谷垣「イーキンが、監督ってどんな人?って聞いてきたんですよ。まあ、ツイ・ハークとジョニー・トーを合わせたような人だなって。(会場笑)それで頑張ったんだと思いますね」
監督「一体、俺はどういう人格なんだ?…でも、ほんとに撮影中はどうでした? 私の(人柄は)…正直に…」
イーキン「正直に言えば、もう長いので慣れてきたというのもありますが、監督はほんとうに、大人なんだけどやんちゃだなあと(笑)。そんな感じがします。印象に残ったのは、ラストカットを撮った時。撮った後で、監督がもう一度というのでやったら、なんと照明が変わって音楽が流れてきたんです。あれ?何だろう?と思っていると、監督が『これでおしまいだから』とお祝いしてくれたんです。長年、僕もいろんな映画に出演して現場を経験してきましたが、こんなエンディングの儀式はやったことないので、大変印象深かったです」
左より谷垣健治アクション監督、イーキン・チェン、崔洋一監督
監督「ありがとうございます。役者さんは皆一斉に始まって一斉に終わるわけじゃないんですね。1人1人終わっていくんですが、イーキンのラストカットでは、何らかの形で僕の気持ちを伝えたいというか、お礼を申し上げたいと思って、あらかじめ照明や録音の方にお願いをしていたんです。OKが出た後、映画用の照明がいきなり、まるでクラブのようにさっと変わって(場内笑)そこにいきなり香港ポップが流れる。その曲を決めたのは僕ではなくて、実は谷垣健治でございます(笑)」
谷垣「いや…僕らはクランクアップでいろんな準備があったんですけど、『ちょっとこっち来い、これどっちがいいと思う?』と(笑)…それですかあ?と思ったんですけど『いや、こっちの方がいいと思います』と(笑)」
監督「実はイーキンとじっくり話をする機会は、撮影中はあまりなかったんですね。撮影が始まったのは一昨年。その時、彼は(他の映画の)撮影があり、松山ケンイチの怪我などもあって、半年ほど中断したんです。その後の再会は沖縄で、たまたま仕事帰りにレストランに入ったら、どこかで見たような色男がいるんですね。ほんとうにびっくりしました。イーキンも、どこかで見た奴が入って来たなあという感じで…とても愉快な再会でした。イーキンは、日本の映画のスタイルというか撮り方をどう思いますか?」
イーキン「役者としては、今回は大きなチャンスだと思っているので、参加できてとてもうれしいです。特に今回は日本映画なので、撮影の前に日本の武術や剣道などを練習する時間をとってくださったのが、とてもうれしかったです。香港映画では、現場へ行ってから作って即撮るというやり方なので、僕にとっては映画の出演以外にもたくさん学ぶことがありました」
監督「イーキンは特殊な刀を使っているんですけど、うまいですよ。(場内拍手)後、おっかないシーンもあるんですけど、それはお楽しみということで。日本でも大変有名な江川(悦子)さんという女性の特殊メイクの方が、イーキンの顔にある仕掛けをしているんです。素晴らしい特殊メイクで、それに合わせたイーキンの演技がとても素晴らしいです」
イーキン「もう1つ、うれしいことがありました。実は小さい頃から、ずっと日本の忍者ファンでした。今回は初めて日本の映画に出演し、しかも日本の忍者を演じることができました。こんなチャンスをくださって、ほんとうにありがとうございました」
監督「いやいや、こちらこそ。私や谷垣健治さんと一緒に仕事することを決意してくれて、こちらこそイーキンに感謝したいです」(拍手)
イーキン「この場をかりて健治さんにもお礼を言いたいです。今まで何度も一緒に仕事をしたことはありますが、大体香港映画だったので、今回は日本映画で一緒に仕事ができてうれしかったです。ありがとうございました」
谷垣「『ツインズ・エフェクト』の時に、タイで2階から飛び下りるというのがあって、イーキンがワイヤーは得意なんだって言うのを覚えていたので、今回は沖縄の崖で挑戦してもらったんです。イーキンが慣れてる香港のアクションクルーではなかったのですが、そこを信頼してやってもらって。こちらも役者さんに信頼してもらってやらないと、やっぱりこわいですから。よくやってくれたなあと思います」(拍手)
監督「初めてイーキンに会って、すごく印象的なことがありました。今回は言葉が違うので、ある意味、とても大きなハードルだったと思うんですけど、最初に会った時、彼の空気感にとても感銘したんですね。僕もいろんな国の俳優さんと仕事してますが、中には非常にこと細かにいろんなディテールや細部に渡る説明を求める役者さんもいらっしゃるんですけど、イーキンはたった一言『僕は自分はこう思うが、監督はどう思いますか?』と。それが一致したんですね。『あなたの言う通りに撮る』『その中で思うがままにやっていただければいい』『わかった』これほど、素晴らしい打合せはないんですね。ほんとうに探り探りというのが多いんだけども、イーキン・チェンの場合はそれがない。やはりこの人は、ほんとうに海を超え、民族を超え、国境を超えて仕事ができる、ほんとにすごい香港人でありながら同時に国際人だなあと強く感じました」(拍手)
イーキン「ありがとうございます」
谷垣「皆さんはもう知ってると思うけど、彼は、僕らの前では努力を見せないんですね。2007年に日本に来た時に1週間くらい練習した時があったんです。その時、僕と一緒にアクションを担当してくださった高瀬さん(殺陣指導)が、彼の納刀を見て『いやあ、あの人はだいぶ練習したんでしょうね。すごくスムーズにできる人なんですねえ』とおっしゃってました。やっぱり彼はいろいろ準備してたと思いますよ」
監督「イーキン、また日本で仕事をする気がありますか?」
イーキン「絶対!」
監督「ありがとうございます。イーキンはスターなのにどこか飄々としていて、敷居は高くないし、僕もときどき…ちょっと触ってみようかなあと(会場爆笑)…そんな気がするような男なんですね。俳優さんというのは凄く強い印象を持たないといけないんだけれども、同時に優しい心も持たなくてはならなくて。そういう意味では、イーキン・チェンというのはそういう男、そういう人間です」(会場拍手)
司会「それでは最後に、一言ずつメッセージをお願いします」
イーキン「僕としては、この映画が日本だけでなく、まず香港、そしていろいろな国で上映されることを願っています。そうすると僕も、プロモーションでいろいろな国へ行けるので。(監督「行きたいね。一緒に世界へ行きたい」)それと、皆さんぜひ香港へいらしてください。文化交流をしましょう。実は12月にはもう1本、僕の出演した映画(『風雲2』)が香港で公開されます。それに、ソロ・コンサートも開く予定です」(大きな拍手)
谷垣「『カムイ外伝』ですが、最初に話を伺った時の僕は35歳で、今はそろそろ39歳になろうとしてるんですけど、僕でさえそうなんですから、監督がこの作品に関わった時間というのは相当長かったと思います。それがやっと完成して、その何年かの歳月が全部積もりに積もって120分になった映画ですので、とても密度の濃い映画になってます。その『カムイ外伝』が、僕の大好きな、愛して止まない香港で上映されるといいなあと心から思ってます」
監督「「こういうチームで仕事できるのは、映画に関わるものの冥利だなあと思ってます。映画作りだから、こういう出会いがあったのだと思います。ほんとにまた香港で、こういうイベントなり映画の上映館で、イーキン・チェンと共に舞台を踏めれば最高の喜びだと思います。皆さん、劇場でお待ちしております」(拍手)
この後、カムイ外伝のスタッフTシャツ(3人のサイン入り)をステージより投げるプレゼントに、ファンの皆さんの大争奪戦が。それから観客を背にフォトセッションで、トークイベントは終了しました。
前の頁を読む P1 < P2 ▼イベント ▼作品紹介 ▼イーキン・インタビュー
|