2023年7月8日 ポレポレ東中野
左よりラム・サム(林森)監督、アンジェラ・ユン(袁澧林)
7月14日から公開がスタートし、全国で絶賛上映中の香港映画『星くずの片隅で』。すでに1ヶ月が経っていますが、まだまだこれから上映になる劇場も多く、本作の素晴らしさが全国に広がっているようです。公開に先立つ7月8日、配給も手がけているポレポレ東中野にて先行上映が行われ、ラム・サム(林森)監督と主演のアンジェラ・ユン(袁澧林)を招いた来日舞台挨拶が開催されました。アジクロでは当日の様子を、できるだけノーカットでご紹介いたします。 メイキングショットもご紹介しますので、合わせてお楽しみください。
*注:ネタバレもありますので、何も知らずに本編を楽しみたい方は、映画をご覧になった後でお読みください。
当日はチケットが早々にソールドアウト。満員御礼の劇場で期待が高まる中、上映後にゲスト登場です。司会進行役は、2021年まで東京国際映画祭でディレクターやプログラマーを務めておられた矢田部吉彦さん。久しぶりに元気なお姿が拝見できました。まずは、ゲスト二人のご挨拶からスタートです。
監督「(日本語で)コンニチハ。皆さんにお会いできて、とても感謝しています。日本での上映には期待しています。そもそも、この映画は香港人に向けたコロナ禍にある香港の物語なので、当時は海外で観てもらうことは考えていませんでした。今回は日本での上映ですので、皆さんからのご意見や感想を伺えたらうれしいです」
アンジェラ「(日本語&かわいい声で)コンニチハ。ハジメマシテ。ヨロシクオネガイシマス。ワタシハ、アンジェラデス。キャンディ…デス(拍手)。コロナノトキハ、ミナモタイヘンデシタ。ツカレマシタ。(以下、英語で)この映画は、社会的に弱い人たちの物語です。コロナという大変な状況の中、社会的弱者の人たちがどのように過ごしていたか、そこをぜひご覧いただけたらと思います」
矢田部:劇中でキャンディが『タダイマ!』とか『ヨロシク!』とか言いますが、あれはアンジェラさんのアドリブと聞いています。ほんとうですか?
アンジェラ「キャラクターを作る上で監督とも話し、アドリブで考えて話しました。映画にコスプレ大会が出てきますが、キャンディというキャラクターは香港の若者と同じで日本の文化に影響されています。日本語にも慣れているので、普通の会話の中に日本語が出てきてもおかしくないよねということで、日本語を少し使ってみました。それに、キャンディのキャラクターは香港のMK(旺角=モンコック・スタイル)なんです。ファッショナブルだったり、ちゃらんぽらんだったり…そういうイメージがあるので、日本語も使ってキャンディというキャラクターを作っていきました」
矢田部:この物語はロックダウン中に構想をされたと思うのですが、物語を作るプロセスや経緯を教えていただけますか?
監督「構想は2018年でコロナ前でした。その時点ですでに、清掃員というキャラクターを使おうと、脚本家の方と決めていました。なぜかというと、清掃員の方には街の中で一番汚い仕事をしてもらっていて、一般の人々はその成果を享受しているにもかかわらず、彼らの生活には誰も見向きもしない。そういう状況がありました。それで、清掃員の映画を作ろうというのがプロジェクトの始まりでした。
ただ、コロナも大きく影響しており、皆さんもそうだと思いますが、生活が大きく変化しました。特にこの映画にあたっては、清掃員という設定は変わらないものの、映画の方向性として、ザクとキャンディがコロナの中でお互いに助け合う物語に作り変えました。そこが、大きく変わったところです。
撮影はコロナ禍にあり、いろいろと大変なことがありました。特にロケ場所探しですね。大勢の撮影班が入るので、なかなか貸してくれませんでした。また、政府の制限もありました。当時の香港は集合禁止令というのがあり、2人以上集まってはいけない、4人以上集まってはいけないと。そういった社会状況もあり、いろいろ遅延や撮れなかったこともありました。ただ、映画のセリフみたいですが、どうも神様が見てくれていたようで、延期になったおかげで、アンジェラが映画に参加できたんです。そういう部分では、恵まれていたかもしれません」
左より司会の矢田部吉彦さん、ラム・サム監督、通訳の伯川星矢さん、アンジェラ
矢田部:ザクですが、こんなに優しく強いキャラクターは、なかなか映画でも珍しいと思うくらい魅力的な人物でした。ザクというキャラクターはどのようにして考えられたのでしょう?
監督「自分が生きて行く中で出会った人たちが、モデルになっています。僕の生活はどちらかというとキャンディに近くて、困難や問題からは逃げがちでした。ただ、これまで生きてきた経験の中で、ザクのような人たちにすごく助けられてきました。なので、このザクというキャラクターは自分自身が出会った人たちの中で培われ、助けてくれた人たちがザクなんです。映画をご覧になると、ザクみたいな人は実在するのか?と疑問に思う人もいるでしょう。僕は絶対にいると思います。ただし、そういう人たちをちゃんと覚えているか、そういう人たちをちゃんと見ているか、ということだと思います」
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