仲のいい家族のように遊ぶザク、キャンディと娘のジュー
矢田部:キャンディがとてもポップなファッションで登場しますが、衣装はアンジェラさんがアイデアを提供されたそうですね。アンジェラさんはキャンディがどういう人物だと思って、あの衣装を提案したのですか?
アンジェラ「2つの段階に分かれています。キャスティングの段階と脚本の段階で変わりました。キャスティングの段階では、カメラテストで数シーンしかなかったので、その時はけっこう奇抜な服を着て行きました。カラフルで奇妙に思えるスタイル。私が考えたキャンディは、様々な制限の中で最大限自由に生きている人というイメージだったんです。MK(モンコック系)で、日本でいうと原宿系に近い感じです。社会的に弱い立場の娘だから、高級ブランドを知っているわけではないけど、自由な発想で自分なりに自由に生きてきたのがキャンディ。他人にからすれば、無責任でちゃらんぽらんかもしれないけど、それはキャンディというキャラクターが演じられる自由なんです。
初めて面接に来た時のキャンディ
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三つ編みやクリップもかわいい
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脚本をいただいてからは、キャンディの衣装をデザインすることになりました。中心にあるのは自由な発想。ちょっとおかしく見えるかもしれないけど、カラフルで若者らしい格好。そういうキャラクターを作りました。そもそも、キャンディは複雑で『?』がいっぱいあります。それで、洋服にもそういう状態を表現してみました。それから、彼女はシングルマザーですが、娘との関係も普通の家庭とは違います。母性というのではなく、他人から見るとすごくユルユルなんだけど、その中で自分なりのルールを作っている親子関係だったのではないかと思います。それで、子供との関係性も考慮して、キャンディというキャラクターを作りました」
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ホテルで掃除をするキャンディと手伝うジュー。母娘のそっくりファッションにも注目したい。
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矢田部:この作品はコロナだったり、移住だったり、いろんな社会問題を盛り込んでいて興味深い一方で、映画としては、ラブストーリーに絶妙にいきそうでいかないのがとてもいいと思います。最後に二人が結ばれるとか、ラブストーリーにしなかった理由は?
監督「脚本家と話して、まず結ばれないという方向は決まっていました。実は二人ともラブストーリーは苦手で、まあ結ばれないだろうということにしていたんです(笑)。撮影を進めるにあたり、主人公のルイスとアンジェラにも、この二人は結ばれた方がいいかどうか、意見を聞いてみました。すると、ルイスは『ワン・チャンスくらいはあるんじゃない? ちょっと試してみてもいいんじゃないか』とコメントしてました(笑)。ただ、アンジェラはどうもそうは思っていなかったようで『年齢もあるし、若い設定だからこれから先の時間もいっぱいあるので、結ばれなかったんじゃないかな』という意見もありました。
特に、コロナの3年間というのは、社会問題も含めてさまざま別れがあり、実際、コロナの状況下で生活もままならない人がたくさんいました。そんな状態の中で、恋愛ってできるんだろうか。コロナという特別な状況の中で、最初はお互い知らない相手だけれども、助け合える関係になる。でもそれは、必ずしも愛情ではない。というのも1つの表し方ではないかと思い、監督としてはラブストーリーでなくてもいいのではと考えました」
ザクの誕生日の鍋パーティに呼ばれたキャンディとジュー。家族みたいな3人に仲間たちも「一緒になれよ」と冷やかすのだが…。
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アンジェラ「キャンディというキャラクターを考えると、実は反論もあります。二人は一緒になってもよかったんじゃないかな、と。映画の中で、ザクがキャンディに『一緒に生活しないか』と言うシーンがありますが、その前に先ほどの討論をしました。どこまで近づくかどうかというのは、前の場面の撮影にも影響するので、役者としては単純に脚本に従いました(笑)。もちろん、キャンディというキャラクターはすごく矛盾だらけなので、たとえば生活空間はあまりないのに、いつも何かが欲しい。そこには、愛情も含まれているかもしれません。自分の面倒をみることもなかなかできないのに、娘の面倒もみなくてはならないし。そういった矛盾を多く抱えているキャラクターなので、最終的にはすごくマイルドな方向に落ち着きました。一緒になっちゃったら、逆にちょっとおかしくなるかもしれないしね(笑)」(続きを読む)
all photos: ©mm2 Studios Hong Kong
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