ここで、なんとアンジェラにサプライズ企画。彼女が大好きなファッションブランドTOGAのデザイナー古田泰子さんから、アンジェラへのメッセージが届いており、矢田部さんが代読。それを、通訳の伯川星矢さんが広東語に翻訳したものがアンジェラに渡されます。
アンジェラ・ユンへ。
手紙の上で初めまして。
TOGAデザイナーの古田泰子です。
社会的弱者、アンジェラ演じる若いシングルマザーは厳しい環境で生き抜くための図々しさと弱さ、強がるプライドと危うさの両局面を、無垢な透明感と時おりみせる疲れた表情で見事に描き出し、ルイス・チョン演じる外見だけではわかり得る事ができない、溢れ出す優しさと正義強さをもつザクとの二人の出会いからラストシーンまで、互いの張りつめた心が揺らぐシーン、キャンデイの溢れ出す涙が印象的でした。
この映画を見終え、現代アーチスト、Zoe Leonard(ゾーイ・レオナルド)の1992年の作品『I want a President』を思い出しました。ポエム形式の作品なので是非読んでみてください。
世界中の政治家や権力者が、この映画が描く世界のように理解と優しさをもち、全てのマイノリティーにも最低限の生活しやすい社会を作り上げてくれたらよいのに。そんな願いがかなわずとも、せめて自分の小さな世界の周り、隣人、相手の気持ちに寄り添える、そんな希望の光を指しだせる自分でありたいと強く思いました。
TOGAを好きといってくれてありがとう。
この映画を日本で宣伝している、私に連絡をくれたあなたのチームは、昔から映画が好きで、メジャーなエンターテイメントでは伝えられない社会的弱者の視点を持った素晴らしい映画を私たちに紹介してくれる心強い人たちです。
そんな人たちの一員として、私も成長していくアンジェラを応援します!
2023年 7月5日
TOGAデザイナー 古田泰子
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手紙を読んだアンジェラ。感激して涙声で「Thank you so much...(拍手)」泣き顔になり「Surprise and happy. What a surprise! You didn't tell me.」と通訳の伯川さんを責める場面も。「だって、サプライズですから」と伯川さんは困りながらも「実はアンジェラさんの手元にある翻訳版は僕が訳したので、泣かれるのはすごくうれしいです」と喜んでいました。
矢田部:コメントをいただけますか。
アンジェラ「(途中まで答えながら、感極まって涙。泣いて言葉にならず顔を隠して)シャシン、ストップ。………先ほどの内容で『世界中の政治家や権力者が、この映画が描く世界への理解と優しさを持ち』という言葉がありましたが、そこにすごく感動しました。映画の中で、ザクやキャンディといった社会的弱者を演じましたが、生活の中での無力感やそういったものがすごく感じられたと思います。香港だけでなく、社会的弱者になると辛いことがいっぱいあるので、世界がそういう人たちに対してもっと理解や優しさを示してくれたら、もっといい世界になるのではないかなと感動しました。泣くつもりはなかったのですが、コメントを聞かれて泣いてしまいました(笑)」
泣いた姿もかわいいアンジェラにシャッターの嵐。すみません。アジコも撮らせていただきました。
矢田部:では、最後に監督に『私たちは塵よりも小さい。神様も見てないかもしれない。でもお互いにお互いを見られたら、それでいいじゃないか』というセリフに込められた思いをお聞かせください。
監督「なかなか困難に満ちた世界ですが、その中で希望を持って生活していくには、ある程度このようにお互いちゃんと見つめ合う、隣に誰かがいるということに気づかないと、希望は見い出せません。社会環境がある日突然、上から下まで、内から外まで、ガラッと変わるということは、なかなかないと思います。そういった環境の中でどういう風に生きていくかというと、自分が変わっていくしかない。ただ、自分が変わっていくというのはすごく難しいことで、困難に満ちています。そういった時にどうやって過ごすかというと、周りに誰かが必ずいてくれることではないでしょうか。映画の中でも感じられると思いますが、誰かが付き添ってくれている、もしくは自分が誰かに付き添う。そういったことがあると、困難でも乗り越えられる。そういう考えが、このセリフに盛り込まれています」
これはかなり含蓄のある、監督ならではの深いコメントです。それに大なり小なり、誰にでも変化は訪れる可能性がある。たとえどんな時でも、誰かがそばにいて、お互いを見守ることが力になるのだと伝わってきます。
アンジェラ「映画の中では、2つのことが見えてきます。1つは、最悪の世界での過ごし方。もう1つは、ザクのように他人を気遣う人がそばにいるということ。日本の皆さんにもぜひ、ザクのような人になって欲しいです」
監督「同時に、キャンディのような生命力も必要だよね」
アンジェラ「たまには、ずる賢くね(笑)」
くるくると表情が変わるアンジェラは泣いても笑ってもキュート。広東語もかわいい。
監督「この映画を観て温かさを感じてもらえたら、一番嬉しいです。この映画から、もし何か力を得られたのであれば、周りの方にも勧めていただき、その力をいろいろな人に知ってもらいたいです」
最後に、短いコメントを頂いた後、フォトセッションを経てイベントは終了しました。その後、劇場ロビーでも観客の皆さんとの交流があり、さらには劇場の外でツーショットタイム。行列ができ、テーブルが出されてサイン会やファンの皆さんとの交流会が続いていました。本作を配給した cinema drifters のリム・カーワイ監督もうれしそうに、黒子に徹して頑張っておられました。まだまだ続く全国上映、ぜひ劇場でこの感動を味わってください。
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左:イベント終了後、劇場の外でサイン会
下:東中野駅のホームからも行列が見えました。
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