story
2006年9月19日、渡航禁止区域のアフガニスタンにバスで乗り込んだ韓国のキリスト教徒23人がタリバンに拉致される。彼らの要求は、カブール刑務所に収監されている仲間23人の釈放と駐留している韓国軍の撤退。人質殺害までの猶予は24時間だった。
韓国の外交通省部は交渉官として、チョン・ジェホ(ファン・ジョンミン)を急遽アフガニスタンに派遣。同じ頃、パキスタンにいた国家情報院の工作員パク・デシク(ヒョンビン)にも、カブール拉致事件解決の任務がくだる。刻限の5時間前にカブール空港に着いたチョンは、出迎えたパクを無視して外務省へ向かう。だが、アフガン代表(イヤド・ハジャジ)は釈放を拒否。さらに、チョンたちは市中で自爆テロに巻き込まれる。
チョンは傷の手当ても早々に外務省へ向かうが、代表は釈放には応じられないという。だが、韓国軍が撤退することで猶予がさらに24時間延長された。パクは本当の要求は釈放ではないとチョンに説明。現地に溶け込んで暮らす通訳のカシムことイ・ボンハン(カン・ギヨン)を探し出す。
チョンとパクは突破口として、ジルガ(部族長会議)に掛け合うことにし、カシムを連れてパシュトゥン族の村を訪れる。祭りの余興に加わり、部族長(ハベス・フセイン)に気に入られた二人。部族長は人質の解放を約束するが、翌日、韓国の時事番組で人質が宣教活動をしていたと生放送。それにアルジャジーラが字幕を付けて報道したため、ボランティアと偽っていたことがバレてしまう。
事態は悪化し、ついに犠牲者が出た。さらに拉致から5日目、タリバンが人質を使った放送を始めた。パクは行き詰まったチョンに直接交渉という手があるとアドバイス。さらに犠牲者が出て、韓国からチェ外務大臣(イ・スンチョル)がアフガニスタン政府と交渉にやって来るが決裂。韓国軍を導入した軍事作戦に踏み切る可能性が高まる。
しかし、タリバンを刺激することだけは避けたい。帰国命令が出ていたチョンは、大統領(ナム・ミョンニョル)に嘆願。パクとカシムの協力で、直接交渉に挑む…。
アジコのおすすめポイント:
海外の戦闘地域で拉致された自国の多数の人質を救出するという、当時の実話を元にした社会派ヒューマンドラマです。監督はオムニバス作品『もし、あなたなら 〜6つの視線』や『飛べ、ペンギン』など、人権をテーマにした作品を多く手がけ、日本の漫画を原作にした『リトル・フォレスト 春夏秋冬』でも注目された女性監督イム・スルレ。今回はアクション系作品の2大人気スター、ファン・ジョンミンとヒョンビンを主人公に、同時多発テロが横行しタリバンが世界を震撼させていた時代の実話を膨らませて映画化しました。撮影はコロナ禍だったため、アフガニスタンの場面はすべてヨルダンでロケ。その他は韓国で、パシュトー語の話せるアフガニスタン人を集め、現場は国際色豊かなスタッフや俳優が集まったそうです。通訳を演じたカン・ギヨンは、撮影前からパシュトー語を特訓しています。当時、日本でも人質事件や怖いニュースが流れていたのを思い出します。しかし今、中東地域ではガザで悲劇が起こるなど、宗教による戦争の危機が増しています。本作はスリリングな救出劇のエンタメ作品としても十分楽しめますが、国の面子か人の命かで迷う公務員や過去のトラウマで彷徨う工作員など、人権と平和を願うテーマが込められており、まさにタイムリーな作品。ラストに響く「アッサラーム・アリクム(As-salamu alaykum)=あなたが平穏無事でありますように」というメッセージが世界に届くことを願わずにはいられません。
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