撮影を通じて親友となったキム・ギドク監督とオダギリ・ジョー
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2008.11.20
セルリアンタワー東急ホテル(渋谷)
昨年はチャン・チェン主演の『ブレス』が話題となったキム・ギドク監督の最新作『悲夢』が、いよいよ2月7日より公開されます。今回の主演は日本のオダギリ・ジョーと韓国の個性派女優イ・ナヨン。夢がきっかけで知り合った男女の不思議な縁を、キム・ギドク監督ならではの美しい映像と幻想的な描写で描き出し、新たな究極の愛を探究する作品となっています。公開に先立ち、昨年11月に監督と主演のオダギリ・ジョーを迎えての記者会見がありましたので、ご紹介します。
監督「久しぶりに日本へやって来ました。今回はオダギリ・ジョーさんと作った新しい映画を日本で公開できることになりました。皆さんにまたお会いできて、とてもうれしいです」
オダギリ「ちょうど1年前の1月2日から、韓国に約1ヶ月間滞在して撮りました。一番近い隣りの国で、文化の違いや国の違いなどいろいろと、とても楽しい経験になりました。なにより、キム・ギドク監督がとてもいい人で、毎日撮影が終わると酒を飲んでいたので、親友のような感情を勝手に持ってます。そのくらい好きな監督と作れる作品ということで、僕もできるかぎりのことをさせていただいたつもりです。とても面白い作品になっていますので、ぜひよろしくお願いいたします」
司会「オダギリ・ジョーさんとは初めての合作ですが、キャスティングの決め手となったのは? オダギリさんが出ている作品はご覧になっていると思いますが、お会いになる前の印象と、実際に会った後の印象の違いはありますか?」
監督「僕が映画を撮る時に毎回心配するのは、果たして僕の映画に出てくれるだろうか?ということ。シナリオを俳優に渡す時は、いつもその心配をします。というのも、これまでの作品はとても残忍だったり、激しいシーンが多かったりしたので、かなりの俳優たちから出演を断られてきたのです。だから、今回もまたダメかもしれないけれど、1人でも出てくれればうれしいという気持ちで、シナリオを渡していました。
オダギリ・ジョーさんの作品は『血と骨』『ゆれる』『メゾン・ド・ヒミコ』などたくさん観ましたが、観るたびにエネルギーに溢れているなと感じていました。いつも関心を持っていたので、今回『悲夢』に合う俳優は誰だろうと考えた時、まずオダギリさんを思いついたのです。
実はオダギリさんが『東京タワー』のPRで韓国にいらした時、僕もその場にいて、映画も観たし、舞台挨拶も拝見していました。オダギリさんは髪が長くて、その時からきっと『悲夢』に合うと思っていました。それで、ぜひお会いしたい気持ちはあったのですが、これまでの経験から、気をつけて慎重にやらないといけないと考え、その時はこっそり観に行って、こっそりと帰ってしまいました(笑)。
その後で悩んだ末、ダメでもとにかくあたってみようという気持ちで、根本理恵さん(通訳・字幕翻訳家・当日の通訳も根本さん)にメールを送り、最初に伝えました。その時は、別の作品があってスケジュールが合わないということで見送ることになり、ああ、やっぱりダメだったかと思ったのですが、その後で、スケジュールの調整ができたという連絡をいただいたのです。
オダギリさんが韓国にいらしてから1ヶ月は、ほとんど休みがない中で撮影をしてくれました。オダギリさんはシナリオを細かくきちんと把握していて、僕が見落としているところまでちゃんと読んでいてくれたので、ほんとうに驚きました。たとえば、現場で『今のセリフはこう言いましょう』と私が演出すると、『監督、今の部分はこれがなかったですが、それは忘れたのですか? それとも、あえて省いたのですか?』と聞いてくれて。(会場笑)それで、現場では監督が2人いるように感じていました。そんな風に、2人で息を合わせて撮影をしていきました。
今まで15本の映画を撮っていますが、現場にノートパソコンを持ち込んだ俳優さんも初めてでした。(会場笑)僕が考えていることや、現場で話したことなど、撮影に関係のないことでも、1つの情報としてノートパソコンに打ち込んだりメモをしたりして、ほんとうに一生懸命準備をしてくれていました。その姿を見て心から感動しましたが、恐怖を覚えることもありました(笑)。オダギリさんが途中で、演出が気に入らないと怒って帰ってしまったらどうしようと思ったりして。今回はほんとうに、いい俳優といい作品が撮れたと思っています。完成した作品にも大変満足しています」
司会「ノートパソコンを持って行かれたというのはなぜ?」
オダギリ「これは企業秘密なんです(笑)。中に書いてあることは。実は毎作品、コンピュータにまとめるんですよ。作品の構成だったり、流れみたいなものを、自分なりに組み立て直したりするんですね。自分で見てすぐわかるように。それを現場でやってたりするので、その印象が深いんだと思います。そんなに、いつも持ち歩いてるんじゃないです(笑)」
司会「監督の作品の魅力はどんなところでしょう? 今回の作品の脚本を読んで、どんな感想でしたか?」
パソコンで役柄を細かくチェック (監督志望だけに分析派?)
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オダギリ「世界にたくさん映画がある中で、キム・ギドク監督が作るような、人間のどろどろとした、とても惨めだったり残忍だったり、人に見せたくないような部分をさらけ出して、それを美しく見せる監督はなかなかいないと思うんです。毎回作品を見ていて、これはどこまで本気でやっているんだろう?と。役者も大変だし、監督も大変だろうし。今はCGでいろいろできる時代ですけど、そういうものを感じさせないで、リアルに撮影しながらこんなものが作れる現場ってどんなんだろう?と思って。
とにかく、監督のことはファンだったんですよ。それで、先ほどおっしゃったようにメールが来まして、この作品のあらすじが書いてあって、夢の延長にある話だったので、監督に対する興味と夢に対する興味と両方あるので断る理由もなく、スケジュールも合いましたので、もうすぐにでもという感じで撮影に行きました」
というわけで、実はお互いに相思相愛だった2人の初コラボレーション作品となったようです。ここから質疑応答が始まります。 (続く)
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