Q:タン・ウェイさんとワン・リーホンさんはお若いですが、時代の雰囲気を掴むために努力したことは?
ウェイ「まず役作りのために、3ヶ月間トレーニングをしました。監督からは山のような資料をもらい、その他にも麻雀や歌の授業を受けました。当時の人々の衣食住や社会背景、風習も勉強しました。また、俳優同士のコミュニケーションをとるために、一緒にバスケットボールをやったり、リーホンがピアノを弾きながら歌を歌ったりもしました。こうして慣らしていき、少しずつ、役に入り込んでいきました。
役作りに関しては、監督からも多くの情報やアドバイスをもらい、常にディスカッションをしました。トニー・レオンさんとも勉強会をしました。こうして、少しずつ役に入り込んでいきました。これが3ヶ月の勉強期間で、その後の5ヶ月は実際の撮影ですが、それはまさに勉強の毎日でした」
リーホン「3ヶ月のプリプロ期間は、まるでタイムマシンに乗ったみたいで、いろんなことを勉強しなければなりませんでした。僕はアメリカ育ちで、1930年代の中国のことは何も知らなかったので、まず歴史を学ばなくてはなりませんでした。さらに、キャラクターに入り込むために、言葉も学ばなくてはなりません。特に監督からは、訛りをきちんと捉えてくれというこだわりがあったので、そこも一生懸命学びました。
アン・リー監督はとても特別な人です。夢見る力がとてもパワフルで、その夢がほんとうにリアルなものだと周りが信じてしまうほど、はっきりと強く夢を見る方です。監督が示してくれた夢を信じるのは、僕にとって大きな喜びでした。お互いに助け合って、監督の夢に着いて行きました。ほんとうにゼロから役作りをしていったわけですが、この素晴らしいチャンスをくださったことに、とても感謝しています」
Q:オスカー受賞後の作品として、中国語の作品を持って来た意図は?
監督「『ブロークバック・マウンテン』を撮った後で、この作品を撮りたかったのです。先ほども言いましたが、姉妹作のような位置付けなので、当然の成りゆきでした。この点については、オスカーとはあまり関係ありません。この2作の共通点は、禁断の愛、不可能なロマンスを描いているところ。もう1つは、原作がどちらも女性の短編小説で、女性の視点からとても残酷な物語を描いているところです。それを通じて、自分の民族のタブーに触れています。
『ブロークバック・マウンテン』の中では、男性中心の社会、しかも西洋の町で、カウボーイの同性愛を探究します。もう一方は、愛国主義が叫ばれる時代に、女性の心を探究する。表面的には違いますが、根本的には共通している部分を探究していくのは、僕にとって必然的なことでした。
今までアメリカでずっと暮らして仕事をして来た、その環境もあったかもしれません。やはり、アメリカではメジャーリーグで活躍するような感じで、いろんなものについて勉強し、栄養を吸収し、それを中国語映画を撮る時に付け加えていきました。このような映画製作の仕方を通して、段階的に成長しているような実感があります。アメリカ映画の撮影で得たことを、中国映画に取り入れて、1つのエッジにしていくことができると思います。
また温故知新という言葉がありますが、中国映画を撮ることで、自分の国の文化を温めて新たに発見することができます。そこで練習し、鍛えて、得た経験を、再び英語の映画に取り入れることも可能です。中国映画を撮る時はとても疲れます。疑問も大きい。ある意味、1本の映画を撮るのに3本の英語の映画が撮れるんじゃないでしょうか。それで、中国映画を撮る時には、いつも今のような形で何本か撮って、1本を撮るというやり方をしています。
オスカーに関しては、おかげで資金や資源をたくさん得たような気がします。オスカーをもらっていなければ、おそらくこの映画を撮ることもできなかったでしょう。オスカーは大きな力と財力を与えてくれました。また、上海映画撮影所もオスカーがなければ、今回のような人手や資金を与えてくれなかったかもしれません。やはり、オスカーの力は大きいと思います。ここで、上海映画撮影所の皆さんにも感謝を述べたいです。この映画は僕の人生そのものだと思っています」
Q:トニー・レオンさんを含め、共演して学んだことやエピソードを聞かせてください。
ウェイ「トニーはとても素晴らしい俳優です。彼と共演して、才色兼備とはこういうことなのかとよくわかりました。新人として初めての大作ですが、トニーと共演できてほんとうにラッキーでした。もちろん、彼は現場では私を新人として扱わず、いつもリラックスできるようにほぐしてくれたり、リードしてくれたり、私が早く役に入れるよう助けてくれました。彼の協力がなければ、こんなに生き生きとしたワン・チアチーにはならなかったでしょう。彼のもう1つの大きな特徴は、最初から最後までベスト・コンディションで役に入るところです。
リーホンと私は、二人とも新人として、手をつないで一緒に成長してきたような気がします。本人の前で恐縮なのですが、実は最初に彼を見た時は、歌手だから真面目に演じてくれるかなあと心配でした(笑)。でも、演技を見てびっくりしました。とても真面目で、現場ではいつも辞書とノートを持っていて、中国語の勉強を熱心に一生懸命やっていました。演技も大変素晴らしいものでした。たとえば、人を殺すシーンがありますが、彼が首をひねった時、彼の迫真の眼差しを見てはっとしてしまい、自分の演技を忘れてしまうほどでした」
リーホン「トニーとは以前に何回か会ったことがありますが、とても暖かい人です。でも、撮影が始まってからは、お互いにキャラクターに入り込んでしまいました。僕はいつもレーダーを張りめぐらしている感じ。役柄上、僕たちは敵同士なので、いつもあいつはどこにいるんだ、タン・ウェイと一緒なのか、二人で部屋に入っていったな…という感じで、とても傍受的になっていました。
共演するシーンはあまりなかったのですが、彼を見ているだけでとてもたくさんのことを学んだような気がします。そして、撮影が終わり、ベネツィアへ行って初めて、トニー・レオン、ワン・リーホンとして話ができました。そこでは、彼の哲学やどうやってリラックスするのかとか、映画に対するアプローチやエネルギーの焦点の合わせ方など、いろんなことを俳優同士としてゆっくり話せました。
タン・ウェイに対しては、とても愛情を持っています。映画の中でも外でも、とてもいい人です。映画のオーディションで初めて会ったのですが、なんてかわいい子なんだろう、すごく自然でフレッシュな人だなあと思いました。それがオーディションの初日で、オーディションが終わり、二人とも役がもらえたので、それから9ヶ月間、彼女が成長して変化していくのを見ることができました。ワン・チアチー、マイ夫人と、役になり切って成長し、変化していくのを見て凄いなあと思いました」
というリーホンの言葉を受けて
ウェイ「まず、リーホンにお礼を言います。また、この場を借りて、監督にもありがとうと言いたいです。私たち新人に成長のチャンスを与えてくださり、感謝します」(続きを読む)
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