トップの座を狙う短気なディーを熱演
(『エレクション』1/20より公開)
|
2007年新春第2弾として20日から公開されるのは、『エレクション』『ディパーテッド』『マジシャンズ』の3作品。それぞれに個性豊かな作品ですが、まずは2005年から2006年にかけて台湾・香港で数多くの賞を受賞した『エレクション』に注目です。
影の香港社会を形成する黒社会の実像をリアルに追った本作は、これまでの香港ノワールとは違うテイストの社会派ドラマ。『ミッション/非情の掟』など、スタイリッシュな映像と男気溢れるストーリーで定評のあるジョニー・トー監督の作品ですが、本作では綿密な調査を元に、恐い男たちの世界がドキュメンタリータッチでクールに描かれています。
主演はサイモン・ヤムとレオン・カーファイ。対立して火花を散らすボス候補を、共に熱演しています。それぞれに主演男優賞を獲得した二人ですが、本作では悪役側を演じながらも、一番人間臭さを感じさせる演技を見せたレオン・カーファイに遠距離インタビュー。見所と自身の役柄などを語ってもらいました。
香港電影金像奬で主演男優賞に 輝いたレオン・カーファイ
|
●レオン・カーファイが語る『エレクション』
「この作品は、香港の黒社会をとりまく文化を描いた歴史ドラマなんだ。ここにはヒーローも登場しないし、バイオレンスの美学もない。今までのようなフィルムノワールじゃなくて、人間性を描こうとするドラマになっている。けっして美化された黒社会ではなく、黒社会の現実が反映されているんだ。悪には悪の終わり方があるというのが、よくわかると思うよ。娯楽作品というよりは、何かメッセージを感じる映画だと思うので、いろんな角度から観て欲しいな。
僕の役(ディー)は、サイモンの役(ロク)とは対称的になっていた。一番感情をストレートに出しているように見えるけど、細かく見ると彼にもいろんな顔があるんだ。普段は恐いやつだけど、獄中にいる時は、まるでわがままで野蛮な子どもみたいに、年上のボスに甘えたりとかね。そこは自分でも一番好きなシーンなんだけど、彼は権力が欲しいという欲望を素直に見せている。そういうところが、観客にも受け入れられたんじゃないかと思う。
サイモンとはお互いにキャリアが長いから、いいコンビだったよ。撮影中は互いに役名で呼び合ってた。トー監督の現場はとても緊張感があるので、僕たちがムードメーカーになって気分を高め、いい現場を作っていこうという感じで進めていったんだ。男性社会では権力欲にとりつかれることが多いと思うけど、僕自身は他人の上に立とうとは思わない。平和主義者だからね(笑)。乗り越えたいのはいつも自分自身なんだ」
シリアスな歴史大作からラブストーリー、人情ドラマ、文芸作品、おばかなコメディまで、幅広い演技を見せるレオン・カーファイですが、こんなにキレた悪い極道役を演じたのは珍しいかも。でも、どこか憎めない人間になっているところがポイント。ほんとうに悪い奴とは…続編にあたる『2』の公開にも期待しましょう。さらに、ジョニー・トー監督作品としては、昨年話題となった『ミッション/非情の掟』とほぼ同じキャストによる『放.逐』(原題)の公開も期待できそう。アジクロ読者の皆さんには、現在ヴィック主演で撮影中の新作の方が気になる方もいるでしょうが、こちらはまだしばらくお待ちください。
右:警察でエリート街道まっしぐらのマット・デイモン
| |
左:怒りに震えるレオ様には トニーとはまた違った魅力が
|
(『ディパーテッド』1/20より公開)
|
●ハリウッド映画とアジア
香港ノワールときたので、お次はやはり『ディパーテッド』。舞台をボストンに移して、名匠マーティン・スコセッシ監督が描く潜入刑事と潜入マフィアのスリリングな対決。といえば『インファナル・アフェア』ですが、オリジナルのおいしいところは活かしながらも、ちゃんとしたアメリカ映画に仕上がっています。
こちらは現在、アメリカ中の各映画賞を総ナメしそうな勢い。作品賞、監督賞、脚本(脚色)賞を中心に、主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ)、助演男優賞(マーク・ウォルバーグ)と、オスカー戦線に向けて気を吐いています。スコセッシ監督、そしてレオ様も初のオスカー受賞なるか?
20日の公開直前にはジャパンプレミアでの舞台挨拶で、スコセッシ監督やレオ様が来日予定なので、洋画ファンにも大きく注目されることでしょう。オリジナルを観てから観るか、観た後に観るか。オリジナル未見の方は観ないで観た方がスリル度が増すので、後から観ることをおすすめします。
その他、アジア関連作品としては、役所広司、菊池凛子が出演して話題となっている『バベル』がGWに公開。チョウ・ユンファが実在のアジアの海賊として登場する『パイレーツ・オブ・カリビアン3』は5月。6月には、7人の異なる国の監督たちによるオムニバス映画『それでも生きる子供たちへ』が公開予定で、この作品にはジョン・ウー監督が中国編で参加しています。さらに夏頃には、レクター博士の少年時代を描いた『ヤング・ハンニバル/ビハインド・ザ・マスク』も控えています。こちらは、コン・リーが出演。アジアのスターたちが出演するハリウッド映画も、要チェックですよ。
さて、同じ時期の来日対決作品といえば…(続きを読む)
続きを読む P1 > P2
|