監督「最初の自転車の絵ですね。あれは息子なんです。ボンベイではフィルムの入ったリール缶を劇場から劇場へと自転車で運びます。1つはあそこに、これはあっちにと…そうすると、2つの映画が同時に上映できる。自転車で運ぶからできるんですね。あの映画のために、息子と一緒にフィルムを届けている絵を描きました。あの絵は『スタンリーのお弁当箱』を届けているのです」
Q:絵を描いたのはアニメーターの方ですか?
監督「原画を16枚ほど描きました。それを順番に重ねて動くようにして、アニメーション・スタジオに持ち込み、アニメーターがアニメーションにしてくれました」
実はこの質問は、タイトルで大人と子どもがお弁当を取り合っているアニメについての質問だったのですが、その前に出て来る映画のシンボル的アニメにも、このようなストーリーがあったのですね。そうか。あれは、パルソーくんだったのか。
Q:この質問はたくさんされたと思いますが、この映画がワークショップで撮りためた映像でできあがったというのが不思議です。お話は全部つながっていますが、具体的にはどういう風にそれぞれのシーンを撮影していったのですか?
監督「ストーリーは私の中にすでにありました。ただ、脚本は持ち込みませんでした。その代わりに…(と、ここで、退屈して飲み終えたグラスの氷をカラカラさせているパルソーくんに、「うるさいよ。静かにしなさい」とお小言)オーケストラで指揮をするのと同じです。指揮棒を使いますよね。透明の指揮棒を使って、毎週土曜日、4時間のプログラムで、間に休憩が2回。子どもたちは自発的にやって来ます。これは学校のワークショップで、クラブ活動のようなものなので、映画を撮るというプレッシャーがないのです。
ストーリーはわかっているけれど、脚本にはしないで、今日はこのストーリー、今日はこれと、現場へ行って、その日のシーンを口頭で伝え、先生役の役者には『今日は英語を教えます、これが教科書です』と渡します。それから『あの男の子は顔にアザがあるので、どうしたの?と授業中に尋ねてください』と頼みます。男の子には、先生が質問するから答えるように言いますが、質問の中味は伝えません。質問に答えなさいとだけ言います。(次頁へ続く)
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