logo


asicro interview 83

更新日:2020.3.13

Q:映画全体で、ここは見て欲しいという気に入っているシーンを、それぞれ教えてください。

 レオン「(チラシを見ながら)このシーンが一番印象的だと思います。このシーンではあまりセリフもないし、ただ二人の男が窓際に立ってそれぞれの思いにふけっているわけですが、このシーンがあったからこそ、後半で二人の変化が現れるわけです。ユンの人生はこのシーン以降から変わっていくことになるし、リン・フンにとっても変わっていく節目となるので、とても印象に残っています」

m2

(c)2018 STUDIO68

 ファット「屋上のシーンですね。ユンがこれまでの人生をぜんぶ捨てて、これから新しい人生を歩いて行こうと決めた瞬間です。この時はすごく泣きたくなって、ずっと泣いていました。カットがかかって、監督が『もう、いいよ』と声をかけてくれても、ずっと泣き止むことができず、泣き続けたんです。後になってもう一度、映画でそのシーンを見ると、どうしてその時はそういう感情になったの今でも不思議に思っていて、とても印象に残っています」

m3

(c)2018 STUDIO68

Q:逆に撮影で難しかったところはありますか?

 レオン「撮影中、一番大変だったことは、プロデューサーから1つの要求があったことですね。ゴ・タイン・バンさんは『この二人の関係はすごく曖昧で、二人がはっきりと同性愛かどうかわからない。だから、身体の関係とか、キスシーンや身体が触れ合うシーンを入れなくてはならない』と、そういう要求がありました。そこで私は『なぜ?どうしてこれを同性愛と捉えなくてはならないんですか?』と、『なぜ、愛というと必ずセックスシーンを入れなくてはならないんですか?』と思い、すべて拒否しました。二人の関係については、プロデューサーといろいろ話し合ったので、すごく時間がかかりました」

 そういうシーンはなくてよかったですね。友情以上、愛情未満という感じで、二人とも意識はしていないけど、好意があるというのはわかりますから。

(この後の質問は結末に触れています。まだ、ご覧になっていない方で、結末を知りたくない方は、鑑賞の後にお読みください)

Q:それだけに、ラストはちょっとショックなのすが、やはり映画的にはその方がいいのでしょうか。

 レオン「エンディングはショックに思われるけれど、人生ではこのようなショッキングな出来事がたえず発生しています。今は生きているけれど、明日は癌の宣告を受けるかもしれない。普通に生活をしていても、交通事故にあって亡くなってしまう人もたくさんいる。人生は未来に何が起こるかわからない。だから、ユンの終わり方もまさにその通りなのです。自分では想像できないし、多分、自分の死もわかっていない。それも、人生の1つかなと思いますね」

leon1

 なるほど〜、としみじみとしたところで、最後の質問です。

アクション映画もやってみたい

Q:今後、ファットさんを主演で映画を撮るとしたら、どんな映画を撮りたいですか?

 レオン「もちろん、次のプロジェクトでもファットさんを優先したいとは思いますが、彼がふさわしかどうかもあります。彼のことを第一に考えてはいますが、次ではなくても、次の次の作品とか…20年後の作品になるかもしれない。でも、ファットさんが主演できる作品であれば、ぜひやってもらいたいと考えています。ファットさんみたいな新人俳優は今のベトナムの映画界では、ほんとうに珍しい。とても、貴重な人材です。今の若手俳優は皆、韓国のアイドルスターみたいなイメージが主流なんですが、ファットさんだけは別で、違うイメージを持っていますから」

 野生的ですよね。(一同爆笑)

 ファット「はい!」

Q:アクションが似合いそうです。やってみたい役柄とかありますか?

 ファット「小さい頃からずっとアクション映画を観てきたので、アクション映画には憧れています。今は何がいいのかはっきりとわかりませんが、アクション映画もやってみたいし、もちろん俳優なので、いろんな役を経験した方がいいかなとも考えています。でも…アクション映画のオファーがあれば、演じてみたいですね」

 アクションシーンでは、生き生きとしていましたもんね。(一同爆笑)

 と和んだところで、インタビューは終了しました。ありがとうございました。

p2

セーターだけでなく、上下ともペアルックでした!

 映画のタイトルになっているソン・ランは、ベトナムの民族楽器で、カイルオンの音楽の魂というべき打楽器なのですが、タイトルには二人(ソン)男(ラン)という意味も含まれています。ゆえに、男性二人の出会いと心の交流という点で「ボーイ・ミーツ・ボーイ」とも謳われていますが、LGBTQのジャンル映画というよりは「カイルオンの精神」を宿した人間ドラマが描かれているといってよいでしょう。

 新宿K's cinemaでは、3/20まで上映延長が決まり、時間帯も朝と昼の2回から夕方と夜の2回に変わって、訪問しやすい時間帯になっています。さらに、3/27からはアップリンク渋谷での上映も決まりました。すでにご覧になった方も、行きそびれていた方も、「新型コロナウィルス感染症予防対策」の注意書きをご確認の上、ぜひ劇場へおでかけください。

(2020年2月21日 新宿K's cinemaにて)


前のページを読む P1 < P2 < P3 ▼作品紹介 

▼back numbers
上映情報&こぼれ話
『ソン・ランの響き』は、3/21からは横浜シネマリン(JR関内駅北口徒歩5分)でも上映開始となります。本作はその内容から、京劇を舞台にした巨匠チェン・カイコー監督の愛の名作『さらば、わが愛 覇王別姫』にも似ているという意見もあるのですが、その『さらば、わが愛 覇王別姫』がなんと3/28から1週間限定で上映されます。両方観たい方には朗報ですよ。
取材当日、K's cinema のロビーへ行くと、「ブルーの唇」が魅惑的なドラァグクイーンでアーティスト、映画評論家と多彩な活躍をされているヴィヴィアン佐藤さんが、同じく取材のためにいらしてました。もちろん、バレンタインのチョコを入れた袋も2つ持参。取材部屋に行く時にご一緒したのですが「二人ともかっこいいわよねえ〜」と絶賛されてました。ヴィヴィアンさんの取材の模様は、ヴィヴィアンさんのツイッターフェイスブックをご覧ください。
関連リンク
『ソン・ランの響き』
 公式Facebook
(ベトナム)
『ソン・ランの響き』
 公式サイト
(日本)