中堅コンビが初監督で生み出した警察ドラマの新たな傑作
−リョン・ロクマン(梁樂民)&サニー・ルク(陸劍青)
サニー・ルク監督(左)とリョン・ロクマン監督
2人とも香港映画界でのキャリアは長く、共同での初監督作で金像奨の作品・監督・脚本賞を受賞。
一躍、有望な監督コンビとして注目されている。
2013年の香港電影金像奨で、監督デビュー作にしてなんと主要な賞を9つも独占受賞した、香港最大の話題作『寒戦』が、『コールド・ウォー 香港警察 二つの正義』という邦題で10月26日より公開となりました。監督は、香港映画界で美術監督として活躍していたリョン・ロクマン(梁樂民)と、ウォン・チンやダンテ・ラム、パン・ホーチョン、ハーマン・ヤウなどなど、多数の監督の元で助監督兼俳優としても活躍していたサニー・ルク(陸劍青)。長年、香港映画界で培って来た実力が見事に開花した作品で、香港では『インファナル・アフェア』以来の傑作と賞賛されています。
そんな作品を作り上げた2人、リョン・ロクマン(梁樂民)&サニー・ルク(陸劍青)監督が9月中旬に来日。単独インタビューをすることができました。通訳はお馴染みのサミュエル周さんです。香港映画では、監督やスタッフがチョイ役や脇役を演じていることが多いのですが、このお2人も出演経験者。特にサニーさんは関わった映画の大半に出演しており、香港映画ファンならすぐにわかるはず。まずは、そんな軽いご挨拶からスタート。
初監督ということですが、おふたりとも映画に出ておられるのでお顔はよく存じています。
リョン「(ルク監督を指して)それはこいつだな(笑)」
ルク「ウォン・チンの映画によく出ています。喜劇王チャウ・シンチーの作品にも。アクションもやりました(笑)」
●共同監督にした理由
Q:ではまず、2人で映画を撮ることにしたきっかけを教えてください。
リョン「作品を創作する上で、2人の考え方や好みがとても近かったのです。好きなものも似ていた。映画を監督するとなると、現場をよく見ていたので大変だと思い、最初にやる時は2人で一緒にやろうと決めていました」
Q:おふたりは親しいのですか?
ルク「仕事上の付き合いから、友だちになりました。もう10年以上も前から、現場で一緒に仕事をしていて、よく会っていた。たとえば、02年の『ツインズ・エフェクト』でも一緒にロケに行き、いろんな場面で話し合うことがありました。その時に、映画に対する理念や考え方が近いと思い、仕事がオフの時にも会って、いろんな映画の話をするようになりました。それで今に至っています」
Q:気が合うのですね。
2人「そうです」
Q:最近は2人で監督する映画も多いですが、役割分担などはあるのでしょうか? 2人でやってよかったことや、それぞれの得意な部分を教えてください?
ルク「2人とも現場出身で、僕は助監督、リョンは美術監督をやっていました。なので、撮影後の画面チェックでは、役者の動きやバックグラウンドはどうなってるんだとか…僕はそっちが得意なので、ついそこを見てしまいます。彼はすぐに、美術はどうなってるとか、道具がどうだとか、どうしてもそういうところを見てしまいます。それで、自動的に分業が決まっていました。撮影したシーンは、2人ともOKならそれで初めてOKになるけれど、僕はOKだけど彼がダメだ、という場合はもう1回撮りました」
(c)2012 Irresistible Delta Limited, Edko Films Limited, Sil-Metorpole Organisation Ltd.
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定年前の「行動班」副長官リーは熱血派。対する「管理班」副長官ラウは冷静沈着。対立するポジションにあるが、事件とともに互いを理解し、敬意をはらう間柄になっていく。
どちらも渾身の名演技ですが、どんな役柄も自分のものにしてしまうレオン・カーファイはさすがです。
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●撮影エピソードとテーマ選びについて
映画の冒頭、香港の摩天楼を真上から流れるように空撮したオープニング映像は斬新で、強く印象に残ります。この街でこれから起る事件の複雑さとそこに潜む入り組んだ謎を予感させるかのように、観客をぐいぐいと引き込んでいきます。
Q:冒頭の空撮、香港の街を真上から捉えた映像が新鮮でした。絵作りでこだわったところはありますか?
リョン「このオープンニング・ショットについては、製作会社の社長に感謝しています。実は撮影が終った後で、編集バージョンを作って社長に見せると『不満だから、もう少し何か足したい』と言われました。映画はもうクランクアップして、撮影が全部終っていたので、正直なところ、僕たちは怒ってしまいました。アーロン・クォックはすでにコンサートの準備に入っていたし、レオン・カーファイも他の映画の準備に入っていた。だから、また撮るにしても、役者は無理でした。そこで、ヘリコプターで撮らせてくれるなら、いくつかのショットを撮りますよ、と適当に言ってみたのです。『どう撮るんだ?』と言うので、オープニングを撮ると言ったら、すぐにOKが出た。それで、あのショットが生まれました」(次頁へ続く)
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