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ASICRO FOCUS file no.122

『プラスティック・シティ』記者会見

Q:今回は親子役でしたが、実生活でこんな父親または息子がいたら、いかがですか?

プラスティック・シティ

アジア移民街を牛耳るユダとキリン親子
 オダギリ「役者としてのアンソニーさんは、とても力強く皆を引っ張っていく、ほんとうに組長のような(会場笑)…、場をコントロールできる重要な役者さんだと思いますね。空気を変えることができる。スタッフの気持ちも楽しませる時は楽しませる、緊張させる時は緊張させるっていう。アンソニーさんがいることで、かなり現場が引き締まったことは確かです。お芝居に関しても、とても真摯に、特に意見をたくさん監督に出していた記憶があります。

 …内緒なんですけど、ここだけですけど、アンソニーさん、今日カツラ被ってるんです。(会場爆笑)このチャーミングさが、すごい楽しい人だなと思って。本気なのか冗談なのかわかんないんですよ。特に笑わせようとしてるのかわかんないし…カツラだって言ってくるわけでもないですし。そういう意味でも、父親に持ったらすごく楽しいタイプなんじゃないかなと思いますね」

 アンソニー「今日つけているカツラは本物です。(会場笑)日本で買いました。日本のカツラは世界一です。(会場笑)先ほどオダギリさんが内緒で書かないでくれと言いましたが、前半部分の話も書かないでください。僕をホメ過ぎで、恥ずかしくなりました。もし、こんな息子がいたら、僕はきっと大儲けするから、さっさと引退したいです」会場爆笑。


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Q:お二人ともブラジルに行きたくてオファーを受けたそうですが、大変な撮影だったと思います。合間にどのようにしてブラジルを楽しみましたか?

 オダギリ「休みの日は限られてはいますが、外にも出られて、食事に行ったり飲みに行ったりというのはありました。一度、アンソニーさんを連れてサッカーをやりに行ったことがありました。アンソニーさんはサッカーができると言うので、現地のフットサルチームと試合をやることになり、本当にブラジルの青年たちとサッカーをやることになってしまいました。アンソニーさんは、案外(強調)動けなくて(会場笑)…次の週に『またサッカーやるけど、アンソニーさんも来る?』って言ったら『いや、俺はもう一生サッカーしない』って(会場笑)。今でもクリアに覚えています。

 ご飯はもう僕は完全に合いまして、フェイジョンという豆の…ご飯にかけて食べるもの(フェイジョアーダのこと)なんですが、毎日それで大丈夫でしたね。むしろ大好きで、野菜も果物もほんとうにおいしくて、食べ物に関してはほんとうに、僕はブラジルで生きていけるなと思いました」

アンソニー・ウォン

来日が続いたアンソニー・ウォン
 アンソニー「僕はブラジルでは生きていけません(会場笑)。サッカーについては、できるとは言ったけど、決してうまくできると言った覚えはありません。ブラジルにはあまり娯楽がないので、サッカーのボールを買ってとにかく楽しもうということで、誘われたので一緒に行きました。まさか試合までやるとは思っていなかったんです。とにかく、一緒にサッカーをやっていると、オダギリ ジョーさんのサッカーのプレイはすごいんです。それを見たので、もう2度とサッカーはやらないと言いました。オダギリ ジョーさんは俳優にならなくても、サッカー選手になればまたスターになれるだろうと確信しました。

 この場を借りて、オダギリジョーさんにお礼を申し上げます。ブラジルでは、ラーメンとおいしい日本料理をすっかりご馳走になりました。もし、それがなかったら、僕は今頃飢え死にしていたでしょう」

Q:後半が詩的になっていますが、先に物語があったのでしょうか? それとも、アマゾンを見てそうなったのでしょうか?(*ネタバレ注意:ここから先は映画の結末に触れています)

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慣れない土地で苦楽を分かち合った2人
 監督「アマゾンへは行ったことがなかったので、脚本を書く時はそれがどういうものかわからず悩みました。特に問題になったのはエンディングです。ユダの人生の最期をどう終わらせるか、それまで抱えて来た苦しみからどう解放させるか、とても悩みました。それで、撮影中に森へ入ってみると、自然からインスピレーションを受けました。例えばラストですが、映画を終わらせる解決策を見つけることができました。仰向けに地面に倒れ、川に落ちる…この詩的なエンディングは、僕にとって、まさに自然から与えられたインスピレーションです。

 一番最後の撮影は、不思議な体験でした。あのエンディングを撮影する時、主な撮影は終わってほとんどのスタッフは帰国していたので、アシスタントと2人だけで撮影場所に向かいました。早朝だったので、僕たちが通るところに川がキラキラと揺らめいてと見えたんです。これこそ、僕が求めていたエンディングでした。ほんとうに自然の力には感服しています」

 ある意味、衝撃的な結末を迎える『プラスティック・シティ』。ブラジルという慣れない土地での撮影は大変でもあったようですが、ユー・リクウァイ監督の美学が詰まった映像詩となっています。ぜひ、劇場でご堪能ください。


前頁を読む P1 < P2  ▼作品紹介
更新日:2009.3.20
●back numbers

記者会見の表記
司会
監督(ユー・リクウァイ)
オダギリ(オダギリ ジョー)
アンソニー
(アンソニー・ウォン)
俳優プロフィール
オダギリ ジョー/Odagiri Joe
プロフィールとフィルモグラフィはこちらをご覧ください。
アンソニー・ウォン
黄秋生/Anthony Wong

プロフィールとフィルモグラフィはこちらをご覧ください。

花様年華

花様年華
監督:ウォン・カーウァイ
主演:トニー・レオン、マギー・チャン

世界

世界
監督:ジャ・ジャンクー
5250円/バンダイビジュアル

長江哀歌

長江哀歌
監督:ジャ・ジャンクー
3836円/バンダイビジュアル