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2025年12月14日 ヒューマントラストシネマ有楽町


左よりリウ・シウフー、ツァオ・ヨウニン
12月14日にヒューマントラストシネマ有楽町で開催された『ピアス 刺心』公開記念舞台挨拶の模様をご紹介します。(公式レポートに加筆する形でまとめました)
『ピアス 刺心』公開記念舞台挨拶が14日、東京のヒューマントラストシネマ有楽町で行われ、台湾から主演のふたり、リウ・シウフーとツァオ・ヨウニンが登壇しました。チケットは即完売で会場は満席。熱気あふれる観客に向けて、まずはシウフーが「皆さまこんにちは、わたしはリウです。よろしくお願いします」と日本語でご挨拶。ヨウニンも日本語で「皆さまこんにちは、わたしはツァオです。どうぞよろしくお願いします」と続け、会場から大きな拍手を受けました。
この日が日本で初の映画舞台挨拶となったシウフー。
シウフー「僕自身、この映画がものすごく大好きなんですが、日本の皆さんにはどんな感想を持っていただけるかが気になって緊張しています。この映画が好きなのは、愛というものを非常にユニークな視点で追求しているからです。もし自分が愛した人が、皆から怪物だと言われるような事態となった時、あなたならどうするのか、といったテーマを追求しているんです。皆さんにも自分と同じように、この映画を好きになってほしいと願っています」
続くヨウニンも満席の会場を見渡して。
ヨウニン「何よりも感動しているのは日本で上映できたということ。日本の配給会社にも感謝しています。しかもこんなにもたくさんの方が見に来てくださって、皆さまにお会いできたことにとても感激しています。この映画が皆さんの日常の中で、何か新しい気づきをもたらすようなきっかけになればいいなと願っています」
本作の重要なモチーフとなるのはフェンシングシーン。ほとんどのシーンをふたりは自分自身で演じています。
シウフー「僕たちはとても長い訓練を重ねました。もともと僕は運動がそれほど得意ではありません。でも演劇のリハーサルと同じで、時間をかけて真剣に取り組めば、あるレベルまでは到達できると思いました。「脚に筋肉がついてきたなあ」と実感した頃に、監督が僕の足を見て「撮影を始めましょう」と言ってくれました」(会場笑)
ヨウニン「準備期間が長かったので、役作りに打ち込める時間を与えてもらえたことはとてもうれしかったです。監督ご自身はフェンシングの選手だったので、その辺りの指導はとても厳しかったのですが、そのおかげで、映画をご覧になった時、皆さんが「僕たちは本当にフェンシングができる」と感じていいだけたらうれしいです」
今回はおふたりとも難しい役所でしたが、演じる上で気をつけたこと、意識したことはありますか?
シウフー「一番難しかったのは、兄を愛することに価値があるのか?ということ。常に自分に問いかけていました。この映画を演じるには集中力が一番大事だったので、準備期間の頃から友人とでかけるのもやめて、一人で時間をかけて集中力が高まるようにしました」
ヨウニン「兄役を演じる上で一番難しかったのは、役作りです。大変だったのは、明確に何かを表現してはいけないということ。曖昧で、弟に選択肢を与えて選んでもらう。演じる上で、明確に何かを表現するのではなく、曖昧なところに重点をおいて演じました」
監督の好きなシーンの1つは、会食シーンで子どもが怯えて泣き出すところだそうえす。おふたりの好きなシーンはありますか?
シウフー「兄と雨の中を走るシーンです。この映画は常にトーンが低く感情を抑えなくてはならなかったので、雨の中を走ることで少し気持ちが晴れてすっきりしました」
ヨウニン「2つあります。1つは、バーで兄弟ふたりで飲んだ帰り道。カメラはずっと長回しで撮っていました。弟の長い間の疑いが晴れて、兄を信じるようになった場面で、大変好きなシーンです。もう一つは最後のシーンです。兄は殺人鬼になって周りの人を傷つけてしまいますが、その中で弟がそんな兄に近づいていき助けてくれようとする、そこは感動的でとても好きなシーンです」
本作の撮影監督を務めたのはポーランド出身のミハウ・ディメク。『EO イーオー』にて全米映画批評家協会賞を受賞するなど、世界の名だたる撮影賞を受賞した注目の撮影監督です。そんなミハウ・ディメク監督との仕事はどうだったのでしょう。
シウフー「彼のレンズを通して、実際の演技以上に感情や質感を感じとることができました。彼は画面のシンメトリー(対称性)にこだわっているので、僕らの感情表現に加え、立ち位置も非常に重要でした。特定のポイントに正確に移動し、そこから感情をつなげていく必要があったからです。これはとても面白い試みでした」
ヨウニン「僕は英語が苦手なので、現場ではジェスチャーでコミュニケーションを取っていましたが、非常に優しく、深い愛情とともに接してくれました。彼の美的感覚や映像言語は、われわれ俳優にとっても大きな助けとなりましたし、普段の自分では見せないような姿をスクリーンに映し出してくださって。自分にもこんな表情があったのかと気づかせてもらいました」
イベントが始まる直前には、シウフーの髪をヨウニンが整えてあげるひと幕があり、仲むつまじい姿を見せていたふたりですが、実は本作が初共演。お互いの印象はどうだったのでしょう。
シウフー「実は最初はちょっと怖いなと思って緊張していました(笑)。僕がこの映画業界に入る前から活躍していた大先輩ですから。でも、すぐに兄のように気遣ってくれる人だと気づいたんです。前にヨーロッパの映画祭に行った時も、髪の毛を整えてくれたりと…彼の気遣いは本当に自然で。だからすごく居心地が良くて。俳優同士の波長が合うのは、とても貴重で重要なことだと感じました」
ヨウニン「最初にInstagramでシウフーの写真を見た時に、とてもきれいな顔をしている役者だと思いました。それからいろいろな作品を見て、特徴的な目をしているなと感じました。どこか吸い込まれるような深みがあって、『何を考えているのかな』と知りたくなりますし、彼との距離を縮めたいなとも思いました。でもそんな必要はなかった。実際撮影が始まってみると、本当に波長が合うんです。たとえばエレベーターで知らない人といると気まずい空気が流れることがあると思いますが、彼とはそういう感覚がまったくない。ただそばにいて居心地がいい存在なんです」
この日は映画のタイトル『ピアス 刺心』にちなみ、「心に響いたエピソード」「いい意味で心を刺すような出来事」についての質問も。
シウフー「日本に来る前にオンラインでインタビューを受けたのですが、その時にオススメの映画として『国宝』という作品を教えてもらい、鑑賞させていただきました。その主人公は小さい頃から芸術に興味を持っていたので、僕自身の幼い頃のことを思い出しました。僕は小さい頃から独り言が好きでした。Aという役になったり、Bという役になったりしながら、ずっと一人でふたりの人格になって話していたんです。それで母に『変かな?』って聞いてみると、母は『これは神様がくれたプレゼントだよ』と言ってくれました。そのことを思い出した、というのが最近心に刺さったことです」
ヨウニン「今日、日本の映画館にこれだけの観客が集まってくださり、自分たちの映画を見てくれたのを目にすることができたこと。これが僕にとっては非常に心に刺さった出来事です」
最後は、二人からのメッセージ。
シウフー「最後の体育館のシーンの撮影中、(ポスタービジュアルにもある)赤いカーテンの幕が僕の気持ちに合わせて揺れていて、それがすごく助けになりました。その空間はまるで僕の心の内側のようでした。だから皆さんも、ぜひこの映画を何度も観て、細かいところまで楽しんでください」
ヨウニン「この映画は、いろいろなキャラクターの視点で見ることができます。映画を観るたびに、別々のキャラクターの視点に立って物語を追ってもらえます。もし自分がその立場だったら、同じ選択をするだろうか? それとも違う考えを持つだろうか? だからこそ何度も観る価値がある映画です。それぞれ違うキャラクターの立場に立って、何回も観ていただきたいです」
ふたりから本作の魅力をしっかりと伝えてもらった後、フォトセッションの後に観客の皆さんともカメラに収まり、和やかなムードで舞台挨拶は終了しました。様々な魅力の詰まった本作、ぜひ劇場で何度もご覧ください。
▲12.14 来日舞台挨拶 ▼監督インタビュー ▼作品紹介
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