共謀家族(誤殺/Sheep Without a Shepherd)
story
タイの中国人街で暮らすリー・ウェイジエ(シャオ・ヤン)は、ネット回線の会社を経営しながら事務所で映画ばかり観ている映画マニアだ。お気に入りは『ショーシャンクの空に』。馴染みのソンさん(チョン・プイ)の店では、部下のショウホウ(チャン・リン)たちといつも噂話で盛り上がる。人の弱みにつけこんで賄賂をかすめる横暴な警察のサンクン(シー・ミンシュアイ)は嫌われていた。
ウェイジエは妻のアユー(タン・ジュオ)、高校生の娘ピンピン(オードリー・ホイ)、まだ幼い末娘アンアン(チャン・シーラン)と4人で幸せに暮らしていた。ピンピンは将来のエリートと友達になれるサマーキャンプのメンバーに選ばれる。ところが、キャンプから戻った後のピンピンの様子がおかしい。気になりながらも、ウェイジエは仕事でルオトンへ出張して1泊することになる。
実は、ピンピンはキャンプでのパーティで薬を飲まされ、少年たちに乱暴されていた。中心となったのはスーチャット(ビアン・ティアンヤン)だ。彼は動画を撮らせてアンアンを脅し、ウェイジエが出張の夜にアンアンと倉庫で会おうとしていた。ところが、心配したアユーが先に倉庫へ行き、スーチャットと揉み合いに。動揺したアンアンはスマホを壊そうとして、誤ってスーチャットを殺してしまったのだ。二人は庭にある親戚の墓を掘り、棺桶に遺体を隠す。
仕事を終え、ムエタイを楽しんで帰ってきたウェイジエは、アユーからすべてを聞かされる。スーチャットは市長候補のデゥポン議員(フィリップ・キョン)と、鬼の捜査で知られるラーウェン警察局長(ジョアン・チェン)の一人息子だった。「映画を1000本も見れば、世界に分からないことなどない」が持論のウェイジエは、大切な家族を守り抜くため、これまでに観た犯罪映画からヒントをもらい、完全なアリバイ工作を計画する…。
アジコのおすすめポイント:
タイで暮らす映画マニアの男が、留守中に家族に降りかかった災難を切り抜けるため、犯罪映画で得た知識を駆使して警察に挑んでいくサスペンスドラマです。元になったのは2013年のインド映画『ドリシャム』(マラヤーラム語)と、2年後にヒンディー語でリメイクされた『ビジョン』(NETFLIXにて配信中)。オリジナルは未見ですが、舞台をタイにしたことで、証拠を捏造するような悪徳警官や社会情勢などを自由に描くことができたのではないかと思います。主人公が参考にする映画が韓国の『悪魔は誰だ』。原題が『モンタージュ』なのですが、その意味がよくわかりました。監督のサム・クァーはマレーシア出身。台湾で映画を学び、本作で長編映画監督としてデビュー。本作にも香港や台湾の俳優たちが出演しています。主人公を演じるのは歌手、俳優、脚本、監督とマルチに活躍するシャオ・ヤン。妻役をタン・ジュオ(『薬の神じゃない!』)、対する怖い警察局長を世界で活躍するジョアン・チェンが演じ、凄まじい母親対決を演じます。ちなみに、事件の元となった高校生の娘を演じるのはジョアン・チェンの次女、オードリー・ホイです。製作総指揮は俳優で監督のチェン・スーチョン。公開中の『唐人街探偵』シリーズを大ヒットさせていますが、有望な新人監督もバックアップしているんですね。シャオ・ヤンもチェン・スーチョンも、シュー・チェンやチャウ・シンチーのように、新しい中国映画界を牽引し、マルチに活躍する映画人になっていくかもしれません。
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