「のだめカンタービレ」は、2001年から2010年まで女性コミック誌に連載された二ノ宮知子による人気漫画。音大を舞台に、指揮者を目指しながらも、幼少期のトラウマで留学ができず、ピアノ科で鬱々としている千秋真一と、天才的な才能を持ちながらもピアノの先生になることが夢の「のだめ」こと野田恵が出会い、恋心をバネにして共に切磋琢磨し、音楽家として世界へ羽ばたいていく姿を、オーケストラメンバーとの友情も交えて描いた青春群像劇です。
2006年にはフジテレビで、玉木宏&上野樹里の主演で実写ドラマ化され、大きな反響を呼びました。その後、テレビアニメ化もされたこの人気作品を、韓国ならではのアレンジで再構築したのが「のだめカンタービレ 〜ネイル カンタービレ」です。主人公の千秋真一ことチャ・ユジンを演じたのは、ミュージカル俳優としてデビューし、「製パン王キムタック」でブレイクしたチュウォン。その彼の推薦で、野田恵ことソル・ネイル役には、人気子役を経て、最近では『怪しい彼女』で主演するなど、演技派女優へと変身しつつあるシム・ウンギョンが選ばれました。
制作を担当したのは、韓国版の「花より男子〜Boys Over Flowers」(09)や「イタズラなKISS〜Playful Kiss」(10)、「タムナ〜Love the Island」(09)などを手がけたグループエイトと、日本の配給会社エスピーオー。この後の記者会見でも語られていますが、根強い人気のある原作漫画や日本のドラマと比較されるプレッシャーはあるものの、韓国ならではの作品に仕上げようという方向で、勇気を持って制作されています。
|
ある夜、隣の部屋のユジン先輩が酔いつぶれ、ドアの外で眠っていた。一目惚れしたネイルは、自分の部屋に運んで寝かせることにする。
|
そんな「のだめカンタービレ 〜ネイル カンタービレ」はというと、ストーリーラインはほぼ同じでありながらも、日本版にはない新たな演出が随所に施されています。例えば日本版では、ドラマに漫画的な表現(ハートマークが飛んだり、のだめが真一にぶっ飛ばされたり)を取り入れた斬新さが特徴となっていましたが、韓国版では漫画的誇張は控えめ。どちらかというと、リアリティを重視しながらも、ネイルのユニークさが際立つように描かれています。ユジンのトラウマの原因となる事故にも一工夫あり。
掃除が苦手なネイルの部屋。洗髪も3日おきのものぐさだ。
|
また、竹中直人が付け鼻をして怪演した世界的な指揮者フランツ・シュトレーゼマン役を、ドラマや映画で活躍するベテラン俳優のペク・ユンシクが演じているのも見どころ。外国人風な風貌を活かし、原作漫画に近い自然体のイメージで、やや変態な指揮者役を作り上げています。ミナ学長とのロマンス度もアップ。(ちなみに、息子のペク・ソビンも指揮科の学生役で出演)
Sオケのコンマスとなるユ・イルラク(峰龍太郎役)とAオケのコンミス、シウォン(三木清良役)とのロマンスもじっくり描かれており、ユジン&ネイルと並んで最後まで応援したくなる微笑ましいカップルに。また息子を溺愛する峰龍太郎の父親役はこわ面の伊武雅刀が演じていましたが、韓国版でもイルラクの父親をこわ面のアン・ギルガンが演じ、やさしい父親に変身。父親が営む中華料理屋の「裏軒」はオシャレなイタリアンレストランとなり、いつも学生たちが集う場所となっています。
ネイルと連弾したユジンはネイルの才能に気づいていく。
|
日本版では出番が少なかったユジンの母親は、大学の前でカフェをオープン。ネイルや小柄なコントラバス奏者のミニミニがアルバイトする場所に。母親はユジンの成長をそばで見守っています。そして、世界的なピアニストである父親も登場。ユジンとネイルに影響を与えていきます。ユジンが育った叔父さんの邸宅をネイルが訪問する場面もあり。時間や話数が長い分、日本版では省略されていたシーンが登場するのも見どころの1つと言えるでしょう。
韓国版ならではの新たなキャラクターも登場します。それは海外の名門音大に通うイケメンのチェリスト、イ・ユヌ。オーボエ奏者の黒木くんと、もてもてのチェリスト菊池くんを足して割った感じのキャラクターで、ネイルに積極的にアプローチ。恋のスパイス役として投入され、ユジンの心を刺激していきます。演じているのは、「カクシタル」や「本当に良い時代」で注目されている若手俳優パク・ボゴムです。彼が指揮する「マンボ」にもご注目を。
|
ネイルに積極的にアプローチするチェリストのイ・ユヌ(左)。ネイルの心は揺るがないが、ユジンはときどき焦ってしまう…。
|
そして、なんといっても、このドラマの大きな魅力は全編に流れるクラシック音楽の数々。オーケストラやピアノで演奏される曲目だけでなく、ドラマを彩る挿入曲として様々な楽曲が使用されているのは、日本版も韓国版も同じ。但し、選曲には多少手が加えられています。例えば日本版では、Sオケがコンサートで初めて演奏したベートーヴェン「交響曲第7番」が主題曲になっていますが、韓国版では原作漫画と同じ「交響曲第3番英雄」を起用。ドラマの主題曲にもなっています。
このように、どこでどんな楽曲が流れるのか、クラシックファンや音楽ファンにとっては、それも大きな楽しみの1つとなるでしょう。また劇中、作曲家や楽曲の成立ちなど、クラシックに関するうんちくがユジンの言葉で語られるので、クラシック初心者にもオススメ。ドラマを見た後は、クラシック音楽を聴いてみたくなること間違いなし。
人気作品のリメイクともなると、思い入れが強い分、ついきびしい比較をしがちですが、本作はその違いも含めてよくできており、それぞれに楽しめる作品となっています。最終話では、ヨーロッパ留学編までがちゃんと描かれます。原作者からも面白いとツイートしていただいた韓国版「のだめカンタービレ 〜ネイル カンタービレ」、のだめファンも、ドラマファンも、クラシック音楽ファンもぜひご注目ください。「のだめカンタービレ 〜ネイル カンタービレ」のBlu-Ray & DVD-BOXシリーズは、7月1日に同時リリース予定です。
(c)二ノ宮和子/講談社 (c)2014 Group8 & SPO
▲「のだめカンタービレ」作品紹介|記者会見|イベントレポート ▼「恋にオチて!俺×オレ」
|