タクシー運転手 約束は海を越えて
(タクシー運転手/A Taxi Driver)
story
1979年、パク・チョンヒ大統領が側近に暗殺される。その後、事件を捜査していたチョン・ドファンがクーデターを起こして軍事独裁政権を樹立。1980年5月に戒厳令が布告された。逮捕されたキム・デジュンらの地元、光州では学生デモに端を発し、市民と軍との間で衝突が起こっていたが、その様子は政府によって伏せられていた。
イ記者(チャン・ジニョン)は、事件を世界に知らせたいと外国人記者に嘆願。東京支局に赴任していたドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーター(トーマス・クレッチマン)はこの情報に飛びつき、すぐさま韓国へ飛んだ。封鎖される前に現地入りしたい彼のために、専用タクシーが用意される。
キム・マンソプ(ソン・ガンホ)は11歳の娘ウンジョン(ユ・ウンミ)と二人暮し。タクシー運転手をしながら娘を育てているが、家賃を10万ウォンも滞納しており、家主から催促を受けていた。そんなおり「外国人を乗せて光州に入り、通行禁止前にソウルへ戻れば10万ウォンもらえる」という話を聞き、先に迎えに駆けつけて、その外国人ピーター(トーマス・クレッチマン)を乗せてしまう。
マンソプはサウジアラビアの建設現場で働いたことがあり、下手だが英語も少し話せる。噛み合わない会話をしながら、二人は光州へ向かう。すでに検問が始まっていたが、抜け道を知っているマンソプはなんとか光州に到着。たまたま出会ったデモ隊の大学生ク・ジェシク(リュ・ジュンヨル)の英語に助けられ、ピーターが記者であることを知る。
マンソプの壊れたタクシーは、親切なファン・テスル(ユ・ヘジン)ら地元のタクシー運転手たちが修理してくれた。その間、ピーターの取材に同行したマンソプは不安になり、娘のためにソウルへ帰ろうとするが、光州の人々の命がけの姿が頭から離れず、引き返してまう。彼にはピーターをソウルへ連れて戻るという使命があったのだ…。
アジコのおすすめポイント:
07年の『光州5・18』で真正面から描かれた光州事件。韓国国内では報道管制によって秘密裏にされてきたこの事件を、世界に向けて発信した外国人記者と彼を助けたタクシー運転手による実話を元に、人間同士の絆やユーモアを交えてヒューマンドラマに仕立てた作品です。冒頭、『大統領の理髪師』のラストを彷彿とさせるシーンから始まり、その主演俳優だったソン・ガンホが理髪師からタクシー運転手となって登場。ドイツ人記者と光州に向かい、そこで大きく心を揺り動かされます。記者を演じるのはドイツの名優トーマス・クレッチマン。歌手志望の大学生を演じるリュ・ジュンヨル、地元の善良なタクシー運転手を演じるユ・ヘジンと、悲惨な状況の中にも心温まるシーンが描かれ、それぞれのエピソードが主人公を奮い立たせます。監督は『高地戦』から6年ぶりとなるチャン・フン。ぜひ、ご覧ください。
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