若い内にいろんなジャンルに チャレンジしたい −レスト・チェン(陳正道)
1991年、平成バブル後期の日本で大ヒットしたフジテレビの月9ドラマ「101回目のプロポーズ」が、なんと中国でリメイクされました。しかも製作は、本家フジテレビと中国との共同製作。目覚ましく発展する中国で、フジテレビが得意とするトレンディドラマのような作品を日中合作映画で作れないかと模索していた時に、中国側のプロデューサーから「ぜひ映画化したい!」と持ちかけられたのが、きっかけでした。そのプロデューサーはこのドラマを見て業界を目指したという、筋金入りの日本ドラマファン。
「101回目のプロポーズ」といえば、03年に韓国のチェ・ジウと台湾ドラマで活躍している香港男優スン・シン主演で中韓合作ドラマが、さらに06年にはイ・ムンシク&パク・ソニョン主演で韓国ドラマとしてもリメイクされていますが、今回は約2時間の映画化。度重なる脚本家や監督の交代を経て、やっとスタッフ&キャストが決定。さらに、「コメディにするのはいいが、ドラマの大事なエッセンスをなくすわけにはいかない」という日本側プロデューサーの意向を見事に実現したのが、当時若干30歳だった台湾のレスト・チェン監督だったのです。
レスト・チェン監督といえば、04年の東京国際映画祭アジアの風部門でヴェネチア映画祭でも上映された短編作品『狂放』が紹介された台湾の新鋭。06年にも『永遠の夏』で来日し、本作は翌年に『花蓮の夏』として日本公開されています。その作風はというと、独特な映像美で青春の輝きと痛みを切り取るというアート系作家。なので今回、そのレスト・チェン監督が『101回目のプロポーズ 〜SAY YES〜』を手がけたというのは若干意外でもあり、逆に作品に対しては妙に安心感も持てたのでした。そして、映画は期待通り、品のあるラブコメディに仕上がっていました。
というわけで、一体どんな姿勢で本作を手がけたのか、自身もこのドラマのファンだったというレスト・チェン監督に、いろいろと質問をしてみました。
●監督を引き受けたのはドラマが好きだから
Q:日本は何回目ですか?
監督「もう20〜30回くらいでしょうか」
Q:映画祭でも来日されていますね?
監督「3回、参加しました。東京国際映画祭は私の成長を見守ってくれています」
Q:『花蓮の夏』はとても好きな作品です。どちらかというとアートフィルムの監督さんと思っていたのですが、今回は商業映画ですね? どうして引き受けたのですか?
監督「これまで、ラブストーリーやコメディ映画は撮っていませんでした。どちらかというと、成長や自分に関するものを撮っていた。だから、今回は初めてのチャレンジでした。しかも、名作ドラマのリメイクなので、それを僕がどのように作り、当時の感動を中国の観客に紹介できるか、その感動を心までうまく届けられるか、そういうところに一番気をつかって工夫しました」
Q:監督にとってもチャレンジだったのですね?
監督「とてもプレッシャーのある大きなチャレンジでした」
Q:ドラマは実際にご覧になっていたのですか?
監督「見ました」
Q:でも20年前だと監督はまだ小さいですよね?
監督「10歳ですね。最初に見た時は、あまり感動しなかった。ただ、周りの人たちがとても感動していたので、どうしてだろう?と興味があり、15歳の頃にあらためて見たら、とても感動したのです。少年の頃は、木村拓哉さんや江口洋介さんみたいに格好よくなかったので、このドラマの星野達郎役は自分に似ていて、とても励まされ、満足しました(笑)」
(次頁へ続く)
続きを読む 1 > 2 > 3 ▼映画紹介
|