変幻自在な役柄に挑む
−ハ・ジョンウ
10月23日より公開中の『国家代表!?』で主演をつとめたハ・ジョンウ。ハ・ジョンウといえば、キム・ギドク作品に代表されるアート系作品や一躍注目を集めた『チェイサー』での怪演ぶりが印象に残っていますが、妻夫木聡と共演した『ノーボーイズ、ノークライ』やドラマなどで見せるお茶目な演技にも注目していました。そんな気になる存在だったハ・ジョンウに、公開前のPR来日時にインタビューができました。本作ではスキージャンプ選手という難役に挑んだハ・ジョンウ。撮影時の苦労話から新作についてまで、たっぷり語ってくれています。
Q:監督とは同じ大学の出身だそうですが、出演依頼のいきさつは?
ジョンウ「ある日突然、監督から連絡があり、ちょっと飲もうということになりました。もともと知っている仲でしたが、会うといきなり『何も聞かないで、ヒョン(兄貴分、先輩)を信じて一緒にやろう!』とストレートに言われたんです。僕は『オー!ブラザーズ』や『カンナさん、大成功です!』を観て面白いと思っていたので、監督となら面白い作品ができるだろうと思い、その場で出演を決めました」
Q:事務所やマネージャーは通さなかったのですか?
ジョンウ「心の中で決めてました。会社からは先に自分でOKしてしまったことにすごく文句を言われ、これからは絶対そういうことはするなと言われてしまいました(笑)」
Q:キム・ギドク作品や『チェイサー』のイメージが強くて、これまでの出演作の中では一番のコメディ作品だと思うのですが、コメディをやってみたかったのでしょうか? それともこれまでのイメージに対するチャレンジだったのでしょうか?
ジョンウ「まず僕は、この映画をコメディとは思っていませんでした。笑えるシーンが少しずつあるのでそのように思われたのかもしれませんが、コメディ映画だからといって会社からクレームがあったわけでもありません。僕は20代から7年間、演劇の舞台に立っていますが、8割はコメディでした。コメディは大好きだし、コメディ映画もすごく好きです。大好きな俳優の中にはチャップリンもいます。今回はコメディ映画として選んだわけではありませんが、これからはちょっとやっていこうかなと思っています」
Q:コメディはすごく合っていると思います。『チェイサー』『パラレルライフ』と怖い役柄が続いていたので、逆によかったと思います。それよりも、スキージャンプの選手という役柄は怖くなかったですか?
ジョンウ「とても怖かったです。スタート地点が思ったよりもかなり高くて、すごく恐怖感がありました。例えて言えば、12階建てマンションの屋上のベランダに立っているような感じです」
Q:スタート台にはほんとうに座っていたのですか?
ジョンウ「ワイヤーをつけていました」
Q:高所恐怖症とかはないですか?
ジョンウ「ちょっとあります(笑)」
Q:監督からはジャンプというお話もなかったのでしょうか?
ジョンウ「ジャンプというのは聞いていました。スキージャンプ選手の話で、僕の役柄はアメリカに養子に出たボブという人で、韓国に戻り、母を探してスキージャンプ・チームに加わる、という簡単なあらすじだけは一番最初に監督から聞いていました」
Q:ではジャンプをやる覚悟はできていたんですね?
ジョンウ「できてません。(一同笑)これは一般人には絶対できないことだと思います。スキー選手とスキージャンプ選手とはかなり違うと聞いています。僕は7歳の頃からスキーをやっていて、約20年間も乗っているので、最初に話を聞いた時は充分できるだろうと思ったんです。ところが、スキージャンプ用の靴をはいてスロープに立った時に、もうこれはだめだと…」
Q:どうやって恐怖心を克服したんですか?
ジョンウ「まだ克服できていません。ただ、我慢していただけです(一同笑)。悪夢でした」
Q:当然、スタントマンがやると思っていた?
ジョンウ「スタントマンではなくて、実際の国家代表選手がやっていました。ジャンプを除いた前後は、俳優たちがやっています」
Q:実際の長野オリンピックの時、ジャンプ競技は観ていましたか?
ジョンウ「観ていました。スキージャンプが日本ではとても人気のある種目だというのもわかっていました。今回、この作品を通じて、韓国にもスキージャンプ・チームがあったんだとあらためて知りました(一同笑)。余談ですが、この映画が終った後に冬季オリンピック(バンクーバー)があったので、その時に初めて韓国でスキージャンプの生放送があったんですよ」
Q:この映画が大ヒットしたことで、スキージャンプ選手が増えると思いますか?
ジョンウ「実際にこの映画を観た後で、小学生のような幼い子たちがスキージャンプを始めているそうです」
本作の成功でスキージャンプ選手たちが注目されることに。 左よりドラマでも活躍するキム・ドンウク、チェ・ジェファン、『大統領の理髪師』(04)から すっかり成長したイ・ジェウン、本作のために10キロ減量したキム・ジソク、ハ・ジョンウ (c)2009 KM Culture, Showbox/Mediaplex
Q:実際のジャンプは選手の方たちがやっていますが、途中まで滑り降りるところは演じられたそうですね? 特訓もされたそうですが?
ジョンウ「ジャンプで飛び降りることよりも、姿勢を保つのが大変でした」
Q:スピードもかなりありますよね?
ジョンウ「実際にやる時は後ろにワイヤーがついていて、速度を調節してくれますが、そのちょっとだけでもすごいスピードが出るのがわかりました。傾斜が絶壁のようなので」
Q:他の俳優さんたちも初めてだったと思いますが、皆で励ましあったのでしょうか?
ジョンウ「そうです。10年以上やっているスキージャンプ選手のようになるのは不可能だと充分にわかっていたので、スキージャンプ選手みたいに、自分の身体に馴染むような工夫をちょっとしました。例えば、ジャンプスキーを持って歩いたり、ブーツをはくシーンを何度もやってみたり、ジャンプスーツを着てランニング・マシンで走ったりと…訓練の姿勢に慣れるようにいつもしていました」(続きを読む)
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