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asicro interview 78

更新日:2018.6.23

俳優として、監督としてのこれから

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サングラスを外してもらいました

Q:監督は9歳の頃から演技をしているそうですね?

監督「(日本語で)ハイ。ソウデス」

Q:きっかけは何だったのですか?

監督「4歳の頃、お婆ちゃんに身体を洗ってもらっていました。その時、僕が悪戯をするんです。4歳だから、その表現のし方が可愛かったのかな (笑)。今とはぜんぜん違いますよ。それで、身体を拭いてもらう時、『お前、演技したいの?』『したい!』『でも、演技って大変よ。泣いたり笑ったりできるの?』『できるよ!笑って見せるよ。ハハハハ』『まあ!笑ってる』『泣いて見せるよ』涙を流すと『まあ!泣いてる。どうしてできるの?』『簡単だよ。お婆ちゃんが電動自転車を買ってくれると思ったら笑えたんだ』次の日に、お婆ちゃんは電動自転車を買ってくれたんです (笑)。『泣く時は、お母さんが死んだ時のことを思って泣いたんだ』と。母はまだ生きていたので、後でその話を聞いた母にぶたれました (笑)。

 僕の母方の祖父は軍隊の将軍でした。当時、台湾の媒体メディアは政府がコントロールしていたので、媒体のトップクラスの人たちは当然、祖父の友人だったんです。そこで『この子は天才だから、演らせてみたら?』と。それで9歳の時にオファー(映画『小雨絲絲』)がきました。ところが、ちっとも楽しくなかった。スタジオへ行くと、僕はまだ9歳だから恥ずかしいんです。恥ずかしがり屋で素直だから、あまりうまくできないこともあった。正直なところ、家は裕福でしたから、子役をやって家計を助けようというのではなく、あくまでも才能があるからやってみたら、というのがきっかけでした」

Q:ずっと俳優をやってらして、今は監督をやっていますが、どちらが好きですか?

監督「役者魂というのは今もあるけれども、役者であったことは、僕が監督としてのスタイルを持つこと、あるいは基本を形成する上で、とてもいい経験だったと思います。ただ、僕が役者をやるとなると、いろんな制限がある。一番の制限はこの外見です。役者をやった経験が、監督になるためのいろいろな準備をしてくれたという意味では、両方とも好きなんですが…でも、やっぱり、自分はこれからは監督が向いているかなと思います。運命ですね。誰もこの質問はしなかったのですが、聞かれてうれしいです。間違いなく、はっきりと答えることができます。僕は監督が好きです。これは僕の任務、ミッションです」

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新人監督として決意を新たにするニウ監督
Q:では、最後の質問ということで、次のミッション。何か予定されているテーマ、または具体的に準備されている映画はありますか?

監督「今の心境としては、この『軍中楽園』を撮ることによって、自分自身の過去に対して一礼したという感じです。つまり、これまでのことは全部かたづけて、これからは新人監督として、撮りたいテーマがたくさんあります。

 今、言えることは2つあります。1つはパートナーである北京のファーイーブラザーズ(華誼兄弟)が日本のある漫画の映画化権を取得しました。赤ワインに関する話です。漫画から映画にするとなると、表現の媒体が違うので、これをどう撮っていくか、いろんな準備をしています。実は僕も、世界各地のワイナリーを訪ねて、いろんなリサーチをしているところです。

 それから、うまくいけば、今年の6月に1本、映画がクランクインするかもしれません。テーマはあるヤクザの2番手、いつもボスになれない彼が、必死に頑張ってマラソンを走る話です。

 新人監督としてはいろいろ言いたいこともあるし、撮りたいテーマもあります。でも一方で、歳もとっているので、よくわかっていることも1つあります。それは縁が訪れれば、どんなことでも起こり得るということ。とにかく、自分ではどうなるかわからないけれど、ある種の敬意を持って縁が訪れるのを待つしかない。先ほど言ったように、いろんなクリエーターのアシスタントとして一生懸命力を尽くす、ということですね」

 ありがとうございました。

 ニウ・チェンザーと言えば、少年時代に出演したホウ・シャオシェン監督の初期の名作『風櫃の少年』でも有名。自身の監督デビュー作『ビバ!監督人生!!』でも主演しており、俳優としての印象が強い方。映画監督というよりもやはり俳優オーラを纏っているので、上記のような質問をしてみました。取材後の写真撮影でサングラスを外してくださいとお願いすると、さっと外して「僕はトニー・レオン!」とジョークも。しかし、今回の『軍中楽園』では監督業に専念。今後は監督として生きて行く覚悟を決めたようです。そんなニウ・チェンザー監督がどんな映画を生み出していくのか、ちらっと伺えた2つの企画も含めて今後の展開が楽しみです。

 そんなニウ・チェンザー監督の美意識や女性的な視点も生かされた『軍中楽園』、男の弱さやずるさもさらけ出し、女の哀しみや逞しさ、したたかさもきっちりと描かれています。金門島という美しい島に今も残る戦争の道具の残骸、記念館もできている「特約茶室」の様子も忠実に再現され、興味深いものがあります。「僕がこのテーマを選んだのではなく、このテーマに僕が選ばれたのだ」と語る渾身作を、ぜひ、劇場でご堪能ください。

(2018年3月29日 太秦本社にて単独インタビュー)


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監督:ホウ・シャオシェン
出演:ニウ・チェンザー
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