Q:アメリカの大統領選挙にヒントを得て作ったそうですが、影響を受けている部分とそこから独自に発展していった部分を教えてください。
ルク「実は脚本を書く段階で、どういうテーマで書こうかと話合っていたのですが、自分たちが書きたいテーマはどれも先輩たちに書かれてしまっていて、映画になっているものも多かった。もっと新しいテーマはないかと考えているうちに疲れてしまい、もうやめようと(笑)。
それで、帰ったその晩に、テレビでヒラリーとオバマの大統領選の弁論があったんです。香港では、そういうのをよく放送しています。で、なんとなく見て、次の日に2人で会った時『夕べのあれは凄かった。こういうトップレベルの2人の弁論は素晴らしい』なんて話して。実は2人とも、アメリカの政治物語の映画やドラマが好きで、よく話をしていたんです。
それで、そういえば、香港映画には警察やギャングの話はたくさんあるけど、警察内部のトップの人間関係を描いたドラマは今までなかったんじゃないか?これは1つのポイントなんじゃないか?と、2人で興奮しました。よし!これを取り入れて書こう!ということになり、脚本に発展していきました」
Q:警察内部のことがとても詳しく描かれており、勉強になりました。香港には警察を題材にしたドラマや映画がたくさんあり、また人気ですが、香港の人々にとって警察というのは、なにか特別な思い入れがあるのでしょうか?
ルク「ご存じのように、香港は大変土地が狭いので、大きな作品にしようとするとテーマが限られてきます。香港映画はアクションが人気なので、アクション映画を撮ろうとすると、結局、警察ものになってしまうのです。多分、そういう相関関係なんじゃないかな。それから、中国市場を考えると、中国で上映するには事前に検閲を受けなくてはならないので、こういうテーマは審査に通りやすいという利点もあります」
●気になる続編について
Q:物語は前半と後半に展開が分かれていて、後半ではアーリフ・リー(李治廷)さんが出て来ます。続編では彼が警察になって再登場するような気がするのですが、いかがでしょう?
後半の展開に絡んでくるアーリフ・リー
(c)2012 Irresistible Delta Limited, Edko Films Limited, Sil-Metorpole Organisation Ltd.
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ルク「実は続編の脚本は3分の1ほど書いています。アーリフ・リーも登場すると思います。まだ、資料や情報の収集リサーチをしている段階なので、なんとも言えませんが…とにかく続編は書いています。僕としては、もちろんこの映画の中で殉職した警官たちが再登場することはありませんが、残った人たちは続編の中に登場し、また新たな人物も登場させようと思っています」
Q:最初から続編まで考えて作っていたのですか?
リョン「まだ監督デビューもしていないのに、続編を年頭に脚本を書くなんて、とんでもない。とにかく、脚本を書いていた段階では、2人とも同じ考えでした。映画が終って、観客がすごくよかった、面白かったと、そういう気持ちを持って帰る。そのための映画を作ろうと。だから、続編はまったく考えていませんでした」
Q:でも、まだ解決されていないことがあります。続編のための伏線だと思ったのですが?
リョン「たしかに、この物語には枝がたくさんあるので、そこから発展していく空間はあると思います」
続編を楽しみにしています。ありがとうございました。
(c)2012 Irresistible Delta Limited, Edko Films Limited, Sil-Metorpole Organisation Ltd.
警察内の人間関係も重要なキーとなる本作。アーロン扮する「管理班」副長官ラウの両脇にいるのは、副指揮官
を任された「管理班」警視正のツイ(チン・ガーロッ)と「行動班」警視正のクォン(ラム・ガートン)
実は最後に、「寒戦」というコードネームには何か特別な意図(例えば「冷戦」のような)があるのか?という質問をしてみたのですが、「事件が起ったのが冬で寒いので、寒いというイメージで『寒戦』にしただけ」とのこと。「考え過ぎだよ(笑)」と言われてしまいましたが、物語の人間関係を表わすよいタイトルではないでしょうか。今回は取材時間が大幅に押していたため、予定より短いインタビューになってしまったのが残念。俳優や演技のことなど、もっといろいろ聞きたかったのですが、続編の時にとっておこうと思います。
その前に、今2人が再びコンビを組んで取り組んでいる作品が『赤盗』(『赤道』から改題)です。主演はニック・チョン(張家輝)と久々の映画出演となるジャッキー・チョン(張學友)。さらに、ショーン・ユー(余文樂)やワン・シュエチー(王学圻)、韓国からはチ・ジニやチェ・シウォン(Super Junior)らが出演と豪華な布陣。ストーリーはアジアを舞台にしたテロリストと警察による闘いを描く模様。今まさに撮影中の本作は、来年夏頃に公開予定です。『寒戦』の続編も待ち遠しいけれども、その前の次回作『赤盗』もおおいに期待できそうです。
(2013年9月14日 シネマート六本木にて単独インタビュー)
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