logo


ASICRO FOCUS file no.172

2012-2013 冬の香港映画特集

 明けて新年、2013年の幕開けを飾るのは、2011年の香港金像奨で作品賞・助演男優賞・助演女優賞・音楽賞の4冠に輝いた『燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘』(原題『打擂台/Gallants』)。本作は2010年の東京国際映画祭で『ギャランツ〜シニアドラゴン龍虎激闘』というタイトルで初上映されています。アンディ・ラウが製作総指揮を担当。ジョニー・トー作品でお馴染みのラム・カートンが初プロデュースした作品でもあります。

燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘

左からウォン・ヤウナム、ジア・シャオチュン、シウ・ヤムヤム(後)、テディ・ロビン(前)
ブルース・リャン、チェン・クァンタイ
  (c)2010 Focus Film Limited

 見どころは、何といっても、ブルース・リャンやチェン・クァンタイ、ロー・マン、チャーリー・チャンなど往年のカンフースター、アクションスターたちが、年齢や障害を乗り越えて頑張る姿を見せてくれるところ。さらに、俳優で歌手でもあるテディ・ロビンの怪演が摩訶不思議なテイストを醸し出し、老人たちの青春映画といった趣もあり。脇を飾る若者たちのリスペクトも納得の作品に仕上がっています。若手のデレク・クォック(『野。良犬』)とクレメント・チェンによる共同監督作品。1月5日よりシネマート六本木、心斎橋にて公開予定。

 続いては、『王朝の陰謀/判事ディーと人体発火怪奇事件』で復活を遂げた巨匠ツイ・ハーク監督による3Dスペクタクル武侠映画『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝』。インディ・ジョーンズみたいな副題が付いていますが、本作はキン・フー監督の傑作『残酷ドラゴン・イン 血斗竜門の宿』(67年)を、ツイ・ハーク監督の製作&脚本でリメイクした『ドラゴン・イン』(92年/レイモンド・リー監督)の後日談。3D撮影には、あの『アバター』の技術者が招かれています。

『ドラゴンゲート 龍門飛甲』

『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝』宝探しの面々
(c)2011 Bona Entertainment Company Limited.

『トリプルタップ』

『トリプルタップ』のダニエル・ウーとルイス・クー
(c)2010 Emperor Classic Films Company Limited.

 前作では、荒野に佇む荒くれたちの宿ドラゴン・インで、ブリジット・リン、レオン・カーファイ、マギー・チョン、ドニー・イェンによる凄まじい死闘が描かれていましたが、それから3年後という設定の本作で闘うのは、義賊のジェット・リー。彼を助ける強者たちとして、孤高の剣士ジョウ・シュン、野盗の頭グイ・ルンメイ、宝探しのリー・ユーチュン、謎の女メイビス・ファンと、中国・台湾の人気女優たちが揃いました。

 対する悪役を演じるのは、中国一の美形スター、チェン・クン。悪役と善玉の二役を絶妙に演じ分け、一番の見どころとなっています。チェン・クンのファンは必見! 本作は1月11日よりシネマート六本木、心斎橋にて公開予定。

 翌日12日から公開になるのが、イー・トンシン監督の『トリプルタップ』。かつて、レスリー・チョンが殺人に魅了されてしまった射撃チャンビオンを演じた『ダブルタップ』(02年/ロー・チーリョン監督)から10年を経て、当時脚本を担当したイー・トンシン監督が、再び射撃をテーマに新たなドラマを描きます。主演はルイス・クーとダニエル・ウー。『ダブルタップ』のアレックス・フォンが同じ役柄で出演。元射撃チャンピオンで今は引退したダニエルの先輩刑事を演じているのも見どころです。

 ルイス・クーにダニエル・ウーというと、『盗聴犯』シリーズなど共演が続いていますが、今年の東京・中国映画週間で上映されたジョニー・トー監督のラブ・コメディ『独身の行方』も面白い作品でした(配給会社さん、よろしく!)。今やこの2人は、香港映画界を担う美中年になったのですね。シャーリーン・チョイとリー・ビンビンも出演の本作は12日より、シネマート六本木と心斎橋にて特別限定公開予定。来年は故レスリー・チョンの10周忌でもあり、その方面でもひと盛り上がりありそうなので、この機会にぜひ『ダブルタップ』と『トリプルタップ』を一緒に楽しみましょう。

『奪命金1』

『奪命金2』

『奪命金3』

『奪命金』のキャストたち
(c)2011 Media Asia Films (BVI) Ltd..
 そして2月、ついに日本公開されるのが、2011年の東京フィルメックスで初上映されたジョニー・トー監督の新作『奪命金』です。大金持ちから庶民まで、香港人なら誰もが興味を持っている「金、株、不動産」をモチーフにスリリングなサスペンスが展開する本作は、2012年の香港金像奬で助演男優(高利貸しのロー・ホイパン)と助演女優賞(「清楚明白!」の客、ソー・ハンシュン)、台湾金馬奨で監督賞と主演男優賞(ラウ・チンワン)を受賞。アジア大平洋映画祭やその他の映画賞でも、多数の賞を獲得しています。

 本作は群像劇となっており、不動産を購入しようとしていた刑事夫婦(リッチー・レンとミョリー・ウー)、ハイリスクの金融商品を売るノルマを課せられた銀行員(デニス・ホー)、親分たちのために金策して回る人の良いヤクザ(ラウ・チンワン)の3組が、株の大暴落とある殺人事件によって運命を変えられていく様を描いています。いくつかのエピソードが、ある出来事によって連鎖的に1つに集約していく展開はジョニー・トーならではの真骨頂。それぞれが、最後に掴んだ幸せとは…。

 成績がわるくて解雇寸前の女性銀行員を演じているのが、故アニタ・ムイの愛弟子で、後継者と言われている歌手のデニス・ホーです。普段からボーイッシュな彼女ですが、この役ではかわいらしさも感じられ、緊張感ある役柄を見事に演じています。金融業界の専門用語など、前半は少々難解かもしれないので、2度観るのがオススメ。『奪命金』は2月9日より、新宿シネマカリテ、他全国順次ロードショー公開予定です。

 そして、いよいよ2013年には、早くから日本公開も決まっていたウォン・カーウァイ監督の最新作『グランドマスター』がついに公開となります。『2046』を抜いて、製作期間最長記録を更新した『グランドマスター』。トニー・レオンが一体どんなイップ・マンを演じるのか、興味津々。武術指導はユエン・ウーピン。中華圏での公開に続いて、日本でも早く公開されることを祈りましょう。


▼「2012-2013 冬の香港傑作映画まつり」 ▲冬の香港映画ラインナップ
更新日:2012.12.30
●back numbers
公開情報&作品データ
燃えよ!じじぃドラゴン
龍虎激闘

(打擂台/Gallants)
2010年/96分/広東語
Blue-ray 上映
監督:デレク・クォック
   クレメント・チェン
出演:ブルース・リャン
   チェン・クァンタイ
   テディ・ロビン
公開日:1/5
シネマート六本木、シネマート心斎橋にてロードショー
*劇場サイト
*作品紹介
ドラゴンゲート
空飛ぶ剣と幻の秘宝

(龍門飛甲)
2011年/121分/北京語
監督:ツイ・ハーク
出演:ジェット・リー
   ジョウ・シュン
   チェン・クン
公開日:1/11
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ、他にてロードショー
*公式サイト
*作品紹介
トリプルタップ
(鎗王之王/Triple Tap)
2010年/118分/広東語
監督:イー・トンシン
出演:ダニエル・ウー
   ルイス・クー
   シャーリーン・チョイ
公開日:1/12
シネマート六本木、シネマート心斎橋にて特別限定公開
*公式サイト
*作品紹介
奪命金
(奪命金/Life Without Principle)
2011年/106分/広東語
監督:ジョニー・トー
出演:ラウ・チンワン
   リッチー・レン
   デニス・ホー
公開日:2/9
新宿シネマカリテ、シネマート心斎橋にてロードショー
*公式サイト
*作品紹介
早く観たい!香港映画最新作
(*今後も追加予定)
グランドマスター
(一代宗師/The Grandmasters)
監督:ウォン・カーウァイ
主演:トニー・レオン
   チャン・ツィイー
   ソン・ヘギョ
   チャン・チェン
*香港公開:2013.1.8
*日本配給:ギャガ

血滴子(3D)
The Guillotines
監督:アンドリュー・ラウ
主演:ホアン・シャオミン
   イーサン・ルアン
   ショーン・ユー
   リー・ユーチュン
*香港公開:2012.12月
*香港公式サイト

車手
Motorway
監督:ソイ・チェン
主演:アンソニー・ウォン
   ショーン・ユー
   グオ・シャオドン
   バービー・スー
*香港公開:2012年6月
*香港公式サイト

盲探
Blind Detective
監督:ジョニー・トー
主演:アンディ・ラウ
   サミー・チェン
   グオ・タオ
*香港公開:2013年予定