モガディシュ 脱出までの14日間
(モガディシュ/Escape from Mogadishu)
story
1990年。ソウル五輪で大成功を収めた韓国は国連加盟を目指し、最多の投票権を持つアフリカ諸国に大使を派遣。根回しを進めていた。
ソマリアの首都モガディシュに新任の参事官カン・テジン(チョ・インソン)が到着する。地元のタクシー運転手が群がる中、大使館からの迎えの車を待つテジン。遅れてやって来たのは、韓国大使のハン・シンソン(キム・ユンソク)と書記官のコン・スチョル(チョン・マンシク)だ。
二人はテジンが持参した手土産だけを受け取り、やっと面談を取り付けたバーレ大統領の官邸へ急いだ。だが、途中で武装集団の襲撃に遭い、手土産を奪われてしまう。やむなく、15分遅れで官邸に到着するも、すでに大統領は次の面談に移動していた。
手土産を奪ったのは、地元の若者たちと親しくしている北朝鮮大使館の参事官テ・ジュンギ(ク・ギュファン)だった。彼が地元の若者たちを武装集団に変装させて、韓国側の根回しの邪魔をしたのだ。
翌日、ソマリアの長官とホテルで面会したハン大使とカン参事官は、同じく長官に会いに来た北朝鮮のリム・ヨンス大使(ホ・ジュノ)とテ参事官と鉢合わせする。「妨害工作をするな」と怒るハン大使に、「我々は南より20年も早くアフリカと関係を築いてきた」とリム大使。その時、ホテルの前で銃声が鳴り響く。反乱軍の暴動が起こったのだ。
2年前に勃発した内戦は日に日に激化していた。反乱軍は各国大使館に声明文を送りつけ、腐敗したバーレ政権を援助する国は敵とみなされた。大使館は孤立するが、カン参事官のおかげで韓国大使館はソマリア警察の警備が約束された。だが、北朝鮮大使館は暴徒に襲われ、食料も車も奪われる。
家族を連れて中国大使館を目指すが、すでに火の手があがっており絶体絶命のピンチ。リム大使は韓国大使館に助けを求める決意をする…。
アジコのおすすめポイント:
国連加盟前の韓国と北朝鮮が、ソマリアの首都モガディシュでロビー活動にいそしんでいた時、なんと内戦が勃発。突然の戦争に巻き込まれ、そこから脱出するまでの1990年12月31日から翌年1月13日までの14日間の出来事を描いた実話の映画化です。当時、新聞で報道されたものの、北朝鮮への関心が薄かったせいで話題にならなかったこの美談が注目されたのは、15年後の2006年。外交官を引退した元大使がこの事件を題材に小説を書いて文壇デビュー。キム・ヨンファ監督(『神と共に』)から映画化を託されたリュ・スンワン監督は、この小説を元に綿密なリサーチを重ね、『ベルリンファイル』で組んだ北朝鮮関連の専門家の力も借りて、完成させました。事件そのものは重くドラマチックですが、そこはリュ・スンワン監督。キム・ユンソクやチョ・インソン、チョン・マンシクと芸達者な俳優たちを使い、前半はコミカルで軽いタッチに仕上げています。現代劇のチョ・インソンをスクリーンで観るのは『ザ・キング』以来。相変わらずカッコよく、アクションのキレも素晴らしい。対する、北朝鮮側のク・ギョファンもいいのです。最初は反目しあっているこの二人に注目しましょう。さらに、北と南の大使を演じるキム・ユンソクとホ・ジュノがまた、いいのです。イタリア大使館に駆け込むまでは、ハラハラドキドキが続きます。イデオロギーを超えて、生死を賭けた時間を共にした人たちの人間同士の絆。しかとご覧ください。
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