっていました。役作りはいかがでしたか?

 ジョンジェ「これまではロマンスやコミカルな役を主に演じてきました。これからはもっと男性的な役にチャレンジしてみたい、演じてみたいという気持ちがあったので、今回の役を引き受けたのです。準備期間は長く取りました。特に特殊隊員なのでアクションもそうですし、軍事訓練も受けました。そうしている内に欲が出てきて、映画の冒頭に海岸で皆と走っているシーンがあるんですが、撮影に入る前にできるだけ体作りをして、監督には最初にあのシーンを撮ってくださいとお願いしていました。ところが、いざ撮影する時になるともっと欲がでてきて、できればこのシーンは最後に回して欲しいとお願いし直しました。(会場笑)撮影中もずっとトレーニングを続け、よりしっかりした筋肉をつけて、最後にあのシーンを撮ってもらいました。撮り終えた時は、ほんとうにベストを尽くせたという実感が湧きました。体を作るための基本的な運動やその他の訓練を含めて、この作品には最善を尽くせたと自負しています」

役柄や作品を通じてそれぞれに訴えたかったことは何ですか?

 監督「朝鮮半島が地球において唯一の分断国家であるという事実、また依然として典型的な旧体制を維持している北朝鮮と韓国が向かい合っているという朝鮮半島の現実、そういった大きな枠組みの中で、疎外されている人たち、政治的に取り残されている人たち、そういった人たちが実際に脱北者としているのですが、そういう方たちに対して同じ民族として関心を持って欲しい、彼らのために何かをすべきではないか、そういう気持ちからこの映画を撮影しました」

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出演者も感動したシンと姉との再開シーン。
 ドンゴン「実は最初にこの映画に出演を決めた時は、脱北者というよりも海賊という役柄に引かれていました。なので、キャラクターを考える時もそちらの方を深く考えていました。演技を初めてからも、前半はそういうことを考えていたので、脱北者というよりも海賊としての言葉使いやキャラクターに集中して役作りをしていました。ところが、実際に脱北者の方と会ってお話を聞いてからは、その考えが変わりました。直接お会いしてみると、私が演じる役はうわべだけを取り繕うのではだめだと感じました。撮影が終わってからも、脱北者の方たちに関心を持つようになりました。これを観た観客の皆さんにも、南北問題に関心を持っていただけたらと思います。日本の皆さんも南北問題に関心のある方は多いと思いますが、何より一番近い隣人ですので、他人事ではないと感じていただけると思います。もっともっとこの問題に関心を寄せていただくことを祈っています」

 ジョンジェ「私も監督やドンゴンさんと同じです。北朝鮮では間違った指導者のために多くの人々が苦しんでいます。そのことを私自身も映画を通じて考えさせられました。私が演じた役についてですが、もし自分が国の一大事に直面した時、演じた男と同じように、自分の身を投げ出してでも国を守ろうとすることができるだろうか、そのような勇気や精神を持てるだろうか、ということも同時に考えさせられました。ともすると、今の社会では皆個人的なことばかりを考えて生活していますが、もう一度、自分よりも家族について、そして自分の家族を大切に思うことと同じくらい国について考えてみる契機になりました」

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 ミヨン「私自身、私が住んでいる国が分断国家であることを一時忘れていたという反省から、この映画に接していたと思います。私が演じた役は国から棄てられ、また両親や兄弟を目の前で銃殺されて、たった一人残った弟とも長い間生き別れになってしまいます。そういった状況に置かれたにも関わらず、やっぱり自分の国だから棄てることができない、自分の国だから許すことができる、そういった彼女のキャラクターに引かれました」

 デイビッド「ソンチャイというキャラクターは生まれながらのゲリラで、とても幼い頃にトトやシンと出会います。基本的にはフェアで正直です。どうしようもない過去への怒りや攻撃性から、後で豹変しますが、結局は信頼のおける仲間のところに戻って来るとても友情深い人間なんです」

自分のお気に入りの場面を教えてください。

 ドンゴン「やはり姉との再会シーンですね。ドラマ的にもあのシーンは一番重要で、強く印象に残っています。もう1つはトイレで外交官を暗殺するシーンです。実はあのシーンは初日に撮ったのですが、その後で私が演じたシンというキャラクターが具体的にどんな人物なのか、いろいろと構想を練ることができましたし、人物像が固まっていったので、とても満足していますし記憶に残っています」

 ジョンジェ「私もシンと姉の再会の場面です。シンは姉を連れて車で逃げますが、カン・セジョンはそれを見ていながら車を止めることができない。そのシークエンスがとても印象深く残っています」

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 ミヨン「やはり弟のシンと再会する場面です。それ以外では、ラストでイ・ジョンジェさんとチャン・ドンゴンさんが決闘するシーン。対決し合いながらも友人になりたいのに、結局は友人になることができない、そういう相反するシーンが個人的にとても気に入っています」

 デイビッド「私も映画のラストシーンと姉と弟の再会シーンがとても印象的です。個人的には、シンが死にかけている姉と一緒にいる時に、ソンチャイがシンにモルヒネを渡したり、シンがソンチャイにお金を渡したり、シンが過去に受けた辛さや悩みをソンチャイに話すシーンが好きです」

司会「最後に監督から、日本の観客へメッセージをお願いします」

 監督「当初、この映画を企画したのにはいろいろな理由がありますが、日頃、私の父が映画は面白くなければだめだ、面白ければたくさんの人が観てくれると言っています。作品に込めたメッセージはメッセージとして受け止めていただき、この映画を楽しく観てくだされば、私としても大変うれしいです」

p7 作品を反映して、会見自体は比較的真面目な内容となりましたが、終了後のフォトセッションではこの笑顔!おつかれさまでした。

(c) 2005 CJ Entertainment Inc. & Zin In Sa Film. All rights reserved.
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更新日:2006.4.19
●back numbers

イベントの表記
司会・質問者
ドンゴン(チャン・ドンゴン)
ジョンジェ(イ・ジョンジェ)
ミヨン(イ・ミヨン)
デイビッド(デイビッド・リー・マッキニス)
監督(クァク・キョンテク)
●イ・ミヨン

1971年9月23日ソウル生まれ。高1の時、ミス・ロッテに選ばれ芸能界入り。映画デビュー作『幸せは成績表じゃないでしょう』(89)で映画評論家協会賞と百想芸術大賞新人賞を受賞し目を集める。東国大学演劇映画学科卒業後、出演作で数々の映画賞を受賞。前作『純愛中毒』(02)でも大鐘賞女優主演賞を受賞している。
filmography
・幸せは成績表じゃないでしょう
 (89)
・サイの角のように一人で行け
 (95)
・モーテルカクタス(97)
・女校怪談/囁く廊下(98)
・我が心のオルガン(99)
・魚座(2000)
・チョ・ノミョンのベーカリー
 (2000)
・黒水仙(01)
・インディアン・サマー(01)
・純愛中毒(02)
・タイフーン(05)
●デイビッド・リー・マッキニス
 David Lee McInnis

1973年12月12日生まれ。ドイツ系アメリカ人と韓国人とのハーフ。韓国のSKテレコム「UTO」のCMに起用され、一躍注目を浴びる。現在は韓国とLAを中心に活動中。アメリカ在住。
filmography
・The Cut Runs Deep(99)
 *主役を演じている。
・タイフーン(05)