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2008.1.24 マンダリン・ オリエンタル (日本橋)
左より 冴木杏奈 (タンゴ歌手) ワン・リーホン タン・ウェイ アン・リー監督
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日本公開のほぼ1週間前に、再びアン・リー監督、主演のタン・ウェイ、ワン・リーホンを迎えてのジャパンプレミアが開催されました。期待していたトニー・レオンは、残念ながら今回も調整がつかず、登壇はなりませんでした。律儀なトニーのことなので、それはまた後日に期待するとして(あくまで個人的な希望)ジャパンプレミアの様子をご紹介します。
会場への通路にはレッドカーペットが敷かれ、日本の様々な有名人やゲストもやって来ました。また会場のドアの前には、小さなステージが設けられ、メインゲストの3人がやって来ると、そこでしばしフォトセッション。映画の中で流れる劇中歌「ドンデ・エス・コラゾン」を日本語で歌っているタンゴ歌手の冴木杏奈さんも赤いドレス姿で加わり、艶やかでした。
ジャパンプレミアは、夜7時過ぎからスタート。いよいよ日本公開を前にしての感想を尋ねられ、日本が最後のPR地点ということもあって、それぞれに感慨深そう。上映後のパーティで、観客からの感想を聞くのが楽しみと語っていました。続いて、先ほどの冴木杏奈さんと、映画の日本イメージソング「夜想曲 -nocturne」を歌っている中孝介さんが登場してミニ・コンサート。生の歌声を披露します。
冴木さんの「ドンデ・エス・コラゾン」は映画の重要なシーンで流れます。(生の歌は迫力でした!)
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監督もリーホンも、二人の生のライブステージを背後から観て、とても面白かったようです。「次のコンサートに取り入れたい」とリーホン(笑)。タン・ウェイは冴木さんの歌で「とても寒い中、コートをはおってセットに入って行ったことを思い出します」としみじみ語っていました。
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そして最後のメッセージ。
監督「この映画は私にとって深い意味があります。たしかに日本と中国が戦争をしている時代の映画ですが、基本的にはラブストーリー。いろんな深い部分を考えて欲しいです」
ウェイ「これは、私にとって最初の映画であり、とても大事な映画です。俳優として、映画の中で泣いて、笑って、愛して、憎んで…いろんな感情を共有して成長してきました。この映画に感謝しています。気に入っていただければうれしいです」
リーホン「今回は僕にとっては初めての中国語映画、北京語映画であり、とても中国的な体験をしました。9ヶ月間ずっと中国人としての人生を生きました。映画を楽しんでください」
そして、プレミア試写会がスタート。取材陣は再び会場の外へ出て、先ほどの小さなステージで、3人を囲んでの短い質疑応答がありました。今回もやはり監督へ質問が集中しました。
Q:話題のラブシーンについては?
監督「単なるラブシーンではなく、この映画の中核をなすもの。感情的にも、映画的にも、重みのある場面だと思います。裸で演技をするというのは究極の演技。どこに真実があるのか?を、お互いに探り合うシーンでもあり、俳優にとっても大きな挑戦でした。これまでで、一番思い入れを入れたシーンです。勇敢な俳優たちが挑んでくれたからこそできたシーンで、彼らに感謝しています」
背後のドアの隙間から映画の音が聞こえて
リーホン「今、皆さんが映画を観ているので、実はとても緊張しています。後で、皆さんの反応を聞くのがとても楽しみ。この映画はとても完成度の高い、密度の濃い映画です。この映画に出演できて、ほんとうに光栄です」
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Q:俳優たちの起用理由については?
監督「トニーは簡単。ベストアクターだからです。気持ち良く同意してくれて感謝しています。彼は小説に描かれている人物の年齢や外観にぴったりでした。彼が小説を読んだ翌日に会うと、すぐにやりたいと返事をくれ、なんでもやると言ってくれました。但し、初めての北京語映画だったので、それがちょっと心配だったようです。
タン・ウェイは、この年齢で素晴らしい女優が思い浮かばなかったので、オーディションをして、1万人の中から最高の人を選びました。彼女を見た時に、彼女は絶対なんでもやってくれる、この人物にふさわしいと、感でわかりました。脚本読みでも、カメラテストでも、1番でした。4通りの年齢にしてメイクもしてみましたが、これもぴったりでした。ただ、やはり主役なので、技術的なリスクはありました。
リーホンは、ポップシンガーでアイドルですが、私からすると、昔の上海の雰囲気を一番持ち合わせていると思います。私の両親の世代の若者を彷佛とさせました。多分、彼が現代の中国ではなくアメリカで育ったので、ご両親の影響を受けているのでしょう」
Q:原作は史実に基づいた作品ですが、気を遣ったところは?
監督「できるだけ調べて、史実に忠実に描いたつもりです。登場人物の全員が戦争の被害者だと思います。たしかに、上海が日本軍に占領されていた時代ですが、中国人同士の内戦もありました。世界では、今もこういうことが起こっています。この映画で一番基本的な部分は、不可能な愛、ラブストーリーです。
アイリーン・チャンは、とても女性的な視点から、性愛や愛を描いています。戦争という男性的な社会や状況の中での女性の視点、というところに惹かれました。観客が日本人であれ、中国人であれ、個人的な何かを感じて欲しいのです。もちろん戦争もそうですし、男女関係や色についてもです。
一番大事なのは、歴史を知り、受け入れ、人間性について考えること。とても複雑な部分や難しさ、感性など、いろいろ入り混じっていますが、やはりそういう時代においての人間性というのが、一番大事だと思います。真実や正直さというのは、政治的にも道徳的にも難しいものですが、だからこそ、そのような真実や正直な気持ちを、芸術や物語、演技を通して描くのだと思います」
と、ここでもおおいに語ってくれたアン・リー監督でした。最初は衝撃的なシーンが印象に残るかもしれませんが、観るたびに新たな発見や気づきがある重厚な作品です。じっくり味わって、ご観賞ください。
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