自伝青春映画で旋風を起した 人気作家の素顔に迫る −ギデンズ・コー(九把刀)
いよいよ9月14日より日本公開となる『あの頃、君を追いかけた』。2011年8月の台湾公開時では世代を越えた「あの頃」ブームを巻き起こし、その後、香港でも中国語映画の歴代興収ナンバーワンヒットを記録。東京国際映画祭でも上映され、監督と主演のふたりが来日して話題となりました。
そして今回は、ギデンズ・コー監督がプロモーションで単独来日。出発当日の夜までクー・チェンドンの新作撮影に付添うという忙しい最中、日本公開のために駆けつけてくれたのでした。実は取材の前に「ギデンズ・コー監督ってどんな人?」と周りの台湾通の方々に聞いてみたところ、皆、口を揃えて「面白い!」。作品世界は違えども、その人気ぶりについては「台湾のクドカンみたいな人」という方もいて、ますます興味がつのりました。
なにより、『あの頃、君を追いかけた』の原作は100%が監督の体験談。映画化するにあたって、いくつかの場面に映画的な演出がされてはいますが、ストーリーラインや出来事はすべて実体験に基づいたものです。というわけで、取材が終ってみれば、映画よりも監督自身に肉迫するインタビューとなっていました。もう映画をご覧になった方は、監督=その後のコートンをイメージしながら、お楽しみください。(未見の方はネタバレ注意!)
Q:お誕生日(8月25日)おめでとうございます。35歳になられた気分はいかがですか?
監督「謝謝。感想は…35歳になったなあというくらい。30歳になった時は、ああ30代になったんだなあという感慨があったけれど、35歳は特にないですね(笑)」
●ユニークなペンネームの由来
Q:では、まず監督についてお聞きします。ギデンズというお名前の由来は?
監督「イギリスの有名な社会学者で、アンソニー・ギデンズ(Anthony Giddens)という人がいるのですが、僕が書いたインターネット小説をネット上で発表する時のハンドルネームとして、そのギデンズを使わせてもらいました」
Q:その学者さんがお好きなのですか?
監督「最初はマルクスにしてたんですが、もう使われていました。次にドイツにハバマスという学者がいたので、ハバマスにしようと思ったけど、それもだめ。それで、ギデンズにしたらOKだったので、ギデンズになりました」
Q:一度聞いたら忘れられない名前ですね。漢字名の九把刀(ジウパーダオ)というのは?
監督「高校の頃のあだ名です。当時、適当な歌詞を書いて歌を作っていたんですが、その中に『九把刀』がたくさん出て来たので、友だちが僕のことを九把刀と呼ぶようになりました」
Q:どんな意味なのですか?
監督「色事の『色』という文字は『巴』の上に『刀』が乗ってますよね? つまり、刀が9個もある、超エッチな奴っていう意味です(笑)」
むむむむ…監督らしいお答え。「刀刀刀×3」の作り字のようですが、深く追求するのはやめておきます。この辺の、しょっちゅうムラムラしてるエッチで陽気な高校生像は、映画をご覧になるとよくわかりますよ(笑)。
●武術とチャウ・シンチー
さて、この映画のテーマは、コートンがモットーとしている「人生に無意味な出来事など何もない」。これは、初恋の人チアイーから言われる言葉なのですが、コートンにはその前にもう1つ「正義は武術の腕前を必要とする」というのがあります。これこそがコートンとチアイーの違いであり、コートン=監督にとって重要なモットー。そこで、質問してみました。
Q:映画の最初に「正義は武術の腕前を必要とする」と出て来ます。コートンの部屋にはブルース・リーの絵が飾ってあって、武術を練習する人体図もありますが、実際にそうだったのですか?
監督「『ドラゴンボール』の影響もあって、喧嘩がとても好きでした。『ドラゴンボール』の中で、くじで番号を引いて喧嘩する場面がありますが、映画にも武術コンテストの場面でそれが出て来ます。ブルース・リーは僕だけでなく、当時の少年は誰でも好きでしたね」
Q:監督はチャウ・シンチー(周星馳)さんが特にお好きだそうですね?
監督「とても好きです!」
Q:チャウ・シンチーさんもブルース・リーの大ファンですよね? その影響もあるのでしょうか?
監督「多分、ブルース・リーよりもチャウ・シンチーからの影響の方が大きいでしょう。すごくたくさんの影響を受けました」
Q:どういうところが好きなのですか? チャウ・シンチーの映画で一番好きな作品は?
監督「チャウ・シンチーは僕にとって偶像というより神様です。もし、チャウ・シンチー教があれば、僕は信者。拝みたいくらいなんです(笑)。大好きな作品はいっぱいありますが、一番好きなのは『少林サッカー』ですね」(次頁へ続く)
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